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マーケティングの新時代

フィリップ・コトラー教授について
マーケティング4.0を提唱しているのは、アメリカの経営学者であるフィリップ・コトラー教授です。

コトラー教授は、マーケティングの父とも呼ばれるほど、世界のビジネス界に大きな影響を与えている人物。多くの書籍を世に送り出していますが、「マーケティングマネジメント」の内容は、世界のマーケティングを学ぶテキストにも活用されているほどです。

マーケティングフレームワークとして浸透している「STP」の提唱者としても有名。現代では、多くの企業が社会への貢献度やつながり、問題解決を重視した経営が行なわれるようになっていますが、このソーシャルマーケティングを確立した人としても知られています。マーケティング3.0、そして近年マーケティング4.0を提唱しているのがコトラー教授なのです。


マーケティングとは?

マーケティング4.0についての説明をしていく前に、マーケティングとはどんなものかを確認しておきましょう。

コトラー教授は「市場や顧客のニーズに応えて利益を上げること」と言っています。ビジネスは、顧客であったり、取引先であったり、常に相手があって成り立つもの。

マーケティングは、自社の商品やサービスに興味を持ってもらい商品を購入したり、サービスを利用してもらうための戦略を考え、実践することを指します。しかし、これはあくまでマーケティングの実践事項です。

その前に「何を基にしてどういった戦略が有効なのか」を考えることがマーケティングの重要なポイントとなります。相手を深く知り、市場や環境を分析することが不可欠です。企業の業績や存続にも深い関わりをもつため経営には欠かせない概念といえるでしょう。

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マーケティング3.0、2.0、1.0
マーケティング4.0の「4.0」とは何だろう?と疑問に思う方たちのために、マーケティングの特徴の変遷をご説明します。

この数字は、時代背景や企業が扱う商品やサービスに関わるものです。モノやサービスにはトレンドがありますよね。マーケティングの手法や戦略にもトレンドが存在しているのです。

マーケティング1.0
マーケティング1.0は「製品主義」とも呼ばれ、戦前戦後のモノが少なかった時代から1970年代にかけてのマーケティングのことを指します。今までにない機能や他より優れた性能を発信することで、市場が反応し、購買につながっていた時代です。

具体的には、大量に生産し、積極的に広告宣伝を行ない、消費者の欲しい!買いたい!を引き出すことで利益獲得の効果がありました。

マーケティング2.0
マーケティング2.0は「消費者志向」や「顧客主義」とも呼ばれ、1.0の時代を経て、市場や顧客に選択肢が増えたことが2.0のマーケティング概念に移行した要因です。

いいものというだけでは買ってもらえないため、顧客の感情を満たす選択理由となるものを提供するために、自社の商品やサービスをどうポジショニングしていくかが考えられていました。市場や顧客ターゲットを絞った上で製品やサービスが生み出されるようになったのもこの2.0の段階です。

マーケティング3.0
マーケティング3.0は、2010年ごろからコトラー教授が提唱を始めたもので「価値主導型」のマーケティングが必要だというもの。同じような商品やサービスが飽和状態の時代、購買意欲を引き出すために、顧客の内側にある「社会をより良くするという精神」に訴えかける手法がトレンドとなりました。

企業が利益を生み出すことも、顧客が感情や精神を満足させることも、私たちが生きる地球を良くする価値につながるものが求められるようになったのです。

自己実現とマーケティング4.0
マズローの欲求段階説
上記でご紹介したマーケティングの変遷は、マズローの欲求段階説にもあてはまる部分があるといわれています。
マズローの欲求段階説は、アメリカの心理学者のアブラハム・マズロー氏が人の欲求を5段階で提唱した理論です。

生理的欲求(睡眠欲・食欲・性欲・排泄欲などの本能的な欲求)
安全欲求(安心、安全、快適な暮らしに対する欲求)
社会的欲求(所属したい、仲間が欲しいという欲求)
承認・尊厳(価値ある存在と認められたい、尊敬されたい欲求)
自己実現欲求(ありたい自分になる、あるべき自分でいる)


