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世代を超えて ─「SONICMANIA」現地レポート

8月19日、19:30。幕張メッセに到着。

サマソニに比べると小さい

今日は待ちに待ったオールナイトフェス「SONICMANIA」だ。

なんとか万難を排してたどり着いたので、会場についただけでも感動はひとしおである。この数週間は本当に大変だった。

20時に開場。消毒→手荷物検査→チケット確認→ID確認(若干あいまい)という流れなので、チケットとIDを持ったまま手を消毒しないといけない構造的欠陥はまあ置いておいて、とにかく入場。

迸るレーザー

凄い。この時点でもうテンションが爆上がりだった。
随行する友人の希望でオープニング・アクトのどんぐりずを観に行く。



どんぐりず

サウンドチェックがてら出てきてくれて、おまけに「早く来てくれた人たちのために1曲やっちゃいます」と。こういうのに弱い。最高だ。

正直なところ聴かず嫌いしていたのだけれど、いざ生で聴いてみると思いのほかダンスミュージックに寄っていて驚いた。もっとゴリゴリのラップかと思っていた。ごめんなさい。すごく良かった。「Oto Mafia」って曲が特にお気に入り。
あとユニット構成が電気グルーヴと一緒なんだな。ボーダーの彼がたまに前に出て歌うところとか。



次に見たいCorneliusまで時間があったので、同じPACIFIC STAGEのBOYS NOIZEを引き続き観る。



BOYS NOIZE

こちらも初見。
すごく正統派なエレクトロでたちまち好きになってしまう。硬質な雰囲気のサウンドにマッチするサイケなVJがとてもカッコよかった。


持ち時間の半分くらい観た。名残惜しいけれど、いよいよSONIC STAGEへ移動。ここからが本番。



Cornelius

夢にまで観た妙幕

早々、といっても15分前くらいに行ったので、運良く前方右側の4~5列目くらいに入れた。フジロックの配信で観たことには観たんだけれど、生で観るとなるとやっぱりこちらもなぜか緊張する。

と思っていたら照明が落ちて「MIC CHECK」が…!「聞こえますか」の声に心のなかで「聞こえているよ」と思った。たぶん、みんなそうだろう。
メドレー形式で「Point Of View Point」のイントロへ。「Point」という歌い出しとともに妙幕が落ちる瞬間、最高に興奮に加えて小山田圭吾が実在したんだ…、という感動が襲ってきた。バックには高速道路のタイムラプス映像、さっきのBOYS NOIZEでも似た映像が使われていたけれど、音楽が違うとこんなにも印象が変わるんだな。

「いつか / どこか」。柔らかい声とメロディーに会場中が聴き入る。
うしろの映像がMETAFIVE「Musical Chair」にちょっと似ていたんだけれど、制作元が一緒なのかな。続いて「Audio Architecture」と最近のアルバムから2曲続く。「Quiet」で歓声が(ほとんど)起きなかったところに、聴衆も含めてライブを創っている感じがした。逆に声出したヤツ…
今日は堀江さん(Key,G)が急遽休みになってしまったので、ハモリ部分がなんだか物足りない。でも逆に貴重なものを聴けたという喜びもある。次のライブに行ったら完全なものを聴ける楽しみが増えた、って考えればいい。

新(?)曲「変わる消える」も聴けた。リリースされているものと違って小山田くんがボーカルを取っている。こっちのバージョンも音源として聴きたい。男性ボーカルも女性ボーカルも似合って、なおかつあんまり印象が変わらないという曲だ。
「Another View Point」~「COUNT FIVE OR SIX」~「I Hate Hate」と続く。完全にロックなCorneliusだ。ギターが高らかに響き、生ベースが唸る。変則的なドラムを完璧に叩きこなすあらきさん、めっちゃ凄いなあ。

「Beep it」の歩くようなシンセベースに聴き惚れていると、ドラムが異変?なんだかハイハットしか叩いていないと思ったら、どうやらスネアに何らかのトラブルが起きたようだった。慌てて(しかも演奏中に!)交換するスタッフ。またまた貴重なものを観れてしまった。テクノには不釣り合いな演奏トラブルが大好物なのである。小山田くんがカウベルを叩く(叩きつける)のも見れた。

Cornelius版「環境と心理」が聴けたことがいちばん嬉しかったな。イントロのフレーズとか、色々なところでオリジナルと違って個性が出ている。完全にCorneliusのレパートリーに入ったのだろうか。もはや事実上METAFIVEが亡きモノとなってしまった現在、これからも歌い続けてくれるのだろうか。寂しいけれど、歌っている姿を観れて聴けるだけで嬉しい。

エンディングを飾るのは「STAR FRUITS SURF RIDER」、そして「あなたがいるなら」。演奏後に映し出される「Thank you very very much, everyone.」の文字が、ここ2年に起きたこと全てに対するファンへのアンサー、そしてファンからのメッセージだと思う。最後、3人で肩を組んでお辞儀していったところで泣きそうになった。



