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陽キャ、陰キャ、そして無キャ

世の中には3種類の人間が存在する。

皆から憧られる人気者で、クラスや集団の中心になって他人を動かすことのできる陽キャ。
クラスや集団の中では目立たず、見た目は地味だが、趣味や自分をしっかり持っていて、周りを気にせずに人生を楽しむことができる陰キャ。

そしてどちらにも属さないのが無キャ。
他人がどう思うか、自分がどう見られているかばかりを気にして、行動に一貫性が無く、言動が矛盾し、とりあえずその場の雰囲気で笑って誤魔化すコミュ障。短期的に付き合えば、世渡り上手に見える。

一体どのようにして人類が3つに分かれてしまうのかを見てみよう。


陽キャの奏多は代々その土地に住む先祖の息子として生まれた。親戚が多いので、お年玉はたくさんもらえるし、地元での親のネットワークが広いので、親戚や古くからの知り合いからのサポートはもちろん、小さい頃からたくさんの人と関わり、地元のスポーツ団体(サッカー)などに属し、社交性を向上する機会を常に与えられた。綺麗なお母さんがいるので、彼もその遺伝子を受け継ぎ、爽やかイケメンになる。学校のスポーツイベントでは大活躍で、小さいころから女子にモテモテだ。


陰キャの花子は、地元に親戚が多いが、親が強烈なとある宗教の信者で、小さいころから週末はその宗教のイベントや勉強会に連れて行かれ、親が忙しすぎて団体スポーツや習い事などはしていない。陰キャだが、まれに足が速いタイプもいる。花子は、吹奏楽部に属し、学校でのヒエラルキーは低く、友達は多くないが、宗教のイベントでいろいろな人と関わりながら、宗教に没頭する母親を身近で見ながら、いろいろ考えて行動することはできた。花子は素材は悪くないのに、おしゃれや見た目に全く気を遣わず、化粧で絶対に可愛くなるタイプだ。

無キャの太郎は、小さいころから家庭での会話が全く無い仮面夫婦の両親の元、安心感ゼロの環境で育った。両親どちらも友達などおらず、自宅と職場を行き来するだけの毎日。地域に太郎の両親の過去を知る者は誰もいない。どちらの親戚も遠く離れた地方の田舎に住んでおり、交通費や時間が無駄だからと、行事やお盆などでも訪れることは無い。父親は一度も転職せず、またかつ出世もせずに昔から同じ中小企業で、毎日往復3時間かけて市営住宅から通勤している。母親はかつてITが導入される前に潰れた会社の課長まで上り詰めたバリキャリだったことを今でも誇らしく自慢していて、その過去の栄光が原因でスーパーのパートではトラブルメーカーの痛いおばさんになっている。ちなみに50代なのに化粧が濃い。生まれも何も共通点が無い太郎の父親と母親は結婚相談所で知り合い、自分たちの老後の介護要員を産むことに一致団結して結婚して太郎を産んだのだ。どちらも何も努力せず、結果を出さずに生きてきたので、自分たちの老後の安心のために節約だけは命を懸けている。習い事や、宗教やお金がかかるので、もちろんやらせない。ゲームも漫画も買わない。お小遣いは無し。インターネットもいらない、テレビで十分。塾もいらない。太郎が唯一時間をつぶせる場所は図書館だけだった。母親は太郎を使って、いかにお金をかけずに彼女の人生を挽回することに必死。太郎の行動、プライベートの時間の時間を全て支配して、小さいころから他人と関わる機会を与えなかった。太郎は小さいころからこの現実を逃れるために、日々妄想するしかなかった。外見でも良ければ救われていたが、そうでもなかった。

この三人が普段交わって関わることは絶対に無い。何も共通することがないのだ。

奏多は小さいころから、両親そろってお金と時間をかけて団体のスポーツに参加させたり、小さい成功体験を積みさせながら、何かに挑戦して人間的に成長させる機会をたくさん与えてきた。

花子の親は宗教に熱心だったが、常識のある放任主義だったので、花子は自分で考えて行動する癖が小さいころから身についた。また、たまたま足が速かったり、顔の素材が良かったりで、自分を大切にすることができるくらいの自信はできた。

太郎は一人だけの世界で母親の操り人形として小さいころは、家庭だけに居場所があるが、母親が希望する大学や会社に入れなかった途端に、捨てられる、ということをわかって人間不信になり、他人と関わることを自分から避ける行動ばかりしてしまうようになった。

この3分類をみて不安になったと思う人がいるかもしれないが、安心してくれ。クラスや組織のなかで、この無キャが存在する確率は2%。INTJー内向型 (Introverted)、直観型 (Intuitive)、思考型 (Thinking)、判断型 (Judging)と呼ばれる超合理主義、孤独を愛する遺伝子を持つ人間は結婚できるパートナーを見つけられることがまず奇跡だ。なので、太郎のような環境で育つ子供は減っていくだろう。


#2000字のドラマ

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