小腹が空いたとき用のパン

大学時代、コンビニエンスストアでアルバイトをしていた。
人生初のアルバイトだった。
コンビニ=楽、というイメージがあるかもしれないが、レジや補充以外にもなにかとやることが多い。在庫との兼ね合いをみながらの発注や掃除、クイックフード調理などがあり、けっこうバタバタして時間が過ぎる。
私は几帳面なタイプなので、教わったことをメモして、家でも読み返して復習していた。

私がバイトを始めたころ、付きっきりで指導してくれた先輩(年齢は同じ)がいた。ちょっと性格も悪い&キツい人だった。
たとえば公共料金や保険の支払いなど、業務内容に含まれていることは知っていても、実際その場面にならないと操作がわからない。ほかの先輩は聞くとすぐ助けてくれて「こういうのは場数だからね、仕方ないよ。少しずつ覚えよう」とサポートしてくれるが、先輩は「なんでできないの!」と客の前で私を叱責し、「お客様、大変申し訳ございません!!!」と大げさに謝罪する。客も、私が間違えたわけでもなく、「確認しますので少しお待ちください」の言葉通り待っていただけだ。
正直、ややこしいし、うざい。

そんな先輩から教わった、奇妙なことがある。
パンを陳列するときの注意事項で「基本的に同じ種類のものは近くに並べて。例えばメロンパンとチョコチップメロンパンなどの甘い系、カレーパンとかの辛い系、コロッケパンや焼きそばパン、卵ロールの100円シリーズとかね。あと、一番上の段は、小腹が空いたとき用のパンね。」

小腹が空いたとき様のパン…
家に帰ってメモを読み返していて、わからなくなった。
どのパンが、小腹が空いたとき用なのか。
そもそも、誰基準の小腹が空いたとき、なのだろう・・・

その先輩と同じバイトの日、パンコーナーをみたら、カレーパンなどの揚げたパンが最上段を占めていた。
私にとってカレーパンは小腹よりガッツリ腹が減ったときに食べるイメージだった。
ほかの先輩と同じ日のパンコーナーを見ると、アンパンが並んでいたり、フレンチトーストやシュガートーストの甘い系があった。

小腹が空いたとき用がますますわからない。

私は100円シリーズで売っていたものを「小腹が空いたとき用のパン」にした。
それは、少し小さいコッペパンにやきそばが入っている系のものだ。ほかにも卵サラダ、コロッケがある。
いまのファミリーマートでいう「コッペパンたまご」みたいなやつだ。

ある日、バイトに行くと店長が事務作業をしていた。
「バイト始めて2週間くらいきたけど、慣れた?困ってることやわからないことない?」と聞かれた。
わからないこと、ある…!!!!
私は店長に聞いた。
「パンの陳列の決まりがまだわからない」と。
店長「陳列のきまり・・・・?なんそれ???」
私「○○さんに、パンの一番上の段には、小腹が空いたとき用のパンを並べるように指導されましたが、それがどのパンかわからず。バイトに来るたびいろんなものが並んでいて・・・」
店長「えーwwwwwwwなんそれwwwwww」

店長は大爆笑し、そのとき出勤していた人全員に「小腹が空いたとき用のパン」を聞いていた。最終的には「誰が○○に小腹が空いたとき用のパンを陳列することを教えたのか」という話になった。

店長は「もう同じパンが近くに並んでて、賞味期限に注意して品出ししてくれたらいいよ!難しく考えないでw」と言われた。そして「あの子(先輩)、あんな感じやからずっといじめられてて友達少ないんよ。悪い子じゃないから、許したって」と。

納得。

今でもコンビニでパンコーナーの一番上の段を見ると「こ、これが…小腹が空いたとき用のパンなのか…!」ってなる。怖い。


ほかの思い出は、私はビビリで「お客様に渡すお箸や商品をいれる袋を切らしたらやばい!!!」と思い、大量に発注してバックヤードを割り箸だらけにして怒られたこと。

コンビニはやっぱり難しい。
でも、機会があればまたコンビニで働きたい。

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