見出し画像

【昭和的家族】おまけのマグネット

私の手元に、幾つかの昔のウーロン茶(と思う)のおまけのマグネットが残っている。パンダが付いているもので、それぞれ少しずつデザインが異なっている。

これは、昔父がくれたものだ。多分何かの切っ掛けにひとつ父からもらった時、「ありがとう。可愛いね!」と私が言ったからなのか、父はシャカリキに自分では普段飲まないウーロン茶の500㎖のペットボトルを買い込み、当時のこのおまけのマグネットの全種類を集めたようだ。しかも、たまに家に来る客人や兄弟のお嫁さんに取られないようにと(取らないと思うのだけど…)、父だけが分かる引き出しの隠し場所に保管して置いていたそうだ。

今見てもマグネットは確かに可愛いものだけど、私は決して父に集めてと頼んだ覚えは全く無い。(私は特にパンダ・グッズを集めた事も今迄無い)それでも父はその集めた全種類のパンダのマグネットを私に渡してくれ、更にその可愛いマグネットのひとつを見ながら独り言のように、”どうしてこんなに可愛いんだろう!”とひっそりとつぶやいていた。私はその時、40歳は超えていて、この父のつぶやきに相当引いた。

マグネットは極端な例ではあるけれど普段から同じように、父は私が時々一時的に自分の中で流行って購入したものをいつまでも長い期間積極的に購入して実家に保管しておいてくれていた。例で言うと、あるメーカーの豆乳パック、ある種類のプロティンバー、サンチェ(だったか…焼肉を撒いて食べる葉野菜)等々。それに反し、得てして私の流行は大変一時的な事が多く、”あれ?何故これを父は沢山買って置いておいてくれるのだろう?”と疑問に思う事も多々あった。私の現在進行系のブームと父が保管してくれるものとの間には、しばしば大きな時差があった。

それでも、あるものを私が好むと分かった後、買い物に行く度にそのものを何時までも沢山買って置いておいてくれるその気持ちを思うと、なかなか「お父さんこれもう買いだめしてもらわなくて良いんだよ」とは言い難く、何時しか私は実家に戻ると冷蔵庫の野菜室にいつ買ったのか分からないほど水分が少な目でシワシワになっているサンチェが残っていないかを確認し、数個あるプラスチックの薄い入れ物からその乾燥気味の野菜を取り出すと、野菜炒めなどに混ぜて料理して有難く片付けるのが習慣となっていた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?