企画のき 05_「道具」という手段 「策」という手段
今回も、「要求×手段=価値」をベースにして、それを構成する要素を丁寧に分解していくという作業を続けます。
今回は「手段」について考えを深めていきたいと思います。
まずは「手段」について、これまでのおさらいをしておきましょう。
『企画のき 02_要求×手段=価値』では、
(手段とは)課題を解決するために講じる策のことです。何らかの道具を使うことを言うのかもしれませんし、やり方を変えるだけで済むかもしれません。道具を使う場合は、その道具が、今、世の中に存在するものばかりではないでしょうから、課題を解決するために新たに開発することを言うのかも知れません。いずれにしても、要求を満たすために何ができるか?どんなものが必要か?という問いに対する答えになるものが手段であると言えます。
と述べました。
若干補足しながら、改めて言い換えてみるとこうなります。
要求を満たし、価値を提供・享受し、目的を果たすために講じる手立てのことを「手段」と言い、そのために何らかの道具が必要になる場合もあれば、やり方を変えるだけで済む場合もある。前者は、そのまま「道具を必要とする手段」と言えるし、後者は、「策を講じるだけで済む手段」と言える。
少し具体的に考えてみます。
要求と手段の関係の例としてよく引き合いに出されるものとして、
「ドリルが欲しいのではない。穴が欲しいのだ。」
というのがあります。
これは、今から約50年も前に出版された、セオドア・レビット博士の著書「マーケティング発想法」の冒頭に書かれているものだそうです。
この場合、「穴を開けたい」という要求に対し、ドリルという道具を利用することでその要求を満たそうとするという図式になります。これが「道具を必要とする手段」ということになります。ドリルは単なる手段に過ぎません。逆に言うと、穴を開けることができれば、別にドリルでなくても構わないということになります。
さらに考えを進めてみます。
もし、この「穴を開けたい」という要求の背景が「お店の看板を吊るすために紐を通す必要がある」だった場合はどうでしょう。つまり、真の要求が「お店の看板を吊るしたい」だった場合、もっと言うと「お店の看板を高く掲げたい」だった場合、さらに言うと「周囲へのお店の認知度を高めたい」だった場合はどうでしょう。
そうなると、もう、穴にこだわる必要は全くありません。他の道具のことを考える必要もありません。現実的か否かはおいといて、ベタなことを言えば、お店の前で一日中お店の名前を叫びながら宣伝をするということでも良いかもしれませんし、ドリルだ、穴だ、看板だ、と言った物理的なモノからは完全に離れた世界、例えばネット上で、「お店のWEBサイトを開設する。」といったことでも目的を果たすことができるのかもしれません。
つまり、直接的に「道具在りき」で手段を考えるのではなく、やり方を変えるだけで、つまり、策を講じるだけで要求を満たすことができるという手段もあるということです。
ここまで、「道具を必要とする手段」と「策を講じるだけで済む手段」に分けてお話ししましたが、両者に共通して言える重要なことが二つあります。
一つは「手段は決して一つではない」ということ。要求を満たすことができるありとあらゆる選択肢を洗い出すということが手段を考えるうえで重要になります。
そして、もう一つは「手段を目的化してはいけない。」ということ。上記の「道具を必要とする手段」の例で言うと、あくまでもドリルは手段であり、目的は穴を開けることです。ドリルを入手することが目的ではありません。
どのようなものを「手段」と定義するのか、そして、「手段」にはどのような考え方があるのか、さらに、いかにして広く、深く、「手段」の選択肢を洗い出せると良いのか、そのようなことを考えることが、企画をするうえで重要なことであると思います。
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