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仕事中の横顔【超短編/日常】通読目安:2分

リモートワークになって、仕事で家から出ることは、ほとんどなくなった。

一人暮らしの俺には、家族の目もない。あるのは猫の目ぐらいだ。

そうなると、髭も剃らなければ、髪も整えない。
会議で顔出しでもしない限り、服も部屋着のまま。

「…!」

偶然だった。

リモート会議を終え、ふと視界に入った自分の顔。

生気がない、疲れ切った顔…
酷い猫背…

朝、髭がどれぐらい伸びたか気になり、机に置くような小さな鏡を出したのだが、置きっぱなしにしていたそれに、偶然写り込んだ自分の顔は、あまりにも酷かった。

酷いと言っては、自分に失礼かもしれない。
でも俺は、生気のないその顔に、大げさかもしれないが、心理的な危機感を覚えた。

リモートワークになって、通勤がなくなり、楽になったはずだが、知らぬ間に、良くないものが蓄積されているのかもしれない…

いつの間にか、右手が首のあたりにあった。
胃が締めつけられるようで、呼吸も苦しい。
頭の中では、朝チラっと見た、自殺者増加のニュースが過ぎり、身体がさらに縮こまる…

ピリリリリッ

スマホが鳴って、飛び上がるほどビクっとして、思わず立ち上がる。
それを見て、近くで丸くなっていた猫が、びっくりして離れた。

「もしもし…」

「あれ?
 悪い、間違えた。
 課長にかけたはずだったんだけどな…(笑」

「…」

イラっとしたが、幸いだったかもしれない。
立ち上がったついでに、自分の身体を見下ろすと、急に腹回りが気になりだした。

「…運動しよう…
 死ぬかもわからん…」

先は長そうだが、一歩ずつ、運動習慣。

みなさんに元気や癒やし、学びやある問題に対して考えるキッカケを提供し、みなさんの毎日が今よりもっと良くなるように、ジャンル問わず、従来の形に囚われず、物語を紡いでいきます。 一緒に、前に進みましょう。