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リトミック教室をたった一週間で完全オンライン化するまで。

オンライン化にむけてのアナログな紙とハサミを使ったノウハウ、教えます

こんにちは。ベビー、幼児と元気なママたちの集う「むらさきmusicラボ」のまり先生です。

=目標が達成されましたので、本記事を無料記事としました。=

現在、むらさきmusicラボは、完全オンライン化をして、登園や登校できないこどもたちの緊急のオンラインがっこうのような形で毎日のやる事と、人とのつながりの場を提供しています。

緊急事態宣言までのこと

「パチパチこんにちは!手を打ってまわりましょう!」

手と手をあわせたり、プレイバルーンを膨らませたり、ピアノをマンツーマンで教えたりというこどもたちとの日常が、新型コロナウィルスの影響で息苦しくなってきた2020年のはじまり。

だんだんと社会的距離を考えたり、呼吸があがる激しい運動を避けたり、おもちゃの共有を憚ったり…。小さい工夫を重ねて、2,3家族ごとの少人数ならなんとかリトミックは続けていこうとしたけれど…3月末に、4/12までの間、閉館とする決断をしました。

と、いうのも、私は音楽教室(以下ラボ)を設立する2016年までは、私立幼稚園の園長を長年勤めていたので、これまでの経験から、こどもたちに万が一のことがあってはいけないと早めに決断できたのだと思います。

そこから、1週間でオンライン化におけるプレ体制ともいえる最初のステップとして、独自の「あんしん体制」というシステムを4/4(土)に立ち上げました。この時点では、「当面の間は、オンラインと通所のどちらでも良い体制とします」という今から考えるととても甘い見通しのものでした。この時点では、まだ緊急事態宣言が出ていなかったというのもあります。

そして、そこからが急展開。

オンラインテストレッスン

=4/5(日)はじめてのLINE リトミックプライベートレッスン(無料テスト)=

いつもは対面でレッスンしている私が、スマホの向こうにいるので、こどもたちは、それぞれ自分が描いた恐竜の絵を私に見せようと直立で静止しているばかりで、耳からの情報がとても頭に入っていない様子でした。

その最初のレッスンで、私は実にいろんなことを学びます。

『これは、いつものレッスンをそのままオンラインにするのではなく、根本から違うコンテンツを持ってこないとマズいぞ!』

すでに「あんしん体制」として、「オンラインレッスン」はお金がとれるコンテンツと私が確認できるまでは、「無料とします」とお伝えしてあったので、私も時間を気にせずに、いろんなテストを試みることができました。オンラインでできること、オンラインではできないこと。具体的に手で触ったり、オンラインでの音のタイムラグの誤差を踏まえて、あらかじめ予習の映像を送っておくなどの対処が頭に浮かびます。

無料のテスト期間をいったいどの程度持つのか?

ネットで見渡した情報だと、最初からオンラインの料金を提示しているミュージシャンの方もいれば、1ヶ月ほどのお試し期間を設けている教室もありました。私は、2009年からYouTubeでウェブレッスンを運営してきた経験があったので、2回無料でzoomレッスンをやってみて、3回目から有料参加するかどうかは任意。そして、4月分は、通常の月謝はとらずに月末に参加した分だけを基本として、個々の経済的ダメージも加味してのヒアリングをした上で、自由評価額(投げ銭制)という提案をしてみました。


=4月6日(月)はじめての『ウーバーまり先生」=

日曜日にプライベートレッスンのテストをしてくれた少し遠方からの生徒ご家族とは別に、ラボには、近隣から自転車や徒歩で通ってきてくれている複数対応のクラス、ピアノやパーカッション、リトミック指導法などのそれぞれの目的の生徒さんがいます。その中で複数対応のクラス3つのうち希望する8家族が、4/7,9の二日間のオンライン無料体験に参加してくれることとなりました。

そして、前日のこの日。私は、そのオンラインレッスンには、触って確かめられて、画面の向こうのまり先生(私)と同じものを持っているシチュエーションが最初の一歩には必要!と思い、教材と図書貸し出しを宅配することにしたのです。この図書活動については、あとに詳述したいと思っています。

こどもたちの反応は、

「えっ?本当にまり先生が家まで来てくれるの?」

というものでした。ちゃんと信じてもらうために、

「ウーバーまり先生」というキャッチーなネーミングをつけてみました。

「ウーバー」とは、飲食宅配や、タクシーの便利な配車システムのように、英語のスラングで「超!」みたいなニュアンスがあるそうです。

いつもラボで普段着でまったりしているまり先生が、青い自転車に乗って「お楽しみ」をお届けできたらきっと喜ぶだろうな、と思ったのです。こどもたちは、もう学校も園もいつ再開できるかわからない暗い見通しの中でした。

