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『朔と新』(著者:いとうみく)は栄光学園中、浦和明の星女子中、ラ・サール中、淑徳与野中、カリタス女子中で出題されました!中学受験国語の入試問題の内容・あらすじを紹介します!

■『朔と新』(著者:いとうみく)について

この本は、中学では期待の陸上選手だった弟新(あき)が失明した兄朔(さく)の伴走者として、2人でブラインドマラソンを始め、兄弟や親子の葛藤、それぞれの生き方を模索していく物語です。

失明してしまった原因が自分にあると思っている弟朔は自分が一番大切にしていた陸上を辞めることで、全てを失った兄に対して償いたいと考え、兄はそんな朔にまた走ってもらいたい気持ちや、割り切れない気持ちなどを抱えています。その葛藤は、小学生には難しいところも多いかもしれません。

ですが、とても読みやすい文章で、さわやかに描かれているので、ある程度読書できる生徒さんであれば、楽しく読むことができるでしょう。

大人が読んでも、家族の難しさなど色々な部分で共感でき、とても奥深い作品です。読んで良かったと思える本です。

この本は、入試関係なく、本当にいい作品だと思いました。学生さんから大人までたくさんの人に読んでもらいたいです。

詳しいあらすじを最後に書いています。読書感想文などを書く際に参考にしてみてください。(ネタバレになりますので、読みたくない方はご覧にならないでください。)

中学受験では、2021年度栄光学園中、2021年度浦和明の星女子中学校、2021年度ラ・サール中、2021年度淑徳与野中、2021年度第1回カリタス女子中の国語の入試問題で出題されました。

◆2021年度栄光学園中学校の国語の入試問題

大問2番で「第2章1」の部分全て出題されました。
がガールフレンドのに付き添ってもらい、ブラインドマラソンのコーチ境野さんに新宿まで会いに行き、弟を伴走者としてブラインドマラソンを始めたいと話をする場面です。会話が多く、量は多いですが読みやすいところです。

大問1番は説明的文章で、大問3番が漢字でした。

大問2番の設問形式は、語句の意味の記号選択が2題で1問、自由記述の問題が3問、5択の記号選択が1問、抜き出しが1問で全部で6問でした。

◆2021年度浦和明の星女子中学校の国語の入試問題

大問2番でかなり広範囲にわたって出題されました。

「最初に黒字でブラインドマラソンを始めるに至った経緯が説明され、その後にの口論があり、新が母に頬を打たれる場面、中略あり、マラソン大会当日の場面に。母が朝お汁粉を作り、会場へ2人で向かう。開会式が終わり、いよいよこれから走るという時に、が自分の本当の気持ちを吐露する。新はなんで今、と言いながら新もまた走りたい思いを伝える。」という、この小説の中で最も大事な最終シーンでした。そこに至るまでの過程は説明があるだけで、このシーンを理解させて解かせるという問題で、文章量も多い上に、難問だったのではないでしょうか。

大問1番は説明的文章で、大問2番まででした。

大問2番の設問形式は、漢字の読みが1問、4択の記号選択問題(語句の挿入や気持ちを問うなど)が7問、5択から正解全て選ぶ記号選択問題が1問、そして、最後の問10は3問あり、本文の内容に合う四字熟語を2つ考える問題が1問、抜き出しが1問、20字の記述問題が1問でした。

◆2021年度ラ・サール中学校の国語の入試問題

大問1番は説明的文章で、大問2番は漢字の書き取りと語句で、大問3番で出題されました。

出題された場面は、2021年度淑徳与野中と全く同じ場面です。最初に説明があり、コーチの境野から大会に出てみないかというメールをもらい、で話し合う場面です。ここで、朔が事故のバスに乗っていた女の子が点字で書いてくれた画用紙を新に見せ、自分の気持ちを話します。このシーンは、この物語のクライマックスです。

