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『一匹のモンタージュ』リクリエーション|メンバーインタビュー(黒木麻衣・坂藤加菜)

2023年10月13日(金)に開幕を迎え、23日(月)までの期間こまばアゴラ劇場にて上演する『一匹のモンタージュ』リクリエーション。
クリエーションメンバーへのインタビュー記事を連載していきます。
2022年5月に初演された『一匹のモンタージュ』からどのような変化が訪れているのかそれぞれが「作」としてどのように『一匹のモンタージュ』をつくっているのか。その片鱗をインタビューを通して紐解きます。


今野:まず、自己紹介からお願いします。

坂藤:坂藤です、出たりしてます。

黒木:黒木です、絵を描いてます。

今野:じゃあ『一匹のモンタージュ』っていう作品について。去年もやっていて、今回リクリエーションっていうことなので、「リクリエーション」ということをメインにちょっと話してみてください。坂藤さんから。

坂藤:はい。SCOOLでやったのが去年で、1年半ぐらいたってるんですけど、出演者が少しだけ変わっていて、世の中の状況とかも変わっていて、うん、それで出てる人との関係性も変わっていたりして。その中でもう1回、1年半前にやった『一匹のモンタージュ』を再インストールしてやるっていう時に見える景色とか、この人こういう顔するっけみたいのが見えてきて面白いなって思ってます。今はもう本番が始まってるので。4回目が終わったところなんですけど。今、アゴラにいるんですけど、SCOOLの時ともう見える景色とか目に入る光が全然違くて。結構全部強いなって思いながらやってるんですけど。横が広くなってお客さんが横にいっぱいいる感じになって、照明も劇場の照明になってるので、めちゃくちゃ眩しいし暑いみたいなことを感じてます。

今野:めっちゃ普通だよね。多分劇場でやってる人みんなそうなんだろうね。

坂藤:こんな眩しいのかって思ったり、天井高くて気持ちいいな、色々吊り下げられるなとか、目に入るものの数とかがめっちゃ増えてて。うん、今のところそういうものを感じながら楽しくやってます。

今野:そうだね、本番始まってるから本番のこと聞けるね。黒木さんはどうですか。

黒木:前作の『ちちち』を今年の5月にSCOOLでやって、それを経て『一匹のモンタージュ』のリクリエーションに臨んだ時に、人数が少ない状態で挑んだ『ちちち』だったんですけど、『一匹のモンタージュ』は、だいたい10人から11人のメンバーでやっていて。そこが、やっぱり人が増えるっていうことで、作るときの距離感とかが前と違うっていう状態で作ることが、いい意味で広いし、いろんな人のいろんな感覚とかを感じれる。わかるし、わかんなかったりしてるっていうことがあって。それが積み重なってて小屋入りしてまた本番が始まって、日々日々更新されていくっていうのを今体感しているところです。

今野:実際、本番やってみてどうですかね。劇場でお客さんが入って。

黒木:初日はすごい緊張してて、で、みんな緊張してる気がして。それが伝染するのがわかって。それぞれすごい面白いなって思ったし、 人だから毎日コンディションが違うし。みんながみんないい状態でもないし、いい時も悪い時も人それぞれだから。1回1回見る回で全然違う状態、やってることは一緒なんですけど…なんか少し違う、毎回違うっていう感覚を持ってやっています。

今野:うん。坂藤さんは。

坂藤:私は意外と今回緊張してないかもと思ってて。今、なんでかなって考えてたんですけど…

今野:そっか、『ちちち』は緊張してた?

坂藤:『ちちち』はしてたね。なんでだろう、『一匹』は積み重ねたものがあるからなのかな。それか劇場のこの環境が、さっきも言ったけど照明の強さとか、劇場っていう空間だっていうことでマインドが違うのか、わかんないんですけど、

今野:あー、他の箱でやる時とちょっと違うって感覚?

坂藤:うん。なんでだろうな、あんま緊張してないです。でも小屋入りが3日間あったからかな。場所に慣れたのかな。

今野:それは影響してるかもね。

坂藤:いろんな要因はあると思うけど、うわあ、みたいな緊張は今回はそこまでないかも。普通に楽しく出てきて楽しくやって終わってる。失敗したりもするけど。

今野:確かにね。あんまり緊張してないんだよな、いつものほうが緊張してる。大丈夫かなとか、 わかんないなって思ってることが多い気がする。準備の期間があるっていうのはありがたいですよ。

