大漁蟻

無念の死を遂げた母。
双子の男の乳飲み子二名。

シャボン玉に覆われた甲板からトム少佐を見送ったのは冥王星が発見されるより遥かむかし。

出港時は潔白であった艦尾で、不帰の客と呼ばれる客達をもてなす。
チップを弾ませ星屑ミルクを購入する。
乳頭からは不協和音。

"この子たちは成長した暁、一体どんな男になるのであろうか。"

時折下界へ降りて、おとなりのウィンチェスター号の箱入り娘、座敷童子と共闘し下界人との接触を図ったが、無惨にも彼らに蒸化させられてしまったこの子達の兄ごとく夭折しないで欲しいと切に願う母。

"このお二方に、あの父上の幻影を見ることがあるのであろうか。
それは同時に、私の魂の完全なる物故を意味するのでございます。"

"フフフ…。
また大漁の蟻を無下にしてしまいました。
私にとってそれは、不帰の客方がまた昔のようにたくさんいらして下さって、艦尾で乱痴気騒ぎを起こしチップを弾ませて下さる、それだけのことに過ぎないのですが。
私の宇宙…。
それは誠に甘美で、艶やかなものなのでございます。"

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