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「カレーライス脚本解釈術」の感想をお願いして書いてもらいました その2/2

 こちらの続きです。ひとつ目にの感想は役者として実際に仕事をされている方にお願いしました。今日紹介させていただくのはコロナ前に私が演技の実験場のような場を作っていましたので、そこで出会った演技に対してとても真面目な青年に読んで貰いました。
 私がいくらか私渡してんのか、と思われるかもしれませんが、そんな事は全くないのですが、宣伝してくれてます笑。ありがとう。でも何より、内容を理解しようとしてくれてありがとう。演技の仕事経験がある人(前回)ない人(今回)で感想が大きく違う事も興味深いです。演技の経験によって響く所が色々違う本だと思ってます。
 感想を書くにあたってお願いしたのは以下の自己紹介とアンケートです。
※で私の補足を入れます。

本の内容に沿った自己紹介
役者歴  年
主役以外(エキストラでない) 〇本くらい。
主役 〇本くらい。

本の内容についてアンケート
①どこかで見た事がある内容でしたか。
②役者の為の本はこれまで何冊くらい読みましたか。
その中でどのような位置になりますか。
③価格906円高いですか。

役者歴 ??年

2015年から2021年まで演技を勉強していました。

2015年から2020年は大学在学中にワークショップや事務所のレッスン等、独学で演技を学びました。その後は韓国に渡り韓国での演技レッスン等で学びました。

作品主役以外 3本

 これまで表現の場で演技をすることがおそらくブンザイさんの著書を読まれている方々と比べ少ない思います。(※ブンザイ補足:まだまだ数えるほどの方にしか読んで貰ってません笑)そのため、主観的な部分もありますが、ただの演技好き人間の感想としてご参考くださいませ。

 普段割と読み書きをしますが、ちゃんとこのホンの内容と向き合った時どっぷり疲れました。そのためか、あまり食べないお菓子と栄養バーを貪りながら、本読ませていただきました。3回読ませていただいた感想です。

 俳優というのは歴とした職業ですが、目指す方の動機って様々ですよね。演技をやってみたい、有名になりたい、モテたい。まあ色々な理由があると思いますが、演技は表現方法の一つですからものづくりの感覚を蔑ろにして、経験と感覚だけでやってしまうと脚本の解釈の入り口に辿り着くのにも時間がかかるな、とホンを読みながら感じました。ごく当たり前のことかもしれませんが、表現者としての自覚があるかないかでは根本的に違ってくると思います。私はこうこうこう見られたいからああいう風に演技しよう。と脚本の解釈を頭の中で視覚化する作業ばかりしているとやはり脚本の解釈からは遠のくと思います。脚本を解釈できる人の自覚はこうだと思います。まず、大前提として俳優は表現者としての自覚があること、そしてものづくりの感覚があることです。作品を通して監督やスタッフ、共演者と一つの作品を作り上げていく世界をお互い描くことができ、それがマッチして初めておもしろポイント法(※ブンザイ補足:本の中で紹介している脚本解釈の方法の一つです)に繋がると思います。そういう意味でもまず、俳優にとってありがたいホンになると思いました。

 本題です。

 おもしろポイント法の話で、僕がよく考えているのが面白い作品には、見るの人の感情グラフのデフォルトがいくつかあるなと感じていました。これは日本の作品と韓国の作品とを見比べながら感じたことです。どこでそのグラフが上がり、下がり、停滞し、それを演者がわかっていると分かっていない演技の二つの間には大きな川が流れているなと感じます。脚本を書く方の中にもおもしろポイント法を感覚的に分かっていることはいらっしゃると思いますが、それを自分言語で解釈されてる方はさほどいないのではと感じます。なのでやはり、すでに知っている(はずの)ことを自分の行動を通して再確認する作業は自己理解という点でも重要な作業になってくると感じました。冒頭にブンザイさんの言葉でありましたが「演出として頭の中だけでやってきた作業をその通りに文章化する事です。それでも、書きだした物に沿って作業してみると、実際はなぜか全然違う方法で作っている。」ということが俳優にも多々あります。頭の中で知っている、と実際にそれを自分ができる、はまったくの別物です。またできるまでの過程を「今を生きる」演技に身を任せ作り出す俳優も多いと思います。おもしろポイント法を感覚的に捉えることは皆さんやっていることかも知れませんが、私が実際にホンを読みながら言葉のロジックを理解しながら、パズルがはまるようにおもしろポイント法を理解できたのは驚きでした。(普段の自分の読解力不足もあるかも知れません)