自力で配送をする8家庭の他、遠方には、宅配便を利用。その他、コース設定によっては、ラボに直接とりにきていただく方などバリエーションがその後広がっていきます。

ソーシャルディスタンスをとっての宅配は、こどもたちの家庭のみならず、近隣の方にもお声がけをいただきました。そんななか、幼稚園や学校は、おやすみだけで放ったらかしで何をやっているのか?という思いも感じ取れます。

みんな誰にかに心配してもらいたい。気にかけてもらいたい。こんな時だからの気持ちのつながりどころを求めているように感じました。

zoomアプリ インストールのお手伝い

4/7(火曜)はじめてのzoomでのオンラインレッスン(無料テスト)の日は、夜には緊急事態宣言が出るという日でした。今から思えば、こどもたちとご家庭にとって、小さな音楽教室の取り組みですが、学校や園からのフォローない休園状態の中、ラボが「明日からはじまるよ!みんなで会える時間をつくろう!」という呼びかけがあることは、小さいけれど大きいことだったのだと思います。タブレットに慣れていないママには、丁寧に、アプリのダウンロード、サインアップ 、サインインという語句を説明しました。これから、学校もオンライン化していくかもしれませんが、すべての家庭にPCがあるわけではなく、またPCがあってもウェブカメラのない古い機種の可能性もあります。スマホでも対応できるアプリというのは、大変ありがたいことだと思います。IDとパスワードの管理は厳重に行っております。

はじめてのオンラインはお道具箱の確認のイメージで

幼稚園勤務時代の新年度の4月をイメージします。新入園児たちはもちろん落ち着いてなんかいないのですが、この「お道具箱の確認」の作業の時間だけは、泣いていた子もピタッと泣き止み、部屋からふらふら出て行った子も様子を察して戻ってくるこどもにとっては、こんなにマストとはっきり感じられる作業はない!ということを私は長年の経験で知っていました。なので、最初は教材の「お買い物ごっこセット」「お仕度ごっこセット」の2種が、さながら道具箱の中のアイテムが全部入っているかを確認するかのように、それをオンライン上で全員一緒に行いました。

集中力、抜群でした!

この過程を通らずに、いきなりいつものと同じリトミックをしたのでは、こどもたちにとってもそりゃあ生音ピアノを身体全身に浴びて飛んで跳ねる方が楽しいので、すぐにどこかにいってしまう予測がありました。

オンラインは正直難しいです。テレビのお料理番組のように、番組内で使用する道具の全てを手の届くところに置いて準備をしなければなりません。リアルならば、「ちょっと待っててね」や、ママたちなど他の大人の手を借りることができても、感染防止のためにオンラインをしているわけですから、基本、ひとりでお届けする自作自演です。準備と計画。そして、教材を届ける日は、自転車で自分で届ける「ウーバーまり先生」は、前日ですが、遠方の子たちには、日曜日発送で、前日到着とするために、さらに計画性が必要です。

オンラインの準備は大変ですが、逆にいえば、本番の双方向での番組づくりは、その計画した通りに進めれば良いので、そんなラクな部分もあります。リアルならば、ちょっと機嫌の悪い子や泣いてしまった子のフォローで手を止めなければいけない場合も、オンラインなら、指導中はマイクのオンオフをその都度、カードで指示をしているので、何かトラブルがあっても、それは家庭内でおさめていただけるので、進行には問題がありません。予定どおりの時間配分で、予定通りにだいたい終わるのがオンラインの授業なので、咄嗟の場合の教育的なことばがけをする場面はありますが、教育スキルよりは「快活に弁ずる」ようなプレゼン力が求められるでしょう。カリキュラムや内容を教育の専門家がたて、パフォーマーは、エンターテイナーが担当するというのもアリだと感じています、

オンライン授業最初は、お道具確認のように、画面のむこうと自分が同じものを持っているという「マッチング」の作業は有効です。この活動で、画面の前の先生や友達と何かやるんだ!という動機づけに成功すれば、だんだんと「リアルに近い」活動ができると思いました。教育のプロなら、このような「ステップをつくる」ことは、いつもの作業だと思います。

私はリトミックや楽器の不思議について講座を進めることが本筋なので、最初はオンラインで「時間をみんなで共有する」「双方向ができる」という気づきを優先し、だんだんと本筋に近づける作戦と、後述する自分が感染、ダウン、隔離という状態になった場合も、こどもたちの学びを止めない保険へのシステム構築をすすめることにしました。