生きていくための食糧や水、安心して眠れる場所が確保できたら、より快適に過ごせるようなモノやサービスを活用したいと思うでしょう。そしてある程度、生活物資が整ってくると、それを共有したり認識してくれる仲間を求めるようになるといいます。

周りに囲まれる中で、価値ある存在として認められることを欲し、それが満たされることで、さらに成長したありたい自分を描けるようになり自己を追求していくようになるというものです。

モノではなく自己実現を求める購買
世の中にものが溢れた現代、欲しいものは比較的簡単に手に入るようになりました。この時代に人々が求めるものは、明らかにモノが不足していた時代とは異なっているのです。マーケティング3.0の段階からこの傾向が見いだされ、マーケティングに「社会貢献」「社会奉仕」という視点が取り入れられるようになりました。

そして、現代のマーケティング4.0には、デジタル技術の発展による人々の生活や価値観の変化を加味したマーケティングが必要になっています。その上で、マズローの欲求段階説になぞらえるなら、人々は何を自己実現と考えているかを探ることが現代マーケティングのキーポイントとなるでしょう。

マーケティング4.0のカスタマージャーニー「5a」
カスタマージャーニー「5a」
コトラー教授は、マーケティング4.0の時代の顧客購買プロセス(カスタマージャーニー)のフレームワークを見出しています。

インターネットが普及してからの顧客の購買プロセスを見るフレームワークには「AIDMA(Attention、Interest、Desire、Memory、Action)」「AISAS(Attention、Interest、Search、Action、Share)」が活用されていました。
コトラー教授が提唱する新しいカスタマージャーニー「5a」の枠組みは以下のようになっています。

・AWARE(認識する、知る)
・APPEARL(記憶や印象に残る)
・ASK(調べる)
・ACT(購入する)
・ADVOCATE(周りに勧める)

そのものを知ってから人に聞いてみたり、インターネット上の口コミや評判を閲覧したりして、納得感を得て購入やサービス活用を決めることが増えていますよね。現代のマーケティングでも重要視しなければならない点なのです。

認識する手段や経路も、購入方法も急ピッチで多様化が進んでいます。そしてデジタル上での「ADVOCATE」が顧客のACTIONに結びつく影響力が拡大しているのが現代の特徴のひとつです。

売り込む時代の終焉!マーケティング4.0の視点
デジタル時代のマーケティング
インターネットの浸透によって、アナログを超えてデジタルを活用したマーケティングは3.0の時代から予測されていたことです。

さらに、IoTやAIの普及も伴い、4.0の時代ではデジタル要素を無視したマーケティングは、もはや不可能に近いものとなっています。

Facebookや Twitter、YouTube、Instegramなどを介した情報拡散は拡大の一途。企業と消費者のもつ情報差が無くなってきているのです。企業がどれだけ自社の商品やサービス情報を発信したところで、顧客に必要とされない時代とも言い換えられます。ファンを増やすために、何を発信し、記憶や印象度を高めるかが現代マーケティングの大きなファーストステップなのです。

Wow!な体験を提供する
マーケティング4.0の時代のマーケティングは、ファンの獲得が重要視されます。ファンの獲得のために何が必要かというと、購買につながるかそうでないかに関係なく、人々が驚いたり、感動できたりすることを提供することです。手段はサービス内容、コンテンツ、社員の行動などいろいろ考えられるでしょう。

その驚きや感動がカスタマージャーニーでいう「APPEARL(記憶や印象に残る)」となり、結果的に購入や利用の足がかりとなるのです。人々にWow!な体験を提供することは、共感スパイラルを広げていく効果をもちます。結果的にマーケティングとして成功している企業がすでに増え続けているのです。

まとめ

IoT、AI、ビッグデータの広まる時代、SNS、アプリ、コンテンツ、オム二チャネル、ブランディング、そして顧客との関係性など今に即したキーワードの傾向を深く知ることができるでしょう。世界のデジタル技術がビジネスに取り込まれ、どんどん進化していく中、日本は追いつけていないという声も多く聞かれます。追いついて、取り込み、理解するためにも、マーケティング4.0の概念は役に立つでしょう。そうでなければ、今の世の中で競争力を強化したり、世界とともに繁栄していくことは難しいことなのかもしれません。

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