見出し画像

年次総会(通称ダボス会議)2023 - Day 4&5

昨日(1月20日)、年次総会(通称ダボス会議)2023が閉幕しました。最後の4日目と5日目に開催されたセッションの一部と、総括についてご紹介します。

Cities Rebuild

世界経済フォーラム年次総会2023「Cities Rebuild」より

地政学的紛争、気候変動、自然災害などの危機から都市を再建・復興するには?復興に向けた取り組みに、レジリエンス、アダプテーション、社会的価値やインクルージョンを組み込むために、公共・民間セクターはどのような戦略が可能なのでしょうか。

まずは官民連携の重要性が指摘されました。Habitat for Humanity International CEOのJonathan Reckford氏は、復興は官民連携によってコミュニティの声を吸い上げ、優先順位の決定と決断のスピードを上げることが必要だと強調しました。これは従来では考えられなかったブレイクスルーの機会にもなりえます。

Avison Young (Canada) Inc. CEOのMark Edward Rose氏は都市の再建において市場・政府・市民に対立はないと前置きしたうえで、民間企業はリターンを必要としていることを意識しなければいけないと指摘しました。その上で都市の問題に関して、民間のみで行動することは不可能であり、公的セクターの行動の重要性を強調しました。

HCC Ltdの副会長であるArjun Dhawan氏は、都市の持続可能性を考えるうえで見落されがちなものは、民間企業が3R(Recycle/Reuse/Repurpse)を徹底することに加えて、都市の利用目的を考え直すRepurpseの分野に利益を創出し民間企業を参入させることだとしました。

知識面からの支援やガイドラインの存在の重要性も指摘されました。UN Habitat事務局長のMaimunah Mohd Sharif氏は、気候変動や危機の影響を一番貧しい人が受けやすく、アジア・アフリカに多く存在するスラム街のような都市では、再建における知識やガイドラインが重要であり、気候変動によって被害を受けた人々に対してその場所に住むことの危険性を伝える必要がある一方で、彼らの思いとバランスを取ることが大切であると、モザンビークでの自らの経験から語りました。Reckford氏もHabitat Strongプログラムに基づき2000ドルの追加工事でハリケーン被害を避けることのできた住宅の事例をあげ、適切なガイドラインと事前の対策の重要性を提示しました。

追求されるべき都市の価値についても議論されました。Dhawan氏は、今後の街にとって重要なことは安全性、アフォーダビリティー、持続可能な解決策であるとし、生活インフラへの容易なアクセスが確保された都市を目指す「15分原則」を紹介しました。そしてこれらの実現に向けて、市民参加を実現するような地方政府の重要性を指摘しました。

世界経済フォーラムLCC、アーバントランスフォーメーションセンター所長のJeff Merit氏は、より良い世界に向けて共に計画し共に行動することの重要性とそのためのプラットフォームを紹介してセッションを締めくくりました。

このセッションのオンデマンド配信はこちら↓


Global Economic Outlook: Is this the End of an Era?

世界経済フォーラム年次総会2023「Global Economic Outlook」より

複合的な危機でグローバルシステムが揺さぶられるなか、世界の景気動向の鍵を握るリーダー達は経済・金融政策をどのように捉えているのでしょうか?

長短金利操作の動向から国債市場の不全を指摘された黒田東彦日銀総裁は「間違っていない」と反論。1%程度と言われていた実質GDP成長率見通しが2022年度に2%、2023年度にも2%近くになること、デフレ脱却、堅調な労働市場など、その成果と構造改革へのインパクトを強調しました。そして12月に4%であった国内のインフレ率は輸入物価の高騰による一時的なものと説明し、「持続可能的で安定的な2%」というインフレターゲットを自らの任期中に達成できなかったことが残念だと述べました。

IMFのKristalina Georgieva専務理事は世界経済の見通しを上方したことに触れつつその見通しに慎重な姿勢をみせ、「経済成長のためにはグローバル経済を分断させないことが必須だ」と連帯を強く呼びかけ、ウクライナ紛争によって過去30年間において世界が享受してきた平和の配当(Piece Dividend)が消滅した今、投資がさらに軍事領域にまわれば「もっと多くの人が貧困になり、もっと多くの人が飢えることになる」と紛争の早期解決を訴えました。

このセッションのオンデマンド配信はこちら↓


Closing Remarks: The Road Ahead

世界経済フォーラム年次総会2023「Global Economic Outlook」より

年次総会2023には47カ国からの首脳、350を超える政府関係者を含めた総計2,700人超のリーダー達が集いました。ハイライト動画は下記からご覧ください。

総括プレスリリースのタイトルは「スピード、協力、レジリエンスが分断された世界を修復する」でした。気候変動を含めた地球規模の課題解決が、分断の突破口になります。スピードをもった連携の具体的なアクションに向けて、多くのグローバル・イニシアティブも発表されました。詳細は下記を参照ください。


世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
ティルグナー順子(広報)
木吉雄哉(インターン)
奈良美佳(インターン)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?