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【ブランディング事例】 従来のイメージとは“一線を画す”法律事務所のヴィジュアル・アイデンティティ

01 概要:
法律事務所立ち上げに際したブランディング案件

クライアントは、弁護士の吉田正樹さん。「法律事務所 thorough(サラ)」という新しい事務所の立ち上げに向け、VI(ヴィジュアル・アイデンティティ)デザインをはじめとするブランディングのご相談がありました。

AIやWebを利用した法律サービス(=リーガルテック)の活用が海外では盛んです。例えば、身の回りの困り事をチャットで相談するとAIが法的視点から答えてくれたりするサービスが生まれているなど、法律業界は今大きな変容を遂げようとしています。日本ではまだ生活者にとって「法律」はあまり身近ではありませんが、これからはもっと気軽に使いこなせる時代が来るのかもしれません。

thoroughが目指す姿は、そんなAIやWebを活用したサービスの展開を視野に入れる、「新たな時代の法律事務所」。だからこそ、吉田さんは「これまでの法律業界が持つ、お固いイメージからの脱却を図りたい」という想いを持っていらっしゃいました。

02 提案背景:
提案の機会が限られているからこそ、コンセプトを「絞りすぎない

BYTHREEでは、基本的にどんな案件でもまずはヒアリングからスタートします。クライアントの求めるゴールやブランド・商品に込めた想いなどをお聞かせいただいた上で、デザインの方向性(コンセプト)を構築。その後、クライアントとのディスカッションを経て、細かな調整を行っています。

ただし、今回は事務所立ち上げが目の前まで迫っており、提案後にやり取りを繰り返し、方向性を調整することが難しいという、時間的な制約が存在しました。ヒアリングと提案、チャンスはともに一度のみ!そんな状況だからこそ、今回は「コンセプトを絞リすぎず、幅広い方向性を持って提案する」ことを決めました。

03 アウトプット:
「新しい時代の法律事務所」に相応しいVI

今回のブランディングにおいて最も重要な位置付けとなったのが、事務所の“意思”を表すVIの開発です。既存の法律事務所のイメージ「安心感」や「親しみやすさ」とは一線を画した上で、サラの個性を表現できるものを目指しました
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提案に至ったVIのコンセプトとデザインを、いくつか紹介したいと思います。

(ⅰ) 黄金比をモチーフにしたVI
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このVIは、古くから美しい比率として知られる「黄金比(1:1.618)」をモチーフに制作したもの。デザインにおけるガイドラインである「黄金比」は、社会における「法律」の存在とよく似ています。そこで、「ガイドラインやルールを活用し、新しいものを生み出す」というコンセプトを策定し、このVIを開発しました。

(ⅱ) 二つの円をモチーフにしたVI
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重なった二つの円には、「過去と未来」「従来の弁護士と新しい弁護士」の意味を込めています。法律業界に革新を起こそうというthoroughの姿勢を表現しているVIです。

また、この二つの円は基本形として、さらに多様な展開を想定しています。
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例えば、名刺でのVI展開。基本デザインを元にしながらも、各自別の柄で構成されています。一人ひとりが異なるデザインの名刺を持つことにより、それぞれが代わりのきかない存在であることを表現しています。

(ⅲ) 鳥をモチーフにしたVI
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従来の考え方にとらわれず、自由な発想で挑戦を続ける姿勢を表現するために、鳥をモチーフにしたVIです。この鳥は「thorough」の頭文字である「T」の筆記体を変形させたもの。ロゴマークとしての展開も視野に入れた案です。

(ⅳ) たくましく芯を貫くVI
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ヒアリングの際、特に私たちの印象に残った話があります。それは、新事務所の屋号となる「thorough」について。この言葉は「徹底的な」という意味を持ち、代表の吉田さんの仕事に対する姿勢を表しているそうです。

この時の話題から着想を得て、「芯を貫く法律事務所」というコンセプトを策定し、このVIを開発しました。太めの書体と横一本に通った芯で、thoroughに込められた想いをビジュアル化しています。

(ⅴ) 軽やかに芯を貫くVI
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最後に紹介するのは、今回採用に至ったVIであり、BYTHREEとしてもイチオシとしてご提案させていただいたものです。

特徴的な斜めに貫くストレートラインは、(ⅲ)の案でもコンセプトになった「芯を貫く」「筋を通す」というthoroughの想いを表現しています。加えて、軽やかなタイポグラフィが「新たな時代の法律事務所」としての存在感を伝えています。

クライアントの吉田さんからは「オーダーにあった革新性とともに、新事務所のビジョンを表せているVIだ」と喜びの声をいただき、すぐにご決定をいただくことができました。

ヒアリングの機会は一度だけでしたが、お聞かせいただいた法律業界の現状や新事務所の目指す姿、そして代表の吉田さん自身の「徹底主義」という姿勢などの情報をもとに、多様な切り口のVIを提案することができ、スピーディーな進行を実現できました。

04 展開:
「芯を貫く姿勢」を、さまざまなアプローチで表現

VIの決定後、「芯を貫く姿勢」というコンセプトをもとに、各種ツールへの展開がスタートしました。

(ⅰ) Webサイト
Webサイトでは、ファーストビューにVIのアニメーションを設定。斜めのラインを基調とした動きのあるページをデザインしました。

Webサイトにはステートメントを掲載。こちらも、法律業界に新しい時代を切り拓いていくというthoroughのビジョンをもとに、「MAKE NEW STANDARD.」というステートメントを開発しました。

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(ⅱ) 名刺

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名刺は、単なる連絡先情報だけでなく、thoroughの“意思”を伝えるツールとなることを目指しました。

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VIのストレートラインの延長線上に、斜めの空押しを施しています。これは筋の通った姿勢を表す、“筋の通った”加工。名刺交換の際に、この空押しに気づいた方に意味を説明することで、事務所の姿勢を自然と伝えることができます。

(ⅲ) 封筒類
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書面でのやり取りも多い法律事務所に必要不可欠な封筒類は、誠実な印象が伝わるようシンプルにまとめつつ、VIのストレートラインが印象に残るようデザインしました。

05 レビュー:「自分たちらしいVIに満足」「名刺交換の時間が楽しい」

私たちのヒアリングや提案に対し、高い温度を持って応えてくださったthoroughの皆様のおかげで、これまでの法律事務所のイメージとは一線を画した、新しい世界観を築くことができました。最後にクライアントの声を紹介します。

「ほかの法律事務所とは全く雰囲気の違うVIで大変満足しています。自分たちらしさを、とても明快に表現していただきました。特に気に入っているのが名刺ですね。名刺交換の際には“筋が通っている名刺”の意味を説明するようにしています。相手からは『なるほど』といいリアクションが返ってきますし、印象に残るようです。名刺交換の時間が楽しくなりました」


Client
法律事務所thorough

Creative Director
吉田貴紀
Planning
栗原里菜
Design
長谷川明義

[Partner]
Printing
江戸堀印刷所
Programming
Qript



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