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事業会社を始めて、そして閉めた話(その18)自分を守ったポリシーを一旦捨てる。


「我」のもう一つは、仕事は”成立第一”、草薙素子風に言えば、”実効制圧力(笑)第一”である、という自分のポリシーです。何故それが駄目なのか。ちょいと長めに4000字一気に行きます。

●渡り鳥的なキャリア

 大きくはプロフィールに書いてあるような領域で、3~4年のサイクルでオーバーラップしながら、様々なキャリアを歩んできました。

異動も多かったけど、時々の「事」に応じての異動なので当たり前、感慨も無かった。胃に穴が空く程追い込まれたハラスメントの経験から組織に幻想もありません。

いくつかの事業プロジェクトのリーダー、統括職などはあるとして、あえてパラパラ職種を書いてみる。

商用サイトのwebマスター、他社への技術や仕様ライセンス、プロやコンスーマーの商品企画、ゲームのツールミドルウエアの商品化、ネットサービスの仕様策定、商品事業や合弁起業立ち上げ、ネットコンテンツの週次企画編成、サービスシステム開発運用、海外の販路開拓、所謂マーケティング一般、イベント、媒体のプロモーション、渉外、権利者交渉業務、アーティストへの導入、専門家への導入、営業に技術営業、日本、海外のコンテンツ、サービスのアグリゲーション等々。

もう、デパートですね(笑

リソースが欠けている部分を自分で当座補ったり、事業のコアとして管理しなければいけなかったり、そんな諸々の必要があってやった事で、航路に出た船の操縦もやり、機関士にもなり、通信士、偶に塗装の間に合わないところを塗り、補給をし、という様な感じです。

皆それぞれ腰据えてやった仕事になります。私もう五十路なので。

●それ故の長所と、大事にしているポリシー

器用貧乏、または一人事業部ともいえますが、様々な仕事で地雷も沢山踏んで培った、異なる構造の業界とのコミュニケーションが常識化していて、特に”協業”という対等な立場で信頼を構築することに慣れている。これは一企業に長く内勤していた人は通常特に苦手とする所に見えます。

また、事業の多くの側面を経験しているので、どの領域に何が欠けているかの把握と、必要な知見を一気に積んで、周辺要素と繋げて絵を作って着手が速いというのもある。

後は、プロフィール周辺軸を中心に膨大な連携した人脈を含むワールドを持っているのですね。これはそうそう得られない物だと思っています。

 でも、こんな一見専門の不明な人間は、水平分業の進んだ今の事業ドメインの企業に席はありません。「大抵の事は良く知っていて、独自のパイプを持って、どんなことでもなんとか成立させる」そんなタイトルも職位も会社には無い。特命係長はマンガです(笑

一つのプロジェクトが終われば次の戦線へ。自嘲的に「俺グルカ兵だからなあ、コンサル扱いだからなあ」等と良く言っていた。一方、社外から転職してきた人材等も、多くは同じようになって、この会社合わないなと出て行ったり、久しぶりに聞いてみればそんな部署にいるのか。。。と枯れて静かにしている人も多い。 

 こんな自分には「成立させることが自分の仕事、最上価値」というマインドセットが、強く醸成されました。パブリシティに足跡が残るまではやり続ける。それが次の名刺になる。そんな仕事の仲間は、身内より見知らぬプロ。価値観を共有していれば、よっぽどその方が個人的付き合いも気持ちの良いもの。

成立させる事自体と、それに必要な信頼を分かち合える人、これを圧倒的に「是」と考えるようになった。

●それ故に嵌り込む、大企業での悪循環

 事業を囲った連中が、失敗した挙句、私の様な人員にそれが転がり込んできて、多くの力を注いで取り組み、関係パートナーと信頼も復活出来て成立して、渡した途端に崩れて自分の外への信頼も壊される、などの経験が重なってくると、「出来もしないのに計画するな」「理解もしていないのに、絵餅の戦略を外部に語るな!」「それをチェリーピックラインダンサーにまかせるな!!」と瞬間湯沸かし的に思う。

統括職どころか、経営陣にさえそう思ってしまう心が自分の中に潜んでいる。此方からすれば、その人に任せたら失敗すると分かっているのに採用し、結局それを失敗させないために自分はスーパーサブで出張る事になり、尻ぬぐいから本来のKPIまで達成した挙句に評価はない。

 実際には、経営陣に必要な物は経営の経験。実は得意なものなどあってもなくても良くて、株主にコミットした事を滞りなく執行、管理しようとする視点から我々を見、最終的なアウトプットの場はそちらにあり、それに手を上げてくれる人にKPIを設定し、コミットさせ、説明をさせるのが正。

そこから末端まで流れ行く大企業の業務フローの中で、常に自分の「仕事は成立させる」ポリシー、モラルを、言ってみれば「人質」に取られ、悪循環から抜け出る事が出来ずに来た。

