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『一匹のモンタージュ』リクリエーション|メンバーインタビュー(橋本和加子)

2023年10月13日(金)に開幕を迎え、23日(月)までの期間こまばアゴラ劇場にて上演する『一匹のモンタージュ』リクリエーション。
クリエーションメンバーへのインタビュー記事を連載していきます。
2022年5月に初演された『一匹のモンタージュ』からどのような変化が訪れているのかそれぞれが「作」としてどのように『一匹のモンタージュ』をつくっているのか。その片鱗をインタビューを通して紐解きます。


中條:今、開幕して、今日で4ステ終わってどんな感じですか。

橋本:こんなに、すごい照明がいっぱいあって…、照明すごいなって思ってます。最初、劇場下見で何もない状態で見させてもらった時、めっちゃ広いなって思って。ほかの舞台とか見に来たときに、奥行きがある形で使ってる舞台を見てる時は、アゴラってもっと狭いイメージがあって。でも、今のこの使い方はすごい広いなって感じて安心してる。壁も真っ黒っていうのが、ちゃんと映像が映ったりすんのかなとかいうのが心配ではあったけど、それも美術でね、ちゃんと映るようになったりしたし。楽しんでますよ。

中條:劇場でやるの結構久々ですもんね。

橋本:うんうん。劇場はもうほんまに久しぶりやと思うよ。バストリオは『TONTO』っていう作品やった以来。2017年とかに早稲田のどらま館で。自分は他の舞台とかでも劇場でやるってなくて。

中條:劇場でやるとここが違うなとか、でもここは変わんないなとか、ありますか。

橋本:やってる方としては、劇場の方が集中できるよねっていうのはある。やっぱ、普段はもう、ほんまに自然光が入ってきたりとかするし、情報量がめちゃくちゃ多いからさ。夜のあの感触が、昼間にやった時と全然違くなっててみたいなことが…なんやろ、毎回違うみたいなことが劇場じゃない場所でやってると、もう、それは太陽があるかないかやけどさ、すごく大きくて。劇場は常に同じコンディション。まあ、ドア開けたりするから、そういう時は昼間は明るくなったりするけど。すごく些細やなって思うから、そういう変化って。やってる上では、集中はできるなって思いますよ。劇場でやるのは私は楽しいですけどね。

中條:感想にも、劇場でもバストリオだったみたいなこと書いてあったんですけど。今橋本さんが言ってたのって、パフォーマーとしての流れというか、コンディション的なことだと思うんですけど。いわゆる発表がそのまま劇場に来るという、内容に関しては変わらずって感じですか。劇場とか、特に問わず?

橋本:うーん…。そうやな、そこは、やっぱ難しいなとは感じるところはあるかな。なんやろ、めっちゃ劇的になるからさ、劇的っていうか。さっきうちはすごい集中できるとか言ったけど、でもそうじゃないことっていうのは、いっぱい稽古場で起きてて…。なんか、なんて言ったらいいのかな…。 発表でやったことっていうのが、難しくなるなっていうのは、見てて思うかな。

中條:いや、でも、なんとなくわかります。

橋本:ノイズがやっぱ少ないからさ…。それは、今、わからんなと思って。今日まで本番が立て続いてるから。休憩なく来ててとか、そういうこともあるかなとは思うけど、ちょっとそれはわからないなと思ってて。なんかその壁は、でも、ちょっと超えたいなとは思うな。壁を超えるっていうか、意識的になりたいよね。もう、どうやったっていい感じになるやん、照明で照らされてさ…。そこには抗いたいなとは思うよね。

中條:試せる回数ありますしね。

橋本:ほんまにね。うち、ロングラン公演なんてめちゃくちゃ久しぶりというか、多分ほんまに演劇やり始めて以来ぐらい。いや、楽しいけどね。やっぱ本番が1番楽しいからさ。

中條:週末だけだとあっという間に終わっちゃうけど、まだいっぱい考えれるなっていう感じはありますよね。

橋本:それはそうやんな。今回の座組の人たちみんな、考えようっていう人たちやから、それはすごいいいよね。やってて気持ちいいっていうか。

中條:『一匹のモンタージュ』って作品、初演のことも今のリクリエーションのこともあると思うんですけど。橋本さんはメンバーとして(バストリオ作品を)最初からずっとほとんどやってきていて、橋本さんから見た『一匹』ってどんな作品なのかなって。

