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事業会社を始めて、そして閉めた話(その11)闇から逃げる。

S課長より、私の人事が、お辞儀部長から変わった新部長に上がって面談が行われるその隙間、と言う微妙な狭いタイミングで、その先輩から突然メールが来た。

嫌だなあと思いながら、今更何が言いたいのかい、と開く。

「例のパワハラ課長のスタッフになるんであれば、お辞儀部長も、もう自分の範疇じゃ無いが、できる事をしてみても良いと言って下さっている」と。こちらは、家老の取り巻きから、何か土下座でお達しを聞いている貧乏長屋の八つあんと言った気分です(笑

とは言えおかしいぞ、と思う。無茶苦茶な話です。

正式に、S課長が私に意向確認を既に済ませている。新部長もS課長もレポートラインでない先輩にその情報を出すはずがない。

ただ、S課長が時系列上お辞儀部長の部下としてオーバーラップしてるので、お辞儀課長には伝わったかもしれない。彼はもう人事権がないけど、例えば以下の様な事が考えられるなと。

・リストラ対象にした私と毎日同じフロアで働くので丸く収めたい。

これはまあ判る(笑

・新部長が、新事業のエキスパートとして、貢献したい言う意向をS課長から貰って、「元々事業計画でウチの人員だけど、リストラ対象にした理由は?」と聞かれた。

これは少し怖いなと思いますが、どちらの場合でも、もう権限も関係も無いので、彼自身が「S課長から意向を聞いた、やりたいならその方向で申し送る」等の体で、私にメール投げれば終了かなと思う。

ここで何故会社さえ違う先輩が、意向確認の体でメール寄こすのかと言えば、つまりは、部下が目力一杯で教えてくれた、「先輩と、直角お辞儀部長で、Kたろうは取らないと話していたんですよ!!」が事実だったという事だろうなと。

お辞儀部長としては、知らない人員の適性確認も手間。リストラ候補の判断は勝手知ったる友人の先輩に聞いたのでしょう。分からないでもない。そこで、二人とも切って良いという密談、もしくは彼女交えてあけすけに話したか知りませんが、それを私の部下が耳にして、教えてくれた。

先輩に、「あいつ残るよ」と連絡入ったんでしょうね。

応募期間が終了した今、元々会社のクロージングに必要な計画内の人員、ハッキリ意志と貢献を示して新しい仕事に適正もあれば、とりあえず使ってみてとなるだろうと。切るんなら次は年度末だろうけど、最早自分は関係ない。

形つける必要あるなら、切って良いと言ったお前からなんか投げといてよと。

そんな所ではないかと最速で頭を巡らせる。で返信を考える。

「私の意向はS課長から新部長に上げています。あなた関係ないです。元々出向解除から戻るべき組織で、わざわざ私を外す謀議をし、手出し出来なくなったら、自分等のお陰で帰任出来た印象を持たせようという腹ですか、ああそうですか。薄汚いですね」

と書きたいけども、時の運でクビが繋がりかけているのが切れたら大変。ここは慎重に、

「ご存知の通り、これまで数回トライして来たテーマで、これは是非やりたいものです。所属部署ですし既にパワハラ課長から会議を色々入れられている状態となっています。それを行うにあたり、今後協業が必要になるパートナーの社長にも、将来的な話はしてみていますが、他の移動先を探したりはしていません。」

と、どのマネジメントに流れても問題ない様に、意思の明示と、もう現場では必要な人材としてインボルブされている旨の、ふんわりした内容で返信をする。

この後、勿論外部からの問い合わせ等を貰って、先輩と同報のやり取りが入る事はありましたけど、この件に関して、一切メールも連絡もない。

もう7年が経つ。

元々気難しい人という評判で、自分の意図に反したり、面子を潰される事に対する限界が低い印象だった。頭が良いですから、徹底して免責的に立ち回って復讐する嗜虐性みたいな物もある。

私が彼にとってどんな人間だったか思い返すと、先輩がバカにしたり怒り覚えてうまく付き合えない世との中和剤、そんな感じだったなと。

イラついて煮詰まった先輩に対して、「そうは言っても、まあいいじゃないですか、あの人なりにこう思ってんじゃないですかー、で、今日もクソして寝るわけですよ。ハハハ。あんたもな」で笑ってもう一軒行くか、言う感じで、煮詰まった感情を緩和する役割の事が多かったかなあと、こっちは優れた批評や考え方を伺う事が出来た。今懐かしく思います。

なんだかんだ先輩とは夜もよく遊びに行き、飲み上げて、10数年の関係があった、会社で一番仲のいい同僚でした。

先輩が人を受け入れる間口を私が広げ、また逆に、先輩の鋭い面、知性など、優れている所を受け入れる人々も広がって、私は触媒として良いコンビだったかもしれない。

出向先での後半の数年で、何とかすると言いつつフェードアウトして行く先輩に、ついて行かずに会社の件どうなってんですかと突き上げるので距離が離れた。一方出向元を移動し、味方がいない中で怨嗟が溜まっていってしまったのかもしれません。こちらも会社を閉め、これから家族を持つ等、身辺変わる時期で余裕はない。

大きくは、会社に対して、使命が終わったから後処理はまあどうやっても多分大差ないと知的に思う先輩と、まずはフルサークルで奔走するのが責任と思う私、これが二人の分け目だったかと、今は思います。

残念ですが、この時にバッサリ自分の中で切りました。

今でも、昔の同僚の飲みがあると、一緒に呼べないと言うことで、周囲にご苦労をかけます。良いコンビだったのになんでまた、と残念がられます。やはり、あんまり明るくない様子でやっているとも聞こえたりもする。

こんな時は、長年やってきた親友に近い人とも2度と戻り難い亀裂が入る。それどころか、崖っぷちで後ろから押される。そんな事も起こったというお話でした。

自分の処遇の話に戻ると、やはり貢献できると説明ができ、意思表明する事が基本のキで、自分は辛くもサルベージされた。テーマが降りて来た事や、人事異動があった事は運ですが。見逃してはいけないし、リストラが一旦終わるまでは何事も決めてしまわない様に、頭出さないようにしゃがんで待った。

必ずしも会社に残る事が、全ての人にとって幸福なのかという話はあります。特にこれからは。でもこの間、私と同じサバイバル状況のCS担当の方、彼は早期退職募集に押し切られてしまった。

年齢的にも先輩より上で厳しかったと思いますが、離れた私と違って、彼自身は、先輩をしきりに頼ろうとしていました。

切ない話です。

続きます。オフィスを閉めるまでの事ゴト。

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