アジェンダブログ: TradeTech と貿易促進ー政策立案者が知っておくべきこと
TradeTechとは、その名の通り、グローバルな貿易の効率化を目指すテクノロジーです。進化のスピードが速いテクノロジーに合わせて、政策立案者が適切な政策決定を行うにはどうしたらいいのかーー本記事では、TradeTech has huge potential to boost trade – here’s what policy-makers should knowと題するアジェンダブログをご紹介します。
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TradeTechの可能性を引き出すには
TradeTechの可能性が最大限に発揮されるためには、グローバルに連携した技術開発が必要です。そして政策立案者は、誰もがテクノロジーへ平等にアクセスできるようにしなければなりません。法律よりも早く進化する技術を規制するかどうか、どのように規制するかということも重要な検討事項です。
政策決定の方法
適切な政策決定には、TradeTech を継続的にモニタリングし、 国内外の専門家と定期的に協議することが必要です。そのための4つのアプローチを紹介します。
①状況の多様性と複雑性を理解する
初期段階にあるイノベーションには成長の余地が必要である一方で、成熟したソリューションは包括性を確保するための規制を必要とする場合があります。
テクノロジーの進化に合わせた政策には、ダイナミックなアプローチが必要です。世界貿易機関(WTO)と世界経済フォーラムの共同出版物「The Promise of TradeTech: Policy Approaches to Harness Trade Digitalization 」では、国内外における既存および新規の規制の例をいくつか挙げ、国家間における一貫性を担保する必要性が強調されています。
②政策アプローチを構成するフレームワークを適用する
「TradeTech Policymaking Quadrant(TradeTech政策決定の4象限)」は、適切な政策対応を明確にすることを目的としたフレームワークです。水平方向には発展段階(ソリューションが初期段階にあるか成熟段階にあるか)、垂直方向には影響範囲(イノベーションが国内または国際的な関心事にあるか)という2つの側面から構想されています(下表)。
③ユースケースをもとにした政策
このフレームワークには、さまざまなソリューションやユースケースの例が当てはまり、政策決定の参考になります。
一例として、情報を共有するコミュニティをデジタルでつなぎ、需要と供給のネットワーク全体の可視性と状況認識を向上させる「データ共有プラットフォーム」があります。データ共有プラットフォームは、ローカルなアクターの集合をまとめる(B1)、あるいはローカルなコミュニティをグローバルな文脈に統合する(B2)成熟したテクノロジーとして考えられています。
④国およびグローバルレベルでのステークホルダーとの連携
初期段階にあるソリューションの場合、政府は関連するステークホルダーとの定期的な協議を通じて、常に情報を入手することが求められます。成熟したテクノロジーやアプリケーションの場合、関連するステークホルダーの支援を受けて作られた政策を通じて、リスクを軽減することができます。
国外で発展したソリューションについては、実証の機会を特定し、できるだけ多くの企業がTradeTechの恩恵を受けられるようにするために、国際的な関与と連携を求めることが必要です。
規制しないことが最適な場合もあります。規制の必要性については、政府のイノベーションチームが率いるマルチステークホルダー専門家グループとの話し合いで決定することが重要です。
TradeTech Policymaking Quadrantは、国内および国家間の対話のための共通のフレームワークの導入を通じて、調和と一貫性のための国際規制協力を推進しています。その協力には、政府に加えて民間部門の役割も重要です。関与しなければ、民間部門は自らが望まない政策の選択を迫られるかもしれません。
国際貿易とサプライチェーンにおける信頼回復
国際貿易とサプライチェーンにおける信頼回復は、今年1月に開催されたダボスアジェンダでも取り上げられ、”Just in time"から"Just in case"への転換をキーワードに、COVID-19をきっかけに注目されるグローバル・サプライチェーンのレジリエンス(回復力)の確保に向けた議論が展開されました。
レジリエンスなサプライチェーンを構築することに加え、WTOのNgozi事務局長が指摘したように、透明性・包摂性・公正性を充たす貿易の国際ルールのアップデートも重要です。
またこうした取り組みには国際的な「データ連携」が不可欠であることは言うまでもありません。
こうしたTradeTechがもたらすインパクトは、地球規模だといえるでしょう。今後の動向に注目です。
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