最初から、完璧なオンライン授業をしよう!と思わなくても良いのです。回を重ねて、報酬をいただいて良いクオリティとなったら、課金のお願いをしようという計画でした。

オンラインレッスンのテーマは多様性が醍醐味

ラボのオンラインレッスンのテーマは、週ごとでひとくくりです。

(月)ウーバーまり先生 教材配送と図書貸し出し

(火)zoom配信 終了後 参加者にフィードバックメール

(水)オフ 教材製作 Googleクラスルーム更新

(木)zoom配信 終了後 参加者にフィードバックメール

(金)YouTube撮影 教材製作 Googleクラスルーム更新

(土)YouTube配信 配送準備

(日)教材発送

今のところ、まだ教材のストックがないので、休みはその日のノルマが終わったら休む、または買い出しに出かけるという形です。やるべき仕事がすべて自粛で潰れてしまった方もいるのです。オンラインはまだ相応の報酬は得られませんが、それでも自分にやることがあり、こどもたちやご家庭に毎日のやることと曜日の感覚などの生活リズムを提供させていただけることは幸せです。

4月の参加した分だけの課金と、5月以降にビジター参加される方の課金方法は、1回ごとのzoom参加ではなく、週ごとのひとつのテーマに対しての課金とすることにしました。各種割引はありますが、基本は¥2500です。教材が豪華な時には、大変お得となっています。

ちなみに、2週目のテーマは、「カセットテープケース」マラカス 、3週目は「トライアングル」でした。それぞれ、付属のビーズやフレーク、前の週に課題で出したものに色付けしたカードなど、宝箱のようにいろんなものが教材箱には入っています。

私は、これまで自分がやってきたカリキュラムは、オンライン化することにあたり、全部捨てました。全てをオンラインでできることから考えて、どうせなら、オンラインだからできることを、リトミックや音楽の垣根を越えて、「今、家でやったら家族みんなが楽しいこと」をモットーに考えているつもりです。

もし、このnoteを読んでいる人が学校の授業でオンライン化を考えていらっしゃるのであれば、例えば、音楽系の高校(私は、音大付属高校出身なので、自分の経験から想像しやすいので)ならば、普段の合唱や演奏法などの授業であれば、その何割かはもう思い切って、「世界の民族音楽」など、YouTubeやPCに保存した音源をzoomで再生しながら鑑賞しつつ、それで意見交換をするなどのぶっとんだ授業をしてくださったならば、きっと生徒さんたちは一生の思い出に残ると思います。

私は、今、期間限定でオンラインレッスンをやむを得ず行っています。

最初から、オンラインの方がメリットがある外国の先生のレッスンではないので、状況が良くなれば、少人数から徐々に、また複数対応で、化学反応のミラクルがあるリトミックに帰りたいと思っています。

それならば、今は、生徒と一緒に思い出をつくろう!と思っています。ラボの室内だったら、絶対にうるさくてできない「トライアングル 」全力演奏で、トルコ軍楽の『ジェッディン・デデン Ceddin Deden』をアンサンブルで楽しみました。ラボではできないことも、オンラインならできるんだ!そう思うと、そんなコンテンツのアイディアは、次々を浮かんできます。

人はしてくれたことも覚えているけれど、何もしてくれなかったことはより印象深い。

これは、自戒をこめて。自分に言い聞かせている自分で思っていることです。私の身の回りでは、より期待をかけて、私のことを残念に思っている人もいます。だから、なおさらのこと、私ができることがあれば、できる順番は私の心のうちということでお許しいただき、進めていきたいと思っています。世間は、その順番に対して、「こっちが先!」ということもあるでしょう。今は、私は自分の判断で、私のラボを信じて私を待っていてくれるこどもたちを最優先にさせていただいています。

311震災時は、私は幼稚園園長でした。ここでの思い出は、とても繊細なので、こちらには記せませんが、園庭の放射線量の測定など、いち早く動いたという実績はその後の私の自信にもつながりました。

園長であると同時に、音楽家として被災者へのチャリティにも参加し、保養施設でリトミックと楽器づくりのワークショップもさせていただきました。そして、そこでも、様々な「音楽家」たちの考え、スタンス、そして、それらをビジネス展開することへの可否などを間近で感じとります。この経験が、私のその後のSNSなどとの距離と、今回のコロナ禍での情報発信の方法、対象を絞るという選択に結びつきます。

素晴らしい音楽の指導者の皆さんに、普段でしたら私が情報提供できるのは、オンライン化だけのスキルだけで充分と思われるかもしれません。

しかしながら、オンライン化というのは、ただネット授業をすれば良いのではないと思います。

どこをどう補うのか?

