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怪しの話

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You Tubeのの星野しづくさんのチャンネル「不思議の館」と、ツイキャス(You Tube)の「怖い図書館」に投稿した、不思議な話や怖い話をほぼ週1回のペースで掲載しています。
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2022年9月の記事一覧

梅花麗筆(ばいかれいひつ)

これは、とある骨董店の娘さん(仮にレイコさんとしておきます)から聞いた、古い手紙にまつわるちょっと謎めいたお話です。 一口に骨董店と言っても、店主の好みや得意分野があり、扱っている品もそれぞれの店でかなり異なります。 レイコさんの父親は、古い漆器や家具、古民具などの古い木製品を中心に商いをしていました。 彼女は大学生の頃、父親が仕入れてきたそれらの品の、検品や清掃を手伝っていたそうです。 その日は金沢から仕入れて来たという明治時代の手許箪笥(てもとだんす)の点検をしていま

こぼれる砂

これはある飲み会で相席になった女性が話してくれたお話です。 10年ほど前のこと、彼女は大学に通うため、一人暮らしをすることになりました。 経済的に裕福な家庭ではなかったので、なるべく両親に負担をかけないようにと、できるだけ安い物件を探したということです。 あちらこちら探し歩いていると1軒のアパートが見つかりました。 築40年ほどと古いものでしたが、間取りは四畳半と六畳の二間続きの和室、 風呂とトイレは別になっていて、小さな台所も付いています。 この広さのものが、ワンルーム

蝉声白尾(せんせいはくび)

今回は私の小学2年生の夏の、夢ともうつつともつかない記憶のお話です。 小学校低学年のころ、私はヴァイオリンを習っていました。 今から60年近く前の話です。 教室は街の楽器店の2階にあり、レッスンは毎週水曜日の夜でした。 夏休みになると、この水曜日のレッスンのほかに、日曜日にも特別レッスンというものがありました。 秋に開かれる発表会で演奏する曲を練習するのです。 そして、この特別レッスンは、教室ではなく先生の自宅で開かれるため、私は夏休みのあいだは毎週日曜日、母に連れられて

栗の花

これは今から30数年前、私が結婚して間もないころのお話です。 当時、私たちは市内中心部から少し外れた地区にある大型マンションに住んでいました。 妻は市の中心街、駅地下のブティックに勤めていたので、私より帰宅時間が遅く、夜9時近くのバスで帰って来ます。 新婚だったことと、マンション周辺の治安があまり良くなかったため、歩いて5、6分のところにあるバス停でしたが、私は毎晩妻を迎えに行っていました。 5月も下旬になったある夜、いつものように妻の帰宅時間より少し早めにバス停に着いた

柳の家

これは私が結婚していた頃、今から30年くらい前のお話です。 元嫁は、住宅情報誌が愛読書と言っていいほど、不動産や住宅の広告を見るのが好きな人でした。 そんな彼女がとある休日、近くに広さの割に安い物件があるので、いっしょに見に行かないかと誘って来ました。 聞けば歩いて15分ほどの隣町にある一軒家の中古物件とのこと。 5月半ばの時候の良い頃でしたので、散歩がてら行ってみることにしました。 住宅情報誌の〇〇町○丁目というだけの情報と外観写真を頼りに探すこと数十分、ようやくその家