坂藤:三日間ここで準備して、この空間が作られる状況とかも見て、それでお客さんが来て始まるっていうのは、いつもほどの不安はないですよね。

今野:なるほど。じゃあ次、リクリエーションって今回ついてます。再演、みたいなことって、あんまりバストリオはしないでやってきてるけど、そのことについて。始まる前に思ってたこともあったと思うけど、今やってみてのこの再演の感触はどうでしょう。

坂藤:『一匹』は、元々リクリエーションを前提として始まったっていうのもあったんだけど、でもバストリオにおける再演みたいなことが、正直、自分はあんまりイメージが湧かないっていうのはあって…。できんのかな、自分も楽しめるかな、みたいのがあって、どうなるかなと思って稽古始まったんですけど。この稽古始めたての頃はリクリエーションとか特に関係なく、いつもどおり新しい発表をどんどん作ってくっていうふうに始まって。で、発表を作る段階がいったん終わって、その1本の作品を立ち上げようっていう時に、そっか『一匹のモンタージュ』これだったか、みたいなのがもう1回入ってきて。あれ、ここに新しく作った発表入れられるかなみたいなのを考えた。

今野:うんうん。やってみての感じとしては?

坂藤:えーと、前の『一匹のモンタージュ』がほぼ削られることなく今いるじゃないですか。再演になったらどこ外されるのかなとか、自分のなかで考えたりしてたからそれは予想外だった。だって外さないと新しい発表入れられないじゃんって思ってた。だから今、ああこうなったかっていうのはありますよね。

今野:そっかそっか。そうなんだよね、それは俺も思った。わかんなかった、どうなるか。予想もつかなくて進めてて。途中まで新作にしちゃえばいいじゃんって思っちゃう瞬間が何度もあって。でも、その時に、最初にやった初演とのギャップが激しすぎて。前のやつを捨てるのか、置いてくのかって思った時に、再演、リクリエーションってなんだろう、みたいなことが今の形になったんだろうなとは思う。

黒木:確かSCOOLの初演では7回やったんだっけ。それの8回目をアゴラでやるっていう意識でいった方が、これはいいんじゃないかっていうのを話したんだよね、みんなで。それがあったから、どうしようみたいな感じじゃなく、落ち着いてやろうって感じになれたっていうか。その言葉は結構覚えてる。

今野:うんうん。

黒木:いつもさ、7回ぐらい?公演数が10回を超えたことがないじゃないですか。もうちょっとこの時間が続けばいいのにって思ってたから、やりたかったことだった。その先をどう見れるのかっていう。

今野:今回は見れるね、みんなズタボロになってるかもしれないけど。笑

黒木:ちょっとね、わかんない。物量とかがすごい多いからかなり負担なんだけど。やってる行為のその発展みたいなことがそれぞれに起こる気がするし。人にもよると思うけど、それは。うん、なんかそれを予想してる。

今野:はい、ありがとうございます。じゃあ次、スカンクさんと佐藤さんについて聞いてみようかなと。前回も現場にはいたんですけど、今回2人はほんとに出るのかなと思いながらも多分参加してくれてて。今一緒に本番までたどり着いて、スカンクさんと佐藤さんが『一匹』に与えたものとか、自分が思ったこととかありますか。

黒木:いっぱい、いろんな影響を与えてる2人だと思っていて。スカンクさんは、全体を見て拡張していってくれてる。

坂藤:うん、そもそも質感が違うよね。背高いし年上だし…

今野:50過ぎてるからね。

黒木:私たちが持ち得ない感覚とか、視野とかを感じるし、話してて普通に面白い。あと、この全体の中で見えてない部分も見えてそうって思う。

今野:自分でもそこに居ようとしてるしね。

黒木:それを上演時間の中じゃなくても、外でも働きかけてくれるじゃない。散歩とかさ、わかりやすく言うと。全部をこう、トータルで見てくれている感じ。佐藤さんは、初演時に私が作ったzineを稽古場にずっと持ってきてくれていたの見ていて、ページに載せてたある部分が、今回のリクリエーションの中の「佐藤さんと橋本さんの蝉の発表」にリンクする節があるな、とか個人的に感じるところがあって...雰囲気で作っていないので信頼できます。

今野:うん。坂藤さんは?