 演技って感情が沸いて、それが言葉になって、行動になりますよね。韓国でのレッスンでこんなことを言われました。”何回も脚本を読んでとにかく100回、無感情で読んで” 最初から読みながらどう演じようか決めながら読むとその演技から離れられなくなるからです。何回も読み返しながら脚本の解釈後演技は変わり続けるのに、”こう演じよう”と決めてしまう方は少なくないと思います。というか必然と演技の道に入ってまもない方や学習意欲が高い方程そうなると思います。ある意味自然なことかもしれません。ただ、感情→言葉→行動と、それを飛び越えて行動をどうしようか考えるとやはり不自然が生まれる確率は高くなると思います。なので、とにかく脚本を何度も読み返し、目的とゴールを見つけ、読み進めるうちに沸いてくる感情は蔑ろにせず、なおかつその感情を超えて過度に表現しない。これがその方の演技になると思います。これが主体性の話に繋がっていると思いました。脚本の解釈ができると主体性が生まれてきますよね。主体性があるって自信があるってことですよね。これはこうだから私はこう演技していると。と自分でなぜその演技をするのか語ることができる必要性がありますよね。しかし、どこで良い演技をしようか考える人もいると思います。数年前の僕です。演技の前の脚本の解釈という点で、これほど俳優の痛いところをつくホンはないと思います。(そもそも存在してないですよね)感情→言葉→行動の過程で見るとやはり脚本の解釈がなければ演技は成り立たないものであるということがわかるとように、このホンなしでは自分が感覚的に知っていることを視覚化できる人はさほど多くないと思います。私を含め、すでに知っていると思っていた脚本の解釈を視覚的に見た時、知っている(はず)の物を見たのに実は知らなかったという事実を突きつけられました。

  中でも腑に落ちたのは”セリフから自由になる”ということです。私の辞書にはなかった言葉です。感覚としてはなんとなく知っていても僕にとってそれは単に”知っている"と思っていることで、文字にするとそれが実は自由になることだったのは発見でした。「セリフはただの額縁でメインはいつでもその中の画ですセリフは狭めるものではなく、演技を自由にするもの。そのために脚本を解釈する必要がある。」脚本を読み解くには書かれていないことを解釈する必要もありますね。そういう点でも、脚本解釈は固めていく作業ではなく、より自由になってくる作業であること。それが読むうちに演技は変わり続けるというところに繋がる。面白いですね。個人的に演技の面白さも再確認できました。

 また、脚本家がプロデューサーや監督と脚本を作る実際の作業のエピソードは興味深いものがありました。脚本のアイデアの枠を超えてどう形になっていくのかは面白かったです。世の中色んな人がいますよね。(完全に他人事です)それでも、同じカレーライスを作る人間として、脚本を解釈することの意味に自由になることを探しながら読むことが大事なんだと感じました。