次の電気グルーヴもSONIC STAGEなので、居続けようかと思ったんだけれど、どうしてもSparksが観たいのでちょっと行こうとPACIFIC STAGEへ移動。かなり埋まっていたのと、時間もそこまでなかったのでほとんど観られなかった。たしか「My Baby's Taking Me Home」を演っていたかな。動き回るラッセルが豆粒みたいな小さいサイズで見えた。



電気グルーヴ

ほんの少しだけSparksを観て開演15分前に戻ってきたのにも関わらず、めちゃくちゃな人手。さすがフェスの帝王、電気グルーヴだぜ。

iPhoneはズームにどうにも弱い

中段エリアのど真ん中をやっとの思いで確保した。

サイレンの音。「一番 電気グルーヴ」の声でめちゃくちゃ驚いた。まさかの新曲「HOMEBASE」が1曲目。先日のFC限定ライブ@リキッドルームで聴いたけれど、フェスでも通用するなー、と。派手なサウンドじゃないけどウグイス嬢の声なんかが盛り上がるし「イジりがい」がありそう。
2曲目「人間大統領」。こっちが1曲目だろうなーと予想していたのでかなり面食らった。どうやっても盛り上がる。

念願の「Shangri-La」。90年代のライブでやっていたような早めのBPMで聴きたい欲もあるけれど、「大人な」感じにアップデートされた電気グルーヴもカッコいい。よりアダルトで妖艶な感じだ。続く「Missing Beatz」「モノノケダンス」「The Big Shirts」も大好き。マイクを握りしめながら動き回って歌うピエール瀧と石野卓球、派手派手しくてアヴァンギャルドなVJ。まさに「フェスの電気グルーヴ」という感じがしてたまらん。

教育熱心なクイズ校長!「B.B.E.」だ!今でも通用するバカ歌詞。50代になったからこそ、こういうのを歌っていくスタイル。敬服するね。「カニ挟み」が出来て嬉しい。正統派なダンス・アンセムの「SHAMEFUL」も最高。これで踊れない人間は誰一人としていないだろう、と思っていたら隣のおじいさん寄りのおじさんはほとんど棒立ち。あ、いるんだ、と思ってちょっと面白かった。

この前も聴いた「少年ヤング」。VJが違う(はず)。より派手派手しいVJ。やっぱり名曲だろう、これは。
Kraftwerkへのリスペクトが感じられるVJの「MAN HUMAN」。ここからだったような記憶があるんだけれど、ド派手なレーザーが投射されるようになった。ますます盛り上がるでしょ、こんなことされたら!超絶カッコいい。
「スコーピオン2001」のイントロが聴こえて大興奮。この曲は1,2を争うくらい好きだ。でっかく「MILLION SCORPIONS in MY BRAIN」と映し出されたのにシビれた。中盤の瀧の煽り方がまあ上手。否が応でも盛り上がる。

「Flashback Disco」「UFOholic」で締め。踊らせまくる電気グルーヴ。言ってしまえばほとんど(後者は完全に)インストなのだが、それを披露してここまで会場を沸かせることができるのも、長いキャリアと経験に裏打ちされた実力である。まだまだ現役。
これから待ち構えている新曲&アルバムが楽しみだ!


次のTESTSETまで時間があるので、一回SONIC STAGEから出て休憩。



TESTSET

電気グルーヴからの流れだったらそこそこ人も残るのだろう、と思って早めに戻ってきたんだけれども、意外と前方エリアが空いていたのでそこに入った。

照明チェック

上手の前から4~5列目、まりん側をゲット。というか左前方はプラチナチケット購入者限定エリアなので必然的にそうなる。
4月にLIQUIDROOMで演ったスペルバとの対バン以来。

サウンドチェック、スタッフが全部こなすと思って気を抜いてスマホを見ていたら、普通にメンバー全員出てきてビックリ。一通りやったあとに何事もなかったのようにハケていった。色々拝めてラッキー、早く来た甲斐があった。客電が落ちる前に後ろを見たのだが、かなり人が入っていて驚いた。なぜか我が身のことのように嬉しい。

はじまり。まずはお決まりの「Full Metallisch」~「The Paramedics」。後ろのVJもちゃんとTESTSET仕様になっている。なんだかLEOさんの気合の入り方が違う気がする。パワーがすっごい。
相変わらずParamedicsの間奏(琴みたいなKey)はカッコいいなー。この曲を一気に和ロックな雰囲気にしてくれる。

その後も「Snappy」「Musical Chairs」とメタ曲が続く。コーラスがいないのでLEOさんは大忙しだ。普段は歌ってくれている白根さんも欠席なので、なんだか少し寂しく感じる。Corneliusの堀江さんが欠席するのとはまた違った感情が…。