この大問3番の設問形式は、語句の意味が1問、15字の記述が2題で1問、5択の記号選択問題が1問、130字、80字、90字の記述問題が各々1問、全部で6問でした。

◆2021年度淑徳与野中学校の国語の入試問題

大問1番で出題され、大問2番は説明的文章、大問3番は漢字の書き取り、大問4番は短い話し合いの文章を読んで自分の考えを書く問題でした。

大問1番で出題された場面は、2021年度ラ・サール中と全く同じです。字数指定は違いますが、同じ問題も出題されていました

この大問1番の設問形式は、語句の意味が1問、4択の記号選択問題が5問、自由記述問題が2問で、全部で8問出題されました。

◆2021年度第1回カリタス女子中の国語の入試問題

大問1番は説明的文章、大問2番で出題され、大問2番まででした。

大問2番の最初に6行にわたってそれまでの説明がされ、その後、[Ⅰ]コーチの境野さんと新の会話の場面、[Ⅱ][Ⅰ]の少し後の朔と新の会話の場面と2つの場面が出題されました。バスでがクレヨンを拾ってあげた女の子が盲学校にまで絵を描いて持ってきてくれたことを話す感動のシーンです。

この大問2番の設問形式は、漢字が1問、語句の挿入が1問、30字40字70字の記述問題がそれぞれ1問、5択から2つ選ぶ記号選択問題が1問、5択の記号選択問題が3問で、問8まで(問5が2問)出題されました。

■『朔と新』のあらすじ(ネタバレ)

滝本新が高校に入学したとき、3才上の兄が1年ぶりに盲学校から戻ってきた。

一昨年の大晦日、朔と新で父親の故郷に向かう高速バスで事故が起きた。新は軽傷だったが、朔は意識不明の状態で病院に運ばれ、失明となった。

前日30日にと一緒に帰らず大晦日に朔と新で帰ることになったのは、新が30日に友達と予定を入れていたからだった。新は中学で周りからも期待された注目の陸上選手だったが、自分を責め、陸上をやめた。

朔にはという彼女がいた。朔は梓に負担をかけたくないと思い、もう会わない方がいいと思っていたが、梓の正直な気持ちを受け止め、再び交際を始める。そして、新が陸上をやめたことを梓から聞き、母が新のせいだと思っていたこともわかる。

朔は梓に付き添ってもらい、盲学校の陸上コーチである境野さんに会いに行く。そして、ブラインドマラソンに挑戦したいことを伝え、指導を依頼する。その帰りに新を呼び出し、新に伴走者になってもらいたいと頼む。新は朔が走ることが好きなわけではないことを知っているので、自分のためかと拒否するが、朔は今までやらなかったことをやりたいと言い、新に伴走者になることを本気で頼む。新は何を言っても譲らない朔の性格をわかっていて、朔のために何かしたいという気持ちを持っていたので、引き受けることにする。ここから2人の練習が始まる。

2人の練習は順調に進み、朔もだいぶ体力がつき、体もしっかりしてくるが、2人にはそれぞれの葛藤があった。兄弟だからこそ、お互いに踏み込めない領域がある。

いつもと違うコースで練習しようと荒川河川敷に行って練習した時、新は思わず伴走者の立場を忘れて、自分のペースで走ってしまう。朔は転倒し、すり傷を作る。傷もけがも大したことなかったが、新は伴走者として自信をなくし、境野に伴走者の代わりを見つけてほしいと頼む。その時、境野は朔には内緒ということで、盲学校で朔が引きこもっていたこと、そこから急に何かがあって立ち直った話をしてくれた。

そして、境野から神宮外苑チャレンジフェスティバルという大会に10キロで参加しないかと誘われる。新は朔に参加するなら伴走者を代えてほしいと言うが、朔は盲学校で引きこもっていた時に、事故のバスに一緒に乗っていた女の子が点字で書いた手紙を持ってきてくれた話をする。朔はいろんな世界が見たいのだと新に話す。

大会当日、走り始める前に、朔は急に新に自分の本心をさらけ出す。そして、もう新とは走らないと。新はその話を聞き、納得し新も本心で話をする。やっぱり走ることが好きだ、逃げないで走る、と。

スタートの号砲が鳴る。

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