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執筆指導が失敗した理由にやっと気づいた、という話

執筆勉強会の募集を開始しました。参加案内では全体像を伝えましたが、さらに踏み込んで勉強会を始めた理由や経緯なども説明したいと思います。

勉強会オーナーの中嶋がFPとして開業したのが震災直後の2011年4月、ブログを書き始めたのは翌年2012年2月、2か月後にはブログがヒットして集客できるようになり、編集者の目に止まって日経ビジネスの連載が決まったのが2012年10月です。

ブログのヒットから約半年、何のコネもツテも無く大手経済誌で連載が決まりました。そして2013年にはシェアーズカフェ・オンラインという専門家が集う経済メディアを立ち上げます。執筆指導を始めたのはこのウェブメディアがきっかけです。

この辺りの話は以下のインタビューでも話しています。

■仕方なく始めた執筆指導

シェアーズカフェ・オンラインに当初参加した書き手は20人ほどです。各種士業や大学教授など、多数の専門家が集まりました。無名な人間が始めるウェブメディアとしては、考えられないほど最高のスタートです。ただ、当初の予想を裏切って皆がまともな記事を書けない状況でした。

素人に毛が生えた程度のFPである自分がそれなりに記事を書いてブログのアクセスも集められたのだから、難関資格の保有者が文章を書くなんて簡単だろう……と考えていましたが、その甘い考えは一瞬で打ち砕かれます。かといってせっかく始めたウェブメディアを辞めるわけにもいかず、仕方なく執筆指導を始める事になります。

このように、当初は想定外の事態で仕方なく始めたのが執筆指導でした。

幸い、メディアの立ち上げから数か月で国内最大手のニュースサイト、ヤフー!ニュースへの配信が決まるなど順調な面もありましたが、失敗も多々ありました。どちらかと言えば失敗の方が多かったと思います。特に執筆指導の面においてです。この失敗が勉強会へとつながっています。

■執筆指導が失敗した理由

自分個人で言えば執筆指導で上達できたこともあり、プラスの方が多かったと思います。教わるより教える方が上達すると言いますが、まさにそれです。一方、マイナス面はすべての書き手を必ずしも一人前に育てられなかった事です。

原因は最近になって分かりましたが、二つあります。どちらも自分の問題です。一つは「答えだけを教えていたこと」、もう一つが「過剰に手を差し伸べていたこと」です。

■失敗の原因はすべて自分。

執筆指導と言っても最初は出来上がった記事を直す添削(てんさく)です。多数の専門家に教えていればどのようなミスをやりがちかも分かってきます。指導の繰り返しでノウハウも増え、執筆のガイドラインやマニュアル等も作れるようになりました。

ただ、どんなに指導してもまともに書けるまで成長する書き手はごく一部です。当初は上達しないのはやる気が無い、センスが無いと書き手のせいにしていましたが、原因は自分にありました。

何を書けば良いかは伝えていても、「どのように」書けば良いのか、より噛み砕いた、より具体的なテクニックまで落とし込んだ指導が出来ていなかったわけです。

答えを見せてこの通りにやってね、出来上がった料理を見せてこれが美味しい料理だから同じようなものを作ってね(ただしレシピは無し)、という指導だったわけです。これでは初めからセンスのある人しか書けませんし、センスの有無で決まるならそもそも教える意味がありません。

何度指導をしても同じミスをする人も少なくありませんでした。上達する気が無いと勝手に思い込んでいましたが、これも「記事を書く前に考えるべき事」を伝えていなかったわけです。

それは記事を書くことの責任の重さであったり、心構えであったり、記事を書くことでどうなりたいのか、読者からどのように見られたいのか、といったいずれも記事を書く前の話です。前提が共有できていないのですから、小手先のテクニックをいくら教えても伝わるわけがありません。

昨年ラグビーのワールドカップが話題になりましたが、ルールを知らなければ何をやっているのか分かりません。もしそんな状態でラグビーをやれと言われて、見よう見まねで周囲の選手に合わせて走ったりタックルをしても、上達するわけがありません。自分の執筆指導はそれに近かったわけです。

■記事を書く前の5w1h

文章を書く際には5w1hが重要と言われますが、実は「記事を書く前」にも5w1hは必要です。これは勉強会でも最初に触れる内容ですが、ざっと説明すると以下の通りです。

いつ………書くタイミング(読まれるタイミングは?)
どこで……書く場所(ブログ・SNS・商業メディア・note等)
だれに……誰に向けて書くか(想定する読者は?)
なにを……何を書くか(読まれる内容とは?)
なぜ………専門家としてなぜその記事を書くのか(執筆の意図は? 記事を書くことでどうなりたいか? どう見られたいか?)
どのように……読みやすい文章、面白い文章の書き方(執筆の技術、ノウハウ)

この中で当初から教えていたのは「なにを」の部分だけです。これではいくら教えてもトンチンカンな記事が上がってくるに決まっています。

「この書き手はこの記事を読者に読ませて一体何をしたいんだろう?」

……と頭を抱える事も多々ありましたが、書く前に考えるべき事を教わっていないのですから上手く書けなくて当然です。

自分にとっての当たり前は他の人の当たり前ではない……そんな事に何年も執筆指導を続けてやっと気づいたわけです。正解も分からないままダメ出しばかりを受けて、書き手もストレスの連続だったと思います。

