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わからないから気になる。アートも恋も、ロゴデザインも。 〜ミステリアス・デザインのすすめ〜

01 概要:
音楽ユニット「LNoL」のロゴ開発と限定レコードデザイン

2018年、m-floのVERBAL、クラシック・ピアニストの武村八重子、Mondo Grossoの大沢伸一の3人が、新たなサウンドを表現するプロジェクト「LNoL (読み:ルノル)」を始動させました。

LNoLの所属事務所LDH JAPAN様からのご依頼を受けた株式会社人間、株式会社一(読み:ぼう)と共同で、BYTHREEもリリースイベントを企画。さらにアートワーク担当として、LNoLのロゴ開発と、限定レコードのパッケージデザインを手がけました。

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▲打ち合わせでm-floのVERBALさんとお会いできてテンション高まる制作メンバー(BYTHREE、人間)。BYTHREE栗原曰く、「学生時代にm-floのアルバム『ASTROMANTIC』200回くらい聞きました」。


02アウトプット:
よくわからないから、気になる。

LNoL、その名の由来は秘密。

まずロゴデザインを開発するにあたって、LNoLという名前の意味をお伺いしました。ネーミングは大沢伸一さん。ある言葉の頭文字が由来なのですが……、あまり大っぴらに意味を公表しない方針だそう。なんとミステリアス。そこで、名前の意味ではなく、LNoLの音楽性や存在感をコンセプトに、デザインを考えることにしました。

あまりヒアリングの機会がなかったため、幅広く10案以上のロゴデザインをご提案しました。

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その中から採用されたのがこちら。従来のクラシック・ピアノ音楽の枠にとらわれず、新たなサウンドを表現する。そんなLNoLの「独特の存在感」を表現したロゴデザインです。

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言われなきゃ絶対にわからない、デザインの意味。

実はこのロゴには、“言われなければ絶対にわからない“ギミックがあります。

それは、錯視を利用したアニメーション技法「スキャニメーション」を応用しているということ。スキャニメーションとは、1枚の絵の上にスリットが入ったシートを重ねてスライドさせることで、異なる絵が次々と現れる仕掛けのことです。馬が走るスキャニメーションなど、しかけ絵本で見たことがあるのではないでしょうか。

そう、LNoLロゴの上に10本の横線を重ね上下に動かすと……、3種類のLNoLの文字が順番に現れるのです!

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10本の横線は、重なる五線譜から着想。3種類の文字は、3人の音楽と個性を表現しています。

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LNoLに関する情報解禁時は、公式インスタグラムでモーションロゴを公開。詳しくは語らず、謎めいた印象を残しています。

▲モーションは、JIKAN Designさんにお願いしました。おっしゃれ〜!!


モナリザも、恋人も、「謎」があるから惹かれる。

一般的に、ロゴの意味は分かりやすい方が良いのかもしれません。けれど、LNoLロゴのように “ちょっとした謎”があるデザインも、なんだか惹かれませんか?

そういえば、あの有名な絵画モナリザも、様々な「謎」があるから魅力的だと言われますよね。モデルは誰なのか、背景に描かれた風景はどこなのか。いろんな憶測が生まれ、それらが今も「謎」であり続けるからこそ、人々の心を掴んでいるのでしょう。

さらに、恋愛関係においても「謎」は重要です。相手のことを全て知りたい、そんな気持ちで始まる恋愛ですが、もしホントに100%相手を知ってしまったら、たぶん、ちょっとつまらない。知らない部分、謎な部分があると、ずっとお互いに興味を持っていられるのではないでしょうか。

よくわからないから、気になる。

モナリザや恋愛など少し飛躍してしまいましたが、こんな考え方でロゴを作ってみるのも面白いかもしれません。勝手に名付けて「ミステリアス・デザイン」。意味はあるけれど、わかりやすくし過ぎない・謎を秘めた表現で、LNoLのアイデンティティを視覚化することができました。


03 展開:
レコードパッケージで、ロゴのギミックを再現

ロゴ決定後、限定レコードのパッケージデザインに取りかかりました。発想の元ネタとなったスキャニメーション技法を採用。ロゴ単体では、“言われなければ絶対にわからない“ギミックでしたが、パッケージならば実際に手にとってレコードを出し入れする際、その仕掛けに気づくはずです。

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▲企画段階のラフ

レコードのパッケージは、「ケース」と「ジャケット」で構成されますが、外側のケースをスリット状にすることで、中のジャケットを取り出す際、デザインが動いて見える仕掛けを施しました。

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パッケージ制作にあたって、素材の選定や印刷方法は、印刷会社のサンクラールと幾度となく打ち合わせを重ね、検証を繰り返しました。

レコードのパッケージを制作するのは初めてでしたが、音楽好きのBYTHREEメンバーは、楽しそうに目を輝かせていました。

そして完成したのがこちら。

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▲オモテはアルバム名「Equanimity」とLNoLをイメージさせる三角形のグラフィック。ウラはLNoLロゴがパターンのようにレイアウトされています。

寄ってみるとわかるのですが、透明なケースにスリット状の印刷が施されています。

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▲ケース(外装)の素材はPP。ジャケットは紙製です。

ジャケットを取り出してみると、こんな感じに。

思い描いていた通りの、スキャニメーションが実現できました!3種類の文字が次々に現れ、動いているように見えます。「素敵な曲をいまから聴くぞ」という期待が高まる瞬間を、彩ることができたのではないでしょうか。


04 レビュー:
海外でデザイン賞受賞、クライアントからも喜びの声。

勝手に「ミステリアス・デザイン」と名付けたロゴやパッケージデザインですが、LNoLのお三方にとても喜んでいただけました。

さらにそれだけでなく、アメリカのデザイン賞「Good Design Award 2019」を受賞しました! シカゴ・アテナイオン博物館が主宰するアワードで、世界で最も歴史が長いデザイン賞です。初めて受賞した海外のデザイン賞に、BYTHREEメンバーのテンションはMAX。

LNoLの武村八重子さんからはInstagramを通じて喜びの声が届けられました。


最後に。

今回は、「音楽」という素敵な分野にデザインで携わることができ、とても嬉しかったです。また、ご近所のクリエイティブ会社と協業することで、より良いものを提供できました。

音楽関連のデザインやパッケージデザイン、ちょっとした謎を残す「ミステリアス・デザイン」など、今後BYTHREEにお仕事を依頼したい方、ぜひお待ちしています!


Client
株式会社LDH JAPAN

Creative Direction
吉田貴紀
Design
喜田周作

[Partner]
Printing
サンクラール


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