橋本:『一匹』は、みんなバラバラやなって思う。それは、いい意味でバラバラやなって。それぞれがそれぞれに思ってることをいろんな方向に持ってるなって思ってて。そういう人たちが集まって作った作品。だから、その分すごい大変やなって思うこともあるけど、でも、『一匹のモンタージュ』をするってことは、そういう人たちと作るっていうことをするってことやって思ってる。

中條:今までの作品でも、参加者それぞれが作るっていう感じがあるから多少バラバラな感じに外から見たら見えると思うんです。みんなが意思を持ってやってるように見えると思うんですけど、よりバラバラに見えるって感じ?

橋本:やと思う。例えば健太くんとか自分で演出してたり、 本藤さんもバンドでリーダーやってたり。それぞれのやりたいことがはっきりあって、妥協しない、正直な人が多いなって思ってる。なんか、ごまかさない人たちが多いなと。作品のこととかじゃなく人の話はすごいしちゃってるね。

中條:うん、まあ人とやるってことですからね。

橋本:やっぱ『一匹』やるのはすごい緊張するというか、この人たちともう1回集まるんやなって腹をくくる感じはあったよ、始める時に。

中條:なるほど。リクリエーションっていう形で、いわゆるレパートリーみたいな持ち運びできるものじゃないものを、もう1回やるぞみたいなのがほぼ始めてじゃないですか。やってみてどんな感じですか。

橋本:えー、うちはあんまり変わらんかな。一緒かな。でも、初演の残像みたいな、感覚みたいなものは微かに残ってて。例えばシャケのシーンとか、SCOOLでやったあの本番の感覚がすごい強く残ってて。そういうのがあるのは、めっちゃ不思議やなと思う。1年前の記憶なんやけど。初演の方がシャケのシーンとかは印象が強い。

中條:それは、やってる最中にはどういう風に作用してるんですか。ノイズな感じなんですか。ちょっと抵抗が生まれるものですか?その初演の残像があるって。

橋本:あー、全然そんな、別に、やってる時はやってる時で、そこの残像みたいなのがどうとかじゃないねんけど。なんか、SCOOLの初演の感覚が、シャケのシーンに関してだけは残ってんなと思ってる。ほかのシーンはもう結構淡くなってんねんけど。映像も残ってるから。やっぱそれを見てて、1年経ってまたするってなった時にね。普段ってさ、そんな映像見てとかやらないからさ。そういうことがあんのはすごいなと思うけど。でも、初演と、初めて作る作品とで、なんかこうリクリエーションでっていうので、そんなに「すごく違う」みたいなことはあんまりないかもしれない…。

今野:橋本は、なんとかなってきてるのを見てて、経験として体にあるからな。

橋本:ま、そうなんよね、そうそう、そうなんよな。なんというか、別にうちが考えても仕方ないなって思うことは、もう考えないようにしてて。残酷やけど。

今野:うん。ま、なんとかしてきてるからね。なってきたからね。それはもう、なんか結構あるよね。「なんとかなんない」ってことは起こらないっていうのは、もうわかってんだよ。なぜか、その根拠のない自信だけは絶対にあんだよ。それは、なんかやってきたからなんだよ。
本当に大変なこといっぱいあったけど、やれちゃったから、全部やれるんだっていうのがあるから。どこに落とし込めるか、自分で考えていかなきゃ。

橋本:だから、なんかうち、あんま意味とか考えへんからさ。これをすることの根拠?意味?何の理由があってこれをするみたいな、例えば、ウィルキンソンの箱をひっくり返すってなった時に、「わかった」って言ってひっくり返すけど、別にそこでなんの意味があんねやろって自分はあんま思わんなって。なんかこう、後でついてくるなと思ってて…。初めはやっぱ何するにしてもよくわからんからさ、基本的に頭で考えてることみたいなのは、うちはほぼ信用してないからさ。立ち上がったもので、しかもそこを触っていく中で見つけることの方が、うちはめちゃめちゃわかるって思うから。

見にきてくれる人には、もうね!これはもうあれですよ、めっちゃ面白い作品やからね。皆さん絶対見に来た方がいいです。ほんまかって思うかもしんないですけど。めっちゃおもろいって言ったけど、別におもんない人もいると思う。全然おもんないって思う人ももちろんいるし、なんやったんやろうって思ったり、普通やったなって思う人もおるかもしらんけど…。
あんまりない舞台をやってるなとは思っているので。演劇、最近見に行っておもんないなって思ってる人とかいたら、見に来たら、もしかしたらおもろいかもしれないなって思ってます。
アゴラ劇場で待ってますんで!