■無意識を意識化する

自分はブログを書き始めて運よく、すぐにヒットしたことから、記事の書き方は書きながら、何となく、無意識のうちに身に着けました。教えるのが当初はヘタクソだった原因はそんなところにもあります。

それでも執筆指導を繰り返した結果、「何を書けば良いか?」については蓄積が出来ました。それを元に執筆セミナーも行いました(以下のリンクで資料と動画を公開中)。そのセミナーの資料を編集者の方に見せると「これだけ記事の書き方を言語化出来ているのは凄い」と褒められることもあり、余計に調子に乗っていたわけです。

資料をきっかけに、これだけしっかり教えているならぜひ、とITメディアビジネスオンラインやプレジデントウーマン等の大手メディアとコラボ連載企画も決まり、評価を受けた事は間違いありません。ただ、それは編集者が相手だから通じた話で、執筆経験の無い書き手には噛み砕き方がまったく足りなかったわけです。

本来伝えるべきだったことは、前述の書く前に考える5w1hの「なぜ書くか?」、具体的な執筆テクニックである「どのように書くか?」といった、特に重要な部分です。

無意識をいかに意識化するか、そしてロジカルに体系化するか、それが成功したことも勉強会を始めようと思ったきっかけです。

その際に役立ったのは、箸に棒にも引っかからなかった作家志望だった過去です。どうすれば読まれる文章を書けるのか? そればかりを考えて、文章術の本も多数読んでいたことが運よく役立っています。作家としてセンスの無かった自分はそういった本を頼るしかありませんでした。

結果的に小説やシナリオを書くことで1円も稼げませんでしたが、今となっては記事を書いてウェブメディアを立ち上げて、本を書いて集客をして、編集プロダクションを運営して執筆の勉強会もひらいて、と最大のメシの種です。当時学んだことはすべて役に立っています。

勉強会を始めるのは2020年3月からですが、執筆指導をするのはこれが初めてではありません。

7年前の2013年から専門家へ指導してきた試行錯誤がある、30年前に小学生だったころからの蓄積がある、多数の失敗と試行錯誤を経験してきたことは今後の指導で確実に役立つ、と自信を持って言えます。

■執筆・掲載と指導を切り離した理由

勉強会を始めた理由の一つに、掲載を前提にした指導は教える側も教わる側もキツイ、という事情もあります。

シェアーズカフェ・オンラインでは基本的に掲載を前提に書いてもらいます。ただ、参加したばかりの人は掲載の水準に達していない記事を書きます。それでもボツにするのはもったいないし可哀想、ということで指導も兼ねて無理やり掲載可能な水準まで直します。

書き手の中には、執筆する・指導を受ける・掲載する、を2~3本も繰り返せば短期間で上達する人もいます。ただそれはセンスのある人だけで、そうでない人の方が多数派です。するといつまでも大幅に直してから掲載する、という状況になります。

これでは負担が大きいだけではなく、毎回ボロボロに直される書き手も気分が良いわけもありません。何より必死で書いた記事がまったく読まれずどう書けば良いか真剣に悩む……という試行錯誤の機会、上達の機会も奪われてしまいます。

以前は、これだけ丁寧に手直ししてるのになんで上達しないのか? なんで同じ指摘を何度も受ける人がこんなに多いのか? と腹を立てていましたが、原因は過剰な直しで成長の機会を奪っている自分のせいだとある日突然気づいたわけです。手を差し伸べた事がかえってマイナスだと分かった時には相当なショックでしたが、気付かないよりはマシです。

個人ブログなら好きに書けば良いと思いますが、シェアーズカフェ・オンラインは小規模なメディアとはいえヤフー!ニュース等にも配信していますので、あまりに酷い記事は載せられません。執筆と指導は切り分けなければ、コツコツ学んで自信がついてから書きたい人や、遅咲きの人に対応できません。

こうして、結果的に勉強会という形で執筆・掲載と指導を分離することになりました。

長々と説明しましたが、インプットとアウトプットを中途半端にセットで提供せず、まずはしっかり学ぶ、その上で上達してからプロとして記事を書く、という形は試行錯誤の結果たどりついた答えです。

参加者全員が必ずしも商業メディアで記事を書きたい人ばかりではないと思いますが、読まれる文章のテクニックは他分野の文章にも応用できます。

働き方も分野も問わず、文章が上手く書けない、文章は苦手、と悩んでいる人は多いと思います。ただ、それは表面的な文章の上手い・下手が問題ではなく、先ほど挙げたような「書く前に考える5w1h」が曖昧なまま我流で書いていたり、あるいはネット上で偶然見かけた良い文章の書き方を真似ている事が原因かもしれません。

同じ文章でもビジネスマンが対象の経済メディアなのか、上司への報告書なのか、広報が書くプレスリリースなのか、お客さん向けのHPなのか、社内の会議で使うレポートなのか……時と場合によって、そして読む相手によって適切な書き方は大きく変わります。

どんなシチュエーションでも文章は読者のためにあります。勉強会ではそんな当たり前の話から初めて、プロの書き手になるまでサポートをします。

中嶋よしふみ FP&ウェブメディア編集長、ビジネスライティング勉強会オーナー


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