いよいよ新曲の「No Use」が!最近リリースされたEPで個人的にはいちばん印象の薄い曲だったんだけれど、LEOさんが拡声器を使うところにグッときた。ライブ映えするねえ。
それで言うと「Peach Pie」も良い。「Hang it over」で煽られたので思わずハンズアップしてしまう。かなり白熱してきた。

そして「No Modern Animal」。マジかよ?!
前回のイベントで向井秀徳と対バンしたから一夜限りの…、だと思っていたらまさかの良い裏切り。その時に披露した feat. 向井秀徳バージョンは最新EPに入っているので聴けるんだけれど、「BETA Q」行けなかったから生で聴けて超うれし~~!この曲も盛り上がるなぁ…。

「Whiteout」。この曲、クールダウンさせてくれそうに見せかけてさせてくれない。まったくニクいやつなのである。後ろのVJがリリック流れていくの見事でねえ。「Gravetrippin'」のVJは『METALIVE』でしか見たことがないんだけれど、あれも非常にカッコいい。また演ってくれないかなー。

前々からライブで披露されていた「Carrion」。4月の時点で出来上がっていたのも、より洗練された(=演奏し慣れた)雰囲気が。
特筆すべきは後ろの映像!自然あふれる景色に動物たちが登場。なんかちょっとだけ面白かった。新MVだろうと予想したのだが、後日ちゃんとリリースされた。


「Testealth」「Where you come from」と新曲のなかでもロックなナンバーが続く。ギターが映えるサウンドだ。ほとんどシャウトな声を張り上げるLEOくんの力強さを感じる。
今回のステージで、TESTSETのバンマスはまりんだと改めて認識したけれど、エンジンはやっぱりLEOくんしかいない。共演者もノリノリで共同作業できるだろうな。あんなパワフルな人物がそばにいて羨ましい。

そして「Communicator」でシメ。ラストを飾るにふさわしい、美しい夕暮れみたいな雰囲気の曲だ。ステージ照明もオレンジだから余計にそう思わせる。最終最後、まりんのシンセベースから発せられる低音が、なんだかこの間のLIQUIDROOMよりも身体に響き渡った。
色々なところで見受けられた「TESTSETでやっていく」という意志がより深く、かつ重くなっていたのを感じるパフォーマンスだった。



その後は特筆すべきことがない。観たかったアーティストは全部ちゃんと観きったので、ほとんど始発までの消化試合的な感じで動いていた。
HARDFLOORとTHE SPELLBOUNDの両天秤をどちらかに傾けることもできず、とりあえずHARDFLOORを観て、踊って、そのあとTHE SPELLBOUNDを見に行った。どっちも頭から最後まで観たかったな。これがフェスの醍醐味なのか。たぶん違うと思うけれど。

ラスト、THE SPELLBOUNDはブンサテのカバー曲を演ったらしい。BOOM BOOM SATELLITESはあんまし聴いたことがないから知らなかったんだけれど、会場がめちゃくちゃ盛り上がっていたのでとりあえず追随しておいた。実際、カッコいい曲だったしね。前回TESTSETの対バンで聴いた「Angel~」もカッコよかったなあ。

あ、途中でCreepy Nutsがどんだけ客入ってるのかも見に行ったな。一番大きいMOUNTAIN STAGEがいっぱいになっていた記憶がある。何しろめちゃくちゃ遠巻きにしか見ていないから分からないけど、すごい人手だった印象。勢いがあるユニットだからすごいね。


かくして電車が動き出す時間となった早朝。

全員死ぬほど疲れ顔

久々に朝の光を見た。綺麗だった。
さすがに疲れたぜ。



雑記

客層が一見バラバラなんだけど、よく見るとだいたい二極化していて面白かった。AwichとかCreepy Nutsとかの”若手”目当ての若年層と、それこそ90年代から電気とかコーネリとかの”中堅~ベテラン”を現役の頃から聴きまくっていそうな中年層の2パターンが大部分を占めている。
若手層のステージはどんぐりずしか見ていないのだけれど、老若けっこう入り乱れていて正直なところ驚いた。他に見るアクトがないからなのかもしれないけど、体感だと若人7割、中年3割くらい。いい音楽ってのはやっぱり世代を超えるんだろう。僕だってCornelius→電気グルーヴ、そして次のTESTSETを目当てに来ているからごちゃごちゃ言えないが。

時代・地域を問わず色々なジャンルの音楽をサブスクで聴けるのって、音楽業界にとって凄く追い風になったんだろうな。でなきゃ2~30年前に活躍して、現在はほとんどメディア露出しないグループなんて知る術がないもん。デジタル社会の利点のひとつだ。

とにかくこんな濃ゆくてレジェンドな面子を一夜でぜんぶ堪能できて物凄く嬉しかった。憧れの人を目の当たりにできるということだけで幸せが摂取できて、明日への活力になるのである。たまらん。来年も開催されるかどうかは分からないけれど、もし開催されて好みのアーティストが出演するなら絶対見に来たい。

普段のライブとは違った雰囲気と幸福感が味わえた、最高の夜であった。




(終)


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