今野:あと、ちょっと、知床とこの作品の関係について、今どう考えてるか聞きたいです。

橋本:うんうん。去年の5月にSCOOLでやった時の直前に船の事故っていうのがあって。うちは、なんだろう、まさかそのタイミングで、なんか自分が行ったそのタイミングで、そういうことが起きるとは思ってなかった。もちろん、みんな多分そうやねんけど。最初その一報みたいなのが入った時に、なんか…、そのことの重大さみたいなのは自分は全然ピンと来てなくって、ぼやっとしてたよね。喜一くんって子が、メーリスでその事故があったっていう連絡が届いたときに、すごい喜一くんは心配してて。でも、自分にとってはそのことの重大さみたいなのがやっぱあんまりわからなくて。その、知床岬の環境のこととか水温のこととかがほんまに全然ピンと来てなかったからやってんけど。その後に、行く先々でその事故の影響みたいなものが至るところであって。セブンイレブンに行ったらNHKの報道車がいて、その人たちと一緒にウトロ方向にずっと走っていくとか。

今野:うん、実際に斜里の施設に遺体が運ばれていくの見て、ブルーシートがひいてるの見て。

橋本:そうね、海洋センターの前とか。だからその時に見た景色をすごい覚えてて。喜一くんの家に行くまでの道中の小学校にヘリが降りてて、で、救急車が止まっててとかっていう景色がすごい残ってて。その後に入った海の水の水温っていうのが、やっぱ、なんかもうほんまに結構、残ってて、すごい痛くて。その痛さみたいなのを、痛いって感じた時に、この水に浸かったんやな、みたいな感覚とかがすごい来て…。

今野:うん、今実際その発表が作品のなかに入ってて、リクリエーションで時間経ってやってみた感じはどう?

橋本自分の中で感覚としてそれが古くなったみたいなことは全然なくって。やっぱ、自分にとって、あの最後に歩いているっていうのと、「目つぶれるやろ」って言って、中盤のシーンで「知らない誰かが乗ってた船が沈んだりする」とか「戦争で人が殺されてお墓がいっぱい立つ」とか「急に揺れて街がなくなったりする」とか、そういうことは、でも、ずっと起きてて。その感覚が止まることはなくて…、なんていうのかな、 止まってないからさ。

今野:わかるっすよ、見てて。この人まだちゃんと持ってるみたいな、続けてるな、みたいなシーンではあるから。うん、喜一くん来ますね。

橋本:あと、やっぱさ、顔が黒くなるとか。ああいうのって、知床のね、喜一くんたちのアジトの壁がね炭の壁使ってて、作業してる時に顔が黒くなったっていうこと。それを喜一くんたちが知床で作ってた発表の中でも見せてくれて。なんか、黒い顔、おもしろいみたいなさ。あの黒い顔を見た時にそのことを思い出したりする。ジャガイモもね、今年はさゆりさんのジャガイモ使わせてもらったり。
今野:まあ、実はいっぱい詰め込まれてはいるよね。それこそDJ(岩村朋佳)もね。

橋本:うん、この美術を作ってくれた。この流木もね、本藤さんの机にも使われてるけど。流木すごい近かったもんね知床居たとき。

今野:はい、じゃあお客さんにひとことお願いします。

橋本:おもしろい人もいるし、そうでない人もいると思う。それはもう当たり前の話ですけど。あの、 私は、これ多分見に来たらおもしろいって思うなって思ってて。だから 興味ある人いたら、1回、ちょっと試しに見に来てもらって。どうやったかっていうのを体験してもらえたら、嬉しいなって思ってます。多分、これはもう見ないとよくわかんないって思うんですよね。ぜひ、 10月23日までアゴラ劇場にて上演していますので。たくさんの方に足をお運びいただけることをお祈りしております。よろしくお願いします。


『一匹のモンタージュ』リクリエーションでは、ドネーションを実施しています。いただいたご支援は、公演の資金として活用させていただきます。
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