 値段ですが、私は高くないと思います。私はブンザイさんを知っている人間として、ブンザイさんがこれまで何をされてきたのか、演技の実験場で何者でもないただのど素人の演技を見てくださり(※ブンザイ補足:私こそ何者でもないのに、すみません。脚本の仕事はしてましたが、演技指導のプロではないのです)一つ一つ思ったことを言葉にしてくださる方だということ。なぜ演技ではなく脚本の解釈の重要性を語るのか、どういう方なのか知っているので、高くないと思います。ただ知らない方からすれば異質なものなので、それがどういうものであろうと買うまでの過程が演技本と脚本解釈の本とでは少し違ってくるかも知れません。僕は"世の中顔じゃないよ"という方が得意ではないのですが用は、ブンザイさんの著書がどういうショーウィンドウに置かれて売られるかで全く違ってくると思います。無理矢理にでも演技をする人たちがどうにか手に取ることができるショーウィンドウに置かれるといいなと思っています。

 ブンザイさんに以前独白演技についてアドバイスを頂いた時にこんな言葉を言ってくださいました。(※ブンザイ補足:韓国の演技学校への入試の準備の時ですね。私は独白の脚本を書いた事がないし、独白の演技も指導した事がないのでわかりませんが、という前置きで伝えました)”見える結果が大袈裟であれなんであれ、独白というそもそもの不自然を乗り越えることができるとしたら道程を経てそこに辿り着いたという、それまでを結果の中にきちんと含んでいること”。やはり、演技は感情がきて、その感情が脳みそに伝達されて、行動になって、言葉になります。何1つ飛んでいい過程はないので、この過程のどれも抜かしてしまうと、ただ上手に演技しようという方向にベクトルが向いてしまい脚本の解釈から遠のくのも無理はないなと思いました。

 ”丁寧な暮らしをする(と言われている)人”を例にあげると分かりやすいかもしれません。彼らは持ち物一つ一つに”なぜこれを持つことにしたのか”明確でいつでも理由があったりします。逆に理由がなく、物を持つってどんな時でしょうか。そう、セールです。安くなってる時です。他にもあるかと思いますが、「これがこんなに安い価格で売られている」時、目的を失って買っちゃってますよね。完全に今を生きちゃってます。スーパーの中でも何を買いに来たのか、もしかしたら掘り出し物で今後あった方がカレーライスが美味しくなる食材も見つかるかもしれません。上手く例えようとしましたが失敗しました。

 読ませていただき、ありがとうございました。

アンケート
①どこかで見たことがある内容でしたか?
見たことなかったです。
②役者のための本はこれまで何冊くらい読みましたか?その中でこの資料はどのような位置付けになりますか?
約4冊です。俳優が避けては通れない脚本の解釈という部分で、演技本の良書を読んだ時とは異なる多くの発見がありました。原点回帰にしてこれ以下でもこれ以上でもない、脚本の解釈をできている俳優もそうでない俳優も全ての演技者が手元に置いて時々読み返すべき本だと思いました。
③価格906円って高いですか。
高くないと思います。

 色々感じたり考えたりしてくれた事が伝わってきて本当に嬉しい感想文でした。
 そうだ、一つ、面白い事がありました。ひとつ目の感想を書いてくれた役者A君はとてもおもしろい人で、なぜかそのマネージャーさんにまで読んでもらったそうです。そのマネージャーさんの結構長い、LINEが画面に入りきってない、スクロール20cmの感じの感想文も転送で送ってきてくました。まあ、長いと嬉しかったので、一生懸命読んで私は返信しました。「A君、この方はまえがきしか読んでないよ」と。A君はすぐに返信をくれました「電話で確認したら付録さえよんでませんでした、ごめんなさい」と。芸能界ぽいですね。ラインが長くて、それらしいのがまた、芸能界ぽいです。でもそういうノリには慣れてます。それに、その気のない人には本当に苦痛な本でしかないのは私から宣言します。私がお願いしたこの二人も読んでる最中は苦しかったと思います。
 それでも、またいつか折を見て脚本家や監督やプロデューサーの方になんか感想文をお願いしてみるかもしれません。何より、私が知らないどなたか読んでくださった方から感想をいただけたら、批判も含めてとてもありがたいです。きっと、現場を助ける本になると思うんだよなあ。


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