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ダダダイアリー、主に映画。2024/5/17ー5/31

5月17日
谷中にあるギャラリーSCAI THE BATHHOUSEにて開催中のアピチャッポン・ウィーラセタクン「Solarium」へ。
森に迷い込み、知らない生き物と目が合ったかと思ったら、目玉を探し求めてスクリーンから出られなくなった男に遭遇するという怪奇サスペンスな展開のインスタレーション。2面スクリーンで向こうが透けて亡霊かと思ったら向かいに座ってる鑑賞者だったという空間設計もちゃんと考えてんだろうなセタクンは。ワンダー全開で面白かった。

その後は天気が良かったので根津から江戸川橋まで徒歩で移動。さすがに疲れて足パンパンになった所で「コ本や」で開催中の展示会「コ虫やーオトシブミ」を覗いて来た。
虫に関する作品や雑貨の展示販売。だつおのL版作品1枚といちむし堂の葉っぱコースターとナナホシキンカメムシの小皿を購入した。

5月19日
NHKのドキュメタリー番組「ドキュメント72時間」も良いけど「Dearにっぽん」も良い。
こないだの青森・牛滝地区の女人禁制の神楽に挑戦する女の子の話とかむちゃくちゃ良かった。ナレーションは吉岡里帆だし、エンディングテーマは寺尾紗穂だし、たまに観ると沁みまくる。

目黒シネマにて2本鑑賞。
先ずはケリー・ライカート監督「リバー・オブ・グラス」鑑賞。
拳銃を落とした警官と育児放棄した母親と30過ぎて定職につかない青年が繰り広げる倦怠のノワール。バッドエンドよりも最悪な退屈な日常への回帰。救いようのない話をここまで愛おしく描く。やっぱり1番好きなライカート作品だな。観るの3回目だし。

続いてデヴィッド・リンチ監督「ロスト・ハイウェイ」鑑賞。
ブラックロッジとブルーボックスが収まった一軒家で繰り広げられるビル・プルマンの大オブセッション大会からの危険な横滑り。何気に劇場で観るの初めてだった。最悪と最高が共存するいかがわしいリンチワンダーの炸裂。これ爆音でまた見たいな。

5月21日
ヒュートラ渋谷にて開催中の「ニナ・メンケスの世界」で2本鑑賞。
「クイーン・オブ・ダイヤモンド」
寂れたカジノ、燃える木、カラカラに渇いた終末のアメリカで積み重ねられる倦怠のエピソード。物語を拒否するフレーミングと圧倒的な虚無とそれらを支えるユーモア。その中で立ち続けるティンカ・メンケスの気高さ。初メンケス完全にしびれた。

「ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー」
男性の眼差しと雇用格差と性暴力の三位一体。女性からシネマを奪ったハリウッドを中心とした映画史の洗い直し。メンケスの講演記録を明確にヴィジュアル化したドキュメント。これはタメになった。インタビュイーでロザンナ・アークエットを久々に見れたのも嬉しい。

5月22日シネクイントにて、ロディ・ボグワナ、ストーム・トーガソン監督「シド・バレット 独りぼっちの狂気」鑑賞。
謎多き伝説の人物をヒプノシスのストームが関係者へのインタビューで解き明かすドキュメンタリー。ドラッグでおかしくなってしまったというよりも元々繊細な人物だったことが良くわかった。掃いて捨てるほどある孤高の天才の顛末とも言えるが、だからこそ時代の記憶として語り継ぐ必然がある。ストームが亡くなったあともロディが10年以上の歳月をかけて執念で完成させたってのもそう言った部分で伝わる作品。

長田弘「人はかつて樹だった」読了。
樹をテーマに樹の下で編まれた21篇の詩。うつくしいとは、ひとだけがそこにいない風景のことだ。目先の利益の為に後先考えず森林伐採する為政者達やそれに無関心な人々に配って回りたい大事な事しか書かれていない詩集。

5月24日
Dearにっぽん「家族が眠る真珠と〜三重・英虞湾〜」録画鑑賞。
遺灰を入れた真珠作りを行う田中英樹さんの元に集まるそれぞれの家族の想い。コロナワクチンの副作用で急死した娘を想う父の元に、丸く輝く真珠に生まれ変わって帰ってくる娘。そこに流れる寺尾紗穂「魔法みたいに」。泣くだろ、これ。