坂藤:そうですね、一緒に発表作るみたいなことが起きてきて、新しく入ってきたスカンクさんとか佐藤さんと。2人ともおもしろいです。スカンクさんはすごいチャレンジ精神があるなっていうのと、本人がめちゃくちゃおもしろいていうか、興味深いことを話してくれるから、もうそれ絶対発表中に言いましょうよ、みたいなことがスカンクさんから出てくるから楽しいっていうのと、先輩なのに、めちゃくちゃ体を張ろうとしてくれる感じとか、

今野:すごいよね。

坂藤:めっちゃありがたい。私のこと運んでもらえますかって言ったら、やるよ!みたいな。やってくれるのが素晴らしいなって思います。
佐藤さんは、一緒にいて楽しい。見てても楽しいから、発表作ってて佐藤さんにやってほしいこととか言ってほしいことが、私からも提案できるなっていう存在です。

今野:初演の『一匹』の稽古でさ、長机かなんかを使って佐藤さんと坂藤がやってた発表、あれとか佐藤さんが本番にいたら残ったろうなみたいな発表だったんだよね。未だに考えてたし、あの発表のこと。そうだ、その印象が俺の中にすごい残っててそれで佐藤さんが坂藤の横に行った気がするんだよね。

坂藤:冒頭のシーンですよね。あれはすごい嬉しいなと思った。2人になってにぎりめし食べれるんだ、みたいな。

今野:なんか、2だけど、1と1みたいな感じがちゃんと出てて、すごい良いんだよ。坂藤と佐藤さんのあの発表めっちゃ印象残ってて。あれ見たときには佐藤さんが本番には出れないの知ってて、うわーってなったんだよね。これ『一匹』だけどな、みたいな発表だったんだよね。

坂藤:そうだよね。稽古だけに参加するってなると、そういうことが起きますよね。

今野:うん。あとはスカンクさんと坂藤のアーチの発表もね。「スカンクさん、行かないんですか」っていう一言でスカンクさんが現れた感じしたし。
じゃあ次。せっかくなんで、2人しか言えないこともあるかなと思うんで、DJについて。 今回美術で参加している岩村朋佳さん。知床で知り合っていて、今回、葦の芸術原野祭の流れで参加してくれました。美術作ってくれたけど、彼女のことはどう思ってる?

黒木:すごい心強かった。

今野:うれしいよね、居ると。

黒木:うれしい。ちゃんと見ててくれる人がいるっていう感じはすごいして。すぐ気づいてくれたり、提案してくれたり、自分から動いてくれたり、うん、すごかった。そもそもタスクが多いんだけど、その中でもさらにはみ出て自分のことちゃんとやってて。今、劇場の上の空間から下がっている美術があるんですけど、これは彼女の作品で。そういう展示としても機能しているから、空間は見てもらいたいですね。

今野:そうだね、ロビーも含めてね。

坂藤:たしかに、見上げてもらいたい。

今野:けっこう気にしてる人いるんだよね、照明の緒方さんもDJの美術用の明かり作ってくれたりして。坂藤さんはどう?

坂藤:DJのことはめっちゃ好きで…なんだろう、やっぱり動けるというか、気がつけて動けていれる人で。作ってくれるものはもちろんいいんですけど現場にいてくれるだけで助けられるというか。DJがいてよかったなって思う瞬間がいっぱいあって。なんか、みんなが動いてて、自分が重いものとか持って困ってる時にすぐ来てくれるのがDJで。

黒木:うん、そういうのほんと多かったなあ。

今野:2人はとくに関わってるしね。

坂藤:なんともなくできてて、それはDJ本人の素質としてすごいなって。めっちゃ考えていながらも現場でサクっと動けるっていうのはやっぱ尊敬しますね。

今野:はやいよね。滞らない。意味とか変に考えなくて。手動かしながらやってくれるから良かったですよね。

坂藤:忙しいなかなのにいろいろやってくれた。

今野:そうだね。じゃあ最後、見に来てくれる人へ。

黒木意味とかは考えずに、とにかく、 面白い現象を見に来てください!

坂藤:最近、過ごしやすい天気になってきて、本番中にもドアが開いたりするし、空気が良いときに見るのがいい作品だと思うので来てほしい。小屋入りした次の日ぐらいに金木犀の匂いがし始めて、こりゃいい時期にできると思って私は嬉しかったので。ぜひ今、見に来てください。

今野:はい。ありがとうございます。

(編集:坂藤加菜)
(写真:コムラマイ)

黒木麻衣(くろき まい)
1992年鹿児島生まれ。主にグラフィックを主体とし制作する。 「バストリオ」ではアートワーク全般を担当。
https://kurokimai-d.tumblr.com

坂藤加菜(さかとう かな)
1993年東京生まれ。2019年よりバストリオのメンバーとなり作品に参加。
身体を用いた作品の発表、音楽家の演奏に交ざる踊り子、映像作品への振付・出演、バンド・山二つ、ユニット・inter/viewなど。
https://sakatoukana.tumblr.com


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