見出し画像

アンジー。 daichead a dó

上に部屋とってあるから、とショーンに鍵を渡された。もっと色っぽいシチュエーションなら嬉しいんですけどね。
アンジーはどこ行っちゃったんだ。歌い終わると、アイリッシュダンスが始まって、無理矢理ステップを教え込まれてる間にいなくなっちゃった。
じゃあねえ、って頭の横で手をひらひらさせて女の人とどこかへ行ってしまうショーンを見送ってから入口の横の狭い階段をのぼった。鍵のナンバーは302。
ドアを開けると、ルーがベッドに座ってテレビを見ていた。
え、え、え、どういうこと。なんなの、ねえ。ねえ。
セジュ。
にっこりと笑うルー。
混乱してる僕。
どうしてここにいるの。さっきアンジーだったよね。なんで?なんで?ここで何してるの?仕事は?ペンションの仕事はどうしたの。
セジュ、声おっきい。
ルーはくちびるに指を当てて、笑ってる。
セジュはいつも質問から始まるねえ。
ルーがびっくりさせるからだよ!
ごめん、つれてきて、てショーンに頼んだの。だってセジュはアンジーのことが好きでしょう?
それはそうだけど、ずっとここで歌ってるの?ペンションは?
冬の間は観光客が少ないから、食事のお客様だけなら、ママ、あ、母さんだけでも大丈夫だし。だから、出稼ぎっていうか。
聞いてたらさ、ショーンに頼まなくてもこの街なら自分で電車で来れたのに。ショーンに悪いことしちゃったな。
大丈夫だよ。この部屋ね、ショーンの長期滞在用なんだ。出稼ぎに来てるときは、いつも泊めてもらうの。
そっか。
ふふふ。そんなとこに立ってないで座ったら?
ルーはベッドの自分の横をぽんぽんと、叩いた。
ルーのそばに腰掛けて天井を見上げた。
屋根裏?
うん。二階と違って三階はお金かけてないねえ。テレビあるのこの部屋だけだし。
身を寄せてきたルーの顎を持ってじっと目を見つめてみた。
ショーンは?
ね、キスしたかったのに、なんで今ショーンのこと聞くの。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?