こういう大きな企業においては、これも一つの「我」なのだと今になってよくわかった。

●サバイバルに必要だったポリシーも時には曲げる

唯一正しい方法として、会社体として、しっかりと(変な表現ですが。。。)”順を追って失敗する”しか無いのです。それを思わず救いに行くのは誤り。コミット出来ない(正しいフローに乗らない)事なら、ぐっとこらえて手を出さず見ているのが正。

そうしないと組織としてリカバーも反省も永遠に出来無い。全く何も詰み上がらない。所謂PDCAもOODA無いのです。本当の黒ひげ危機一髪時には手助けするとしても、それで企業は学ばない。それ以外に失敗を建設的に終わらせる方法等ないのです。失敗もまた、プロセスにのっとって公式に進めなければならないって事です。

属人的な達成は、企業の価値にならない。

人材は最も大事ですが、実際は組織、人々もマシーナリーなんです。その隅々に、失敗を指差し確認し、課題解決に向けさせることが、会社として必要になるのです。会社が大きくなるほどに、マシーナリーの度合いが高まる。

事軸、自分のサバイバル軸で成立、成功に必要だったポリシーを、ここでは曲げなければならない。

 少し余談になりますが、不思議に思うのは、小泉政権以降、ガバナンスやルールが厳格に決まっていく中、中の人員は、むしろ能力のある人がどんどん外に出たり出されたりした。そして基本ありもの人材で事業推進する。

しばらく人も取らない時代が続いたので、ルール遂行、計画とPJ管理に長けた人が生き残り、それはそれで企業としてボトムとアカウンタビリティは担保した状態でもある。

しかしながら、実際は残った人材が自分のサバイバルの為に、ルール遂行スキルを盾に既得権益を守る人の割合も増えた。もう少し仕事本来の能力に寄らないと、そしてそれを認めないと企業としての底力が弱まる様に思う。

今でも、個人的にはオーガニックに物事を生める土壌は、本質的に企業に必要なものだと思っています。物事生まれる所で腑分けしたら、死んでしまうんです。

今の所「成立」は主体性と実感でなく”測定の対象”ですが、もう少しエキスパートの視点と納得感に(それも数値化するとして)寄せるべきかなと思う。

それには事業の周辺理解を深める必要があり、教育が必要。長年ガバナンスの教育ばかりでしたが、今後は事業知見の確からしさに基づいた教育と人事的な評価が立ち上がっていかないとならないと思う。

そうしないと、ファンドが出資し、By the bookの経営陣が居て、後は私の様な人間が下方されて出来たコンサルが全て行う未来が待っている事になる。プレミアムののれん代は消尽していき、その企業である必然性はやがて消える。

◆ ◆ ◆

 長くなったので締めに入ります。今は、そのパワハラ課長と関係する前、20年以上前に取り組んだ仕事をやっている。

凄く不思議な事に、これまでの会社人生からすると違和感さえ感じる安定した状態なんです。

古の事業の復活、一義的にその代表として、社内で自分にしかないポジションがある。皆その道のエキスパートだと私の事を当然の様に見ている。正直自分的には全然そう思っておらず、逆にそう思われる社内の知見のなさに危機感すら感じる(笑

もちろん社内では一番知見はあるでしょうが、本質はそんなものではなく、これが今の多くの企業の問題でもあるのではないかと思っています。素人集団を脱するべく、まさにKPIを立てて、少し余計に予算を貰ってそれこそコンサルを業界から探し、自分も含めて学び、後進を育てる社員教育もやっています。

会社の戦略の掛け声がある中、「自分がやるべきだと手を上げて承認されて進めてきた事業」について、4半世紀以上も働いて”社内に普通に居てよい”感覚は、初めての事で、なんてこった!という感じです。

会社の戦略等に沿って、手を上げて立って認められて仕事をするというのは、こういう事かと。昔と同じ目で複雑なまなざしを私に向ける人がいますが、それはグルカ兵として自分を使っていたり一緒に仕事をしていた、パワハラ課長含む、例の”吹き溜まり”の人々だけ。

何より驚いた事は、小さい自分のポジションを持って立っている事で、むしろ私のコンピテンシーである前の仕事に類似する相談から、今の仕事に関連する案件から、週次で飛び込んでくる。それも”オフィシャル”に。

スーパーサブ的ボランティア人員枠から、突然解放されたのです。

つまり自分のKPIを持ち、一回しして継続してそれを持っている(人員である)、という事が、良し悪しは別にして、どれだけ大企業では大事な事かと、そう感じています。これも問題なんですよ。エキスパートより、同じKPIのムジナが信用される。

でも少なくとも、その組織で物事がずっとやりやすくなるのであれば、それにFit inする努力は無駄ではないと今思います。

 何となくいい感じで終了しそうな流れで(笑)ここで締めにしたいですが、後少し、事業会社の顛末を遡って、自分が間違っていたあたりを舐めてみたいと思っています。+2回かな。。。

ちょっと根詰め過ぎたので、少し置いてから書こうかなと思っています。


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