例えば、触れる教材(画面や他の皆と同じもの)、紙にプリントしたテキスト(スマホでzoomを見ている人には、複数のウィンドウを開く術がありません)、宿題、課題のマネージメントのためのサイト(私はGoogleクラスルームで項目ごとに振り分けています)、セッション終了後の個別メールでのフィードバック。そして、個別配送で、短い時間ですが直接顔を合わせることも週1回、続けています。

それらをどうゆう道筋で、システム構築したのか?それは、私が元幼稚園園長のリトミックの先生である他、いろんな形で「音楽」と関わっていたことで、様々なアイディアが湧き出たからだと思っています。

長年の幼稚園園長としてのこどもの発達における気づきやシステム構築。こどもの年齢発達、何歳ではこれくらいのことを「めあて」にしたい、そして、そのためには、このような環境設定が望ましい。人員配置は?ということを長年やってきたので、コロナ禍では、それ相応の対応を普通にしただけという意識があります。

手作り楽器づくり主に打楽器、手作り楽器を創作するワークショップを園長時代から外部のオファーをうけたり、自分が関わるこどもたちと続けてきました。現在は、「オリジナル楽器実験室」というネーミングで、ラボを外に移動させてというコンセプトで展開しています。コロナ禍においては、こどもたちにとっての「ラボ」はそれぞれの自宅です。そんなコンセプトであれば、アイディアは無限に湧いてくる予感があります。

そして、もうひとつの顔である「無声映画楽士」としてスキルも、授業をオンライン化するということにおいては、大変ためになりました。コンテンツをつくる上では、普段は、無声映画の映像、二次元の目からの情報を耳からの情報に置き換えるイメージで、即興演奏のフレーズを考え、唇の動きや、活動写真弁士の方の「カツベン!」にシンクロさせた浪曲の曲師の三味線の間合いのような音を出す仕事をさせていただいています。これについては、検索していただければ、「映画と。」などの専門サイトや、無声映画専門の会社「マツダ映画社」のホームページで興味のある方はお読みいただければと思っています。無声映画とちょうど逆のことを「オンライン」ではやれば良いと気付きました。普段自分が三次元でやっていること二次元化すれば良いです。

2020年5/3追記

本記事を書いたのは、2020年4月の最終週がはじまろうという時期。某学校よりのノウハウ提供のお話があって、noteの有料記事を読んでいただくという形で協力をするというシステムをつくろうと思ったことがきっかけでした。その後、様々が教育、保育機関からお問い合わせがあり、ラボでのzoomの聴講の枠は、いっぱいになってしまいました。これ以上は、希望の方がいてもお受けできないので、この記事も「入り口」としての役目を終えたので、無料の普通の記事にしました。読み返してみると、アツいですね!

元幼稚園園長、今は、オンライン幼稚園がっこうのような立場で動いてはいますが、立場としては、生徒さんのお月謝でなりたっている小さな事業者です。自粛をしていまえば、収入は途絶えますし、現にそのほかの人前で演奏すること、講座を開くこと、保育園での出張リトミックでの仕事は保留のままです。

オンライン化は、いわば、収入確保のための苦肉の策の一面もあるかと思います。

でも、結果として、オンラインでもやらないよりは、ずっとよかったと思っていますし、お月謝をとりながら、何もしなかった学校や園に、「どうなっているの!」という気持ちもあります。

何もしていないのではなく、上の許可がないと動けない体制もあるかと思います。でも、こどもたち、親たちは、放っておかれることが一番辛いのです。なので、これを書いた時の私の気持ちは、「なんでも良いから学校よ、園よ、動いてくれ!」という気持ちだったのだと思います。

本当に、ラボは、一週間で、オンライン化してしまいました。このnoteを書いてからも、いろんな企画を試し、少しずつブラッシュアップしてきています。

5/3の現時点での未来予想図としては、幼児教育においては、もう園に所属しない無学籍の幼児が増えてくるということです。園長時代には、発達支援の機関と、園とで、学籍の重複をさけるために、調整をはかった上で連携もしてきました。

コロナの後の世界は、幼児教育でも全く違う風が吹いてくることでしょう。

オンライン授業のおかげで、私は毎日、充実して過ごさせていただいています。これを読んでいる方で、オンラインどうしようかな?という先生方がいらっしゃったら、どうぞ、ドン!と扉を開いてみてください。待っているこどもたちがいます。感染しないような配慮をしつつビクビクのリアル授業よりも、今は、すっぱりオンラインで、できることをやった方が良いのではないでしょうか?(個人の感想、意見です。)

むらさきmusicラボでは、7月末までは、オンライン。そして、8月よりグラデーションでのリアルレッスンへの対応のリハビリを計画中です。

リハビリ。

これ、絶対に必要です。こどもたち、数ヶ月でオンラインに最適化してしまうでしょう。ここからリアルに戻すまでが、「オンライン化計画」だと思っています。見届けてください。がんばります!



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