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年次総会(通称ダボス会議)2023 - Day 2

年次総会(通称ダボス会議)の2日目。ウクライナ、経済成長、エネルギー、インフレ、気候変動、貿易、メタバースなど、さまざまなセッションが開催されました。世界経済フォーラムがまとめた開催2日目のハイライトは下記から参照ください。↓

このnote記事では、日本からの登壇者を迎えたセッションの一部の様子をご紹介します。

Data Collaboration: Lessons from the Field 

世界経済フォーラム年次総会2023「Data Collaboration: Lessons from the Field」より

本セッションに登壇した河野太郎デジタル大臣は、越境データ移転を促進するための新しい国際機関の創設を呼びかけ、越境データをより安全かつ自由にするためのアプローチであるData Free Flow with Trust(DFFT) を運用するための常設事務局を通じた正式なパートナーシップを提案しました。

DFFTは、故安倍晋三元首相が2019年の世界経済フォーラム年次総会で提案したコンセプトです。河野氏は日本が今年議長国を務めるG7においてDFFTを重要議題のひとつに据えることを宣言しました。

セッションに参加した他の登壇者からは、データ流通における包括性と相互運用性の重要性を強調するコメントが寄せられ、国によって異なるデータ保護制度を必ずしも均質化することなく調和させる必要性についても議論されました。

DFFTの現状と展望については、年次総会に向けて寄稿された最新のアジェンダブログ「データの越境移転を促進すべき理由とは?」を参照ください。↓


本セッションの詳細レポートはこちら↓


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Generative AI 

世界経済フォーラム年次総会2023「Generative AI」セッションより 

データ分析に力を発揮していた人工知能(AI)が、機械学習を用いて既存のデータセットから新しい画像や動画、テキストなどを生成することができるようになっています。こうしたパワーによってAIを巡る議論はどのように変化し、さらに産業にどのような影響を与えるのでしょうか。

ソニーグループの北野宏明CTO(最高技術責任者)は、こうした一連のAIテクノロジーの進化は「クリエイターにとって巨大なポテンシャル」と述べる一方で、AIが学習する元となるデータの出所が明確かつ公正であることを担保することは企業側の競争力になると明言し、ソニーグループ全体でグローバルにAIバイアスや倫理に取り組んでいることを紹介しました。また現在、こうしたAIテクノロジーを使いこなすための膨大なデータ量とコンピューティングパワーは世界でも一握りの企業しか保有していないことを指摘し、この現状が特定企業による市場支配や、社会におけるデバイドに繋がる可能性について警鐘を鳴らしました。

その他の登壇者からは、ユースケースを用いたリスクベースの手法によってAIバイアスを規制するEUの取り組みや、AIを「慎重に使う」ことを社会的に広く学ぶ教育の重要性が議論されました。

ちなみに、本セッションにも登壇者の一人であるRefik Anadol氏は、年次総会の会場で「Artificial Realities」というAI Dataを用いた作品で話題になっていたアーティストです!

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Bending the Emission Curve

世界経済フォーラム年次総会2023「Bending the Emission Curve」より

気候変動によってパキスタンやソマリアなどが極度な熱波に襲われていることは報道されている通りです。パキスタンの気候変動担当大臣であるSherry Rehman氏はパキスタンにおいて春という季節がなくなり、夏には47度といった異常気象に見舞われていることを述べ、現状に対する強い危機感を訴えました。

宮永俊一(三菱重工取締役会長)氏は、同社が全社を挙げてゼロ・カーボンのために水素や再生可能エネルギーを用いたインフラ施設にシフトしている現状を共有し、世界最先端の水素燃焼技術を用いた水素ガスタービン開発、グリーン水素やブルー水素の活用、鉄鋼やアルミニウムのプラント事業での脱炭素活動、二酸化炭素回収技術などの取り組みに触れ、産業側にとっても投資負担が可能な範囲であることもその社会的責任のひとつであることを強調しました。

本セッションでは、COPをはじめとする国際的な枠組みを評価しつつ、実際の取り組みは政策的にも産業的にも各国がサイロ化しており、ベストプラクティスの共有を含めてグローバルな連携が不足しているという実態を明らかにしました。そして、コストと時間の両面において、国や産業を超えた官民連携こそが具体的なインパクトにつながることを議論しました。

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Attracting Talent 

世界経済フォーラム年次総会2023「Attracting Talent」より

パンデミックは人々の働き方に関する考えや価値観に大きな変化をもたらしました。結果として労働移動が活発化し、人材の確保と定着がかつてないほど重大な課題となっています。企業にはどのような対応が求められているのでしょうか。

リクルートホールディングスの出木場久征CEOは、パンデミックの労働市場への影響度合いは産業や国によって異なることについてデータを用いて共有しました。また雇用喪失の規模について、米国ではパンデミックによる失業率の振り幅(2020年4月には14.7%まで急上昇し、現在は3.5%)が大きかったことに対して、EU圏では2020年4月から現在まで6~7%の水準と比較的安定していると言及しました。日本ではパンデミックで100万人が雇用を失った一方、失業率は過去3年と変わっていないと述べています。

さらに、人材の確保と定着には情報の透明性が必須であることも指摘しました。給与、福利厚生や職場内の雰囲気などをオンラインで調べることができる今、高い情報開示レベルを担保したうえで良い労働条件を提示できる企業が人材定着を実現できるとの見解を共有しました。
 
その他の登壇者からは、人材の確保・定着を促進するため取り組み(「ベストプラクティス」)として給与の見直しや働き方の柔軟性、年齢・性別を問わない公平な扱いなどが挙げられ、その実施において企業の代表者や政府、そして組織体制が果たす役割の重要性についても議論されました。
 

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世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
Jonathan Soble (Communications Lead)
ティルグナー順子(広報)
Gunjan Sharma(インターン)

【ご参考】
【年次総会テーマ「Cooperation in Fragmented World」について】

【年次総会(通称ダボス会議)3日目のレポート】



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