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映画「チワワちゃん」の感想(その5)~青春の爆発と終わり

この映画のテーマは、「青春の爆発と終わり」であるという。 ミキは青春の終わりを直感していた。 ミキは、青春が終わることを自明としている。 そして、「わたし達」は、ただ時間の過ぎるのを待っていることを選ばなかった。 自爆して終わらせたのだ。 自爆の代償は、わたし達の青春である。 なぜ自爆しなければならなかったのか? 青春が終わることを直感していたから、ぐずぐずとフェードアウトすることを避け、青春を鮮明にするため? いや、わたし達に明確な意思は無いように思う。 ただ、

    • 映画「チワワちゃん」の感想(その4)~脇役の存在

      ヨシダ君 青春の爆発をともにしたが、埠頭に来なかったヨシダ君。 ヨシダ君は、不器用なんだと思う。 感情をうまく言葉にできない。 いつも「お前だけ何か違う。」という口説き文句しか言えない。 無言で永井君のカメラを破壊するしかなかった。 ミキを抱こうとするしかなかった。 しかし、就活のために履歴書を書いている。 当然、本名を記入する。 彼も、彼なりの方法で大人になろうともがいているのだろう。 サカタ カメラマンの酒田譲は、最初に本名を名乗って登場していることが わたし達の

      • 映画「チワワちゃん」の感想(その3)~なぜ、動画を撮ったのか?

        チワワちゃんを追悼するために集まった埠頭で、わたし達はビデオを撮影する。 なぜか? 永井君とチワワちゃんとの約束を果たすため? 永井君がビデオを撮るきっかけになったかもしれないが、それは本質的な理由ではない。 ビデオでは、それぞれが本名・年齢・職業・出身地・チワワちゃんとの思い出を紹介する。 なぜ、今さら本名を名乗らなければならなかったのか? これまで本名すら知らない間柄であったのに。 それは、これまで匿名でチワワちゃんと付き合っていたのを、改めて本名の自分自身とし

        • 映画「チワワちゃん」の感想(その2)~東京湾に集まった理由

          なぜ、わたし達は、再び集まったのか? わたし達は、学校や職場などの特定のコミュニティの集まりではない。 友達の友達というように、なんとなく出逢って緩やかに繋がっているに過ぎない。 本名なんて知らない無責任な匿名の関係だ。 チワワちゃんを憎んだ人も、好いた人もいる。 しかし、注目すべきは、冒頭で引用したミキの語りの主語が、「私」でも「チワワちゃん」でもなく、「わたし達」であることだ。 自らの意志で集まった者たちということでなくても、偶然同じ時代、同じ場所に居合わせたという

        映画「チワワちゃん」の感想(その5)~青春の爆発と終わり

          映画「チワワちゃん」の感想(その1)~チワワちゃんを殺したのは誰か?

          まず、冒頭のミキの語りが名文だ。 このセリフは、悲嘆にくれたトーンでも、悲しみを押し殺したトーンでもない。ただただ、ニュースを読み上げるように、淡々と語られる。 それは何故か? このセリフを言葉通り受け取れば、 現代の人間関係の希薄さ、空虚さ云々と評することもできる。 しかし、それで片づけてしまうのはどうか。 むしろ、わたし達の関係は、戦友のような特別な関係に近いのではないか? この映画は、ミキがストーリーテラーとして主人公に位置付けられている。 登場人物で東京出身なのは

          映画「チワワちゃん」の感想(その1)~チワワちゃんを殺したのは誰か?