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ケーススタディから学ぶNFTの取り扱い⑤

こんにちは。事業計画研究所です。

本日も「NFTの教科書」天羽健介/増田雅史(朝日新聞出版)の所感をレポートしていきます。

前回は、「アートNFTに関するケーススタディ④」というテーマについて話してきました。

今回も、「アートNFTに関するケーススタディ」ということで、第5弾になります。

ケーススタディについて取り上げるのは今回が最後になります。

ケース5. アーティストへの利益還元の現実性

まずは、状況説明です。

  1. アーティストAは、自らの著作物であるアート作品をNFTプラットフォームXでNFT化し、購入者Bに販売

  2. Xは、NFTの譲渡が行われる都度、その譲渡対価の一部をアーティストAに自動的に還元する仕組みを実装している

  3. Bが、Xでない別のプラットフォームYで当該NFTを譲渡した場合には、還元が行われないのか?

図にしてみると、こんな感じになります。


アートNFTがアーティストからも注目される理由のひとつに、NFTがいろんなところに二次流通を繰り返すたびに、その譲渡対価の一部を、確実にアーティストに対して還元できるように設計できるという点があります。

このような仕組みを法制化するものとして、EU各国において導入されている著作権の一部としての「追求権」制度があります。

日本には同様の仕組みはありません

しかし、NFTの分野でこれを実現する利益還元の仕組みは、NFTに定義されているのではなく、各プラットフォームに依存しています。

そして、一般に、当該仕組みをもつプラットフォームであっても、その仕組みは当該プラットフォームで用いられる取引にのみを管理しています。

したがって、利益還元の対象となる取引は、自らのプラットフォーム上で行われたものに限定されてしまうということになります。

この場合、特定のプラットフォームにおいて、利益還元の仕組みが実現しているとしても、前回の記事で挙げたような当該プラットフォームの事業継続リスクが問題になってしまいます。

また、他のプラットフォームや相対取引の場合には、利益還元を実現できないことが考えられます。

まとめ

いかがでしたか?

二次流通に対して、アーティストへの還元が含まれるというのは、ファン心理としては全然OK、というところもありますが、結局同じものが買えるのであれば安く手に入るものを手に取ってしまうようにも思います。

また、利益還元の仕組みがプラットフォームに依存することで、NFTの流通性を阻害してしまっても、これはこれで本末転倒とも言えます。

同じ規格のNFTを扱いながら、利益還元の仕組みをプラットフォームの垣根を越えて実現させることができれば、NFTの可能性と謳われている還元システムを作ることができると思います。

次回からは、NFTの法的な分類について話していきます。

次回作をお待ちください!


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