下北沢CLUB Queにて開催"BrightLights,BeatCity"THE SHAKES/THE PRIVATESへ。
80年代から活動を続けるバンドの2マン。ライブ始まる前はなんでこんな酷い世界で生きてるのだろうと不貞腐れてたけど、そんな世界でそれでも生きていくという意味や決意を彼らが轟音で示してくれた。少しだけ草臥れた顔しながら今でもROCKTRAINを走らせ続ける姿。これ以上の答えはない。感極まった。

THE SHAKES 
THE PRIVATES
THEPRIVATES延原達治とTHE SHAKES 黒水伸一

5月26日
ETV「サヘルと8人の子どもたち」録画鑑賞。
サヘル・ローズが児童養護施設出身の若者たちと映画を作る日々を追ったドキュメンタリー。幼くて言葉にできなかった想いを言葉に出来るのは今の自分自身。フィクションだから口に出来る本当の言葉たち。サヘルの想いが詰まった初監督作品「花束」を早く観たくなった。

青山ブックセンター本店にて開催『わからない』刊行記念!岸本佐知子 × 大久保譲トークイベントへ。
旧知の大久保氏による名翻訳家岸本佐知子の歴史を紐解く進行が、横滑りしまくる近代文学史な展開に。ほぼノンストップで喋りまくりあっという間に終了。あと2時間はいけたな。本当に楽しかったしエッセイの期待値爆上がりした。
あとルシア・ベルリンとミランダ・ジュライの新刊の翻訳も楽しみだ。

5月28日
ナージャ・トロコンニコワ「読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門(野中モモ訳)」読了。
プーチンに笑顔で中指を突き立てるPussyRiotの実践と哲学。腐りきった周回遅れの世界でオルタナティブにサバイブしていく為の武器にも薬にもなるマストなテキストの登場にトキメキが止まらない。

シネマート新宿にてリチャード・フライシャー監督「ソイレント・グリーン デジタルリマスター版」鑑賞。
まさかの上映開始時間を1時間勘違いして半分も観れなかったけど、エドワード・G・ロビンソンの有終の美は堪能。それで大画面で良く分かったのはチャールトン・ヘストンが清掃者に飛び乗る際の無駄の無い動き。あそこだけ何度もリピートしたいと思った。

5月30日
渋谷ヒカリエ内のギャラリー8/CUBE 1, 2, 3にて開催中の「白昼夢百貨店Daydream Department Store」へ。
眞鍋アンナ、シマ、越出つばさ、三崎了によるグループ展。ありそうでない架空商品の展示会。どれもキュートで全部欲しくなったが、このキュートさの主張に違和感や恐怖を覚える人たちに対して、気にすんなと伝える意味もあるらしい。清々しい断絶と拒絶の煌めき。グッズも充実してた。

ヒュートラ渋谷にてニナ・メンケス監督「マグダレーナ・ヴィラガ」鑑賞。
アイダとクレアと9人のジョン。娼婦アイダを巡る絶望と闘争のポエム。ティンカ・メンケスの放つ圧倒的な虚いと気高さに震えるニナ版「ジャンヌ・ディエルマン」。わたしを縛り付けるな。上半期最大の出逢いニナ・メンケス特集第二弾を熱望。

5月31日
コ本やに行って先日取り置きした、だつおのL版作品を引き取り。ついでにミシェル・ウェルベック「地図と領土」文庫本も購入。

江戸川橋から市ヶ谷まで徒歩で移動。
喫茶室ルノアールで一休みしたあと防衛省へ。

防衛省は"イスラエル"「死の商人」から攻撃用ドローンを買うな!防衛省前抗議へ 。
イスラエル製ドローンを輸入する防衛省に対する抗議デモ。ニヤついたり、無言で帰る防衛省職員たちに怒り爆発。予定時間オーバーしても全然終わらず終了後も怒りの収まらない有志たちはフラッグを振りながら街に消えて行った。私も怒りをぶち撒けて来た。ホントにいい加減目を覚ませ。

松村正人編・著「シド・バレット読本 ピンク・フロイドを創った男とブリティッシュ・アンダーグラウンド」読了。
ドキュメンタリー映画「シド・バレット独りぼっちの狂気」に合わせた書籍だが、こちらはこちらで多角的に独自にシドに迫ったもう一つの紙のドキュメンタリーとなっており楽しめた。特に湯浅学による論考「耳から吸い込むバレット」が面白かった。


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