DX推進の行く手をはばむ?!社内にいる「謎の専門家」の対処法
DXに取り組んでいると様々な壁にぶつかります。
社内の理解が得られない、旗振り役になれる人がいない、システムを導入しても使いこなせない・・・
企業の多くが失敗もしくは成果が出ず中途半端な状態で終わっています。
今回は、社内から反発を受けた際の進め方のコツを事例とともにご紹介します。
事例紹介
大学生向け不動産賃貸事業部のAさん。
毎年受験前後に内見と手続きが殺到することから、どうにかして業務改善を図るべく、システム導入を検討していました。
ところがAさんの行く手をはばんだのは、なんと同じ事業部の「謎の専門家」Hさん。Hさんは不動産業界歴が長く、宅建資格も持っているいわば「不動産のプロフェッショナル」です。AさんとしてはHさんの意見は尊重しつつも、なんとか業務改善を図りたいという想いがありました。
今回はAさんが所属する不動産賃貸事業部のケーススタディから、社内にいる「謎の専門家」を説得したプロセスを紹介します。
課題
Aさんの所属していた不動産賃貸事業部では、次の課題がありました。
大学生向け賃貸のため、2月から4月は繁忙期かつ人手不足
同業他社が大学周辺に多数あり、差別化が図れない
紙の契約書による顧客管理が煩雑
契約を来店時に行うため、地方からやってきた学生が不便
Aさんの事業部ではDX化が進んでおらず、顧客管理も契約もすべて紙ベースでした。
「これではわれわれ、学生ともに不便すぎる…!」
Aさんは事業部トップに掛け合い、DX化できるシステム導入を決めました。
システム導入によって改善が見込める点
Aさんが導入を決めた賃貸管理システムでは、以下のことができるようになります。
<物件情報管理>
物件情報・部屋情報の登録・管理
修繕管理・修繕費用管理
<Web掲載・申し込み>
物件のWeb掲載
内見予約のWeb申し込み
<契約関係>
契約書の作成
契約者管理
契約更新管理
<顧客情報管理>
部屋ごとの契約者・契約期間・毎月の家賃など
<解約>
退去時の精算・原状回復工事の管理
賃貸管理システムの導入で、物件の管理だけでなく、契約者の情報管理や契約手続きが行えるようになります。
また、インターネット上に物件情報や写真を掲載し、内見・契約もワンストップで行えるため、利用する学生・賃貸事業部双方の労力を下げられるというメリットがありました。
「謎の専門家」による反対
ところが、賃貸管理システムの導入は「謎の専門家」Hさんから反対を受けます。
ここからは、Aさんがどのように「謎の専門家」Hさんを説得していったのかを見ていきましょう。
■業界歴が長い「謎の専門家」から見た賃貸管理システム
「謎の専門家」Hさんの反対理由は以下でした。
しかし、Hさんの真意は他にもありました。
「新しいシステムの導入が不安…」
「やり方を変えるのが不安…」
実は「謎の専門家」Hさんが引っかかっていたのは従来の方法を変える不安と恐怖にあったのです。
■社内にいる「謎の専門家」を味方につける
Hさんのような「謎の専門家」には次のような特徴があります。
基本的に「謎の専門家」は悪い人ではありません。
ただ、視点が「会社全体」ではなく「個人(自分自身)」に向きがちなので、辛抱強く「会社のためになること、お客様のためになることが結果的にいい仕事につながる」というメッセージを伝えていく必要があります。
■「謎の専門家」を納得させ、巻き込むアクションプラン
賃貸管理システムは、不動産賃貸事業部全体の効率化を図るために、すでに経営側から提案されたプランでした。
しかし現場でキャリアの長い「謎の専門家」に反対されては、会社全体の効率化は図れません。
そこで、不動産事業部Aさんは、次の3つのアクションをとり「謎の専門家」Hさんを納得させることに成功しました。
Aさんが「謎の専門家」Hさんを説得するために気を付けていたことは、次の6点です。
Aさんは、新規の賃貸管理システム反対派の「謎の専門家」Hさんを排除しようとしたり、やめさせるようなアクションはとりませんでした。常に会社全体の利益と目標を伝えたことと、賃貸管理システムの成果を数値化して伝えることで、客観的に新システムの価値を伝え続けたのです。
Hさんのネックとなっていた「新規システムが使えなかったらどうしよう」
という不安も、先に別スタッフを通じて取り除くことで、「謎の専門家」でも受け入れやすい雰囲気を作ったことも成功の一因と言えるでしょう。
ビジネスヒント💡
ーーー新規システム導入を反対されたら、成果を数字で見せ、会社の目標を共有し、伝え続けること
新規システム導入では、最初は苦労はつきものです。
また、古くからの慣習や今までのやり方にこだわる社員からの反対の声も聞かれます。
しかし、新規システム導入に反対されても、反対派を排除するのではなく、説得することが大切です。説得の際は、会社全体の利益を軸を曲げずに伝え続けること、成果を数値化してわかりやすくイメージさせること、仲間からの良い口コミや成功体験を積み重ねることが大切です。
社内にいる「謎の専門家」は、視点が個人向けになっているだけなので、同じ理念を共有できれば、今後もよい社員、よい同僚となるでしょう。
新規システムを導入する際は、参考にしてみてください。