文徒ジャーナル Vol.30
Index------------------------------------------------------
1)今村翔吾の「塞王の楯」(集英社)の主人公は戦国武将ではなく石工
2)pixivから生まれた「特別じゃない日」(実業之日本社)がココロを温めてくれる
3)フジテレビのリストラ 何故に社長は無傷で君臨し続けるのか?
4)NHKドキュメンタリー「地方紙は死ねない」は秋田魁新報に密着
5)朝日新聞記事は何故か匿名?この新聞、少し変じゃありませんか!
6)熱血漫画編集者・市原武法が「文春オンライン」に登場
7)「TikTok」の「けいご」に注目だ!
----------------------------------------2021.11.29-12.3 Shuppanjin
1)今村翔吾の「塞王の楯」(集英社)の主人公は戦国武将ではなく石工
11月27日付朝日新聞は書評面で今村翔吾の「塞王の楯」(集英社)を取り上げている。評者の大矢博子は次のように書いている。
《『塞王の楯』は石工と鉄砲職人それぞれの若きリーダーの目から戦国の合戦を描いた斬新な歴史小説である。》
《匡介も彦九郎も目指すのは戦を終わらせることなのに、自分が組んだ石垣で、自分の作った鉄砲で、人が死んでゆく。自分たちこそが戦火を大きくしているという事実。矛も楯も、己の中に抱える矛楯に苛まれるのである。》
《戦国の技術立国・近江を舞台に職人の技術と信念を描いた、読み応え満点の歴史小説だ。お見事。》
https://book.asahi.com/article/14489531
11月6日付毎日新聞では「今週の本棚・著者に聞く」に登場している。
《戦国時代の小説といえば、名を成した武将の獅子奮迅を描くのが定石だが、今、勢いに乗る歴史時代小説家はひと味違う視点を見せる。「普段なら見逃されがちな、あって当たり前みたいなところにも人の関わりやドラマがあって、それを主役にした小説を書きたかった。今回は戦国武将は完全に脇役です」。》
https://mainichi.jp/articles/20211106/ddm/015/070/008000c
集英社の「青春と読書」は「城の石垣を作る石工を描いた物語!『塞王の楯』刊行 今村翔吾インタビュー」を発表している。今村は「塞王の楯」を執筆するにあたって穴太衆の末裔にあたる滋賀にある株式会社粟田建設の社長・粟田純徳を取材している。
《・・・職人さん達の手が異様に綺麗だったんですが、その理由は塩で手を洗うことで、手の感覚を研ぎ澄ましているからだとおっしゃっていました。石垣を作る時にはまず最初に、「栗石(ぐりいし)」と呼ばれる拳大の石を敷き詰めて地固めをするんですが、その作業ができるようになるまで一五年は修業が必要、とか。石積みは軍事機密だから資料を残すことができず、口伝てで技術が受け継がれているというのも面白かった。
その話を聞いて、剣術みたいな、論理よりも感覚を重要視する分野の「師匠と弟子」の関係に近いなと思ったんです。この作品が「師匠と弟子」の物語として始まり、「時代を超えて受け継いでいくもの」を描くことになったのは、取材させてもらったおかげです。》
http://seidoku.shueisha.co.jp/2111/read03.html
「文春オンライン」は11月23日付で「『最強の楯』か『至高の矛』か…関ケ原前夜に繰り広げられた、石垣と鉄砲の“激戦”」を掲載している。
《砲弾乱れ飛ぶ戦場で、崩れた石垣をその場で積み直して補修する「懸(かかり)」の描写は圧巻。「そこは“戦屋(いくさや)”の今村やからね」と笑う。
「虚構ではありませんが、実は『懸』は僕が名付けました。造語の巧者だった池波正太郎先生にあやかって(笑)。当時の世界の三分の一の鉄砲が日本産で、そのうち三割が近江の国友か日野で作られていた。城攻めに大筒が使われた数少ない事例。強力な鉄砲に対抗する穴太衆の秘儀として楽しんでいただけたら」》
https://bunshun.jp/articles/-/50141
「 zakzak」は11月28日付で「【BOOK】最強兵器を作れば戦いは起きないのか 穴太衆と国友衆、戦国時代の矛盾 作家・今村翔吾さん『塞王の楯』」を発表している。
《--主人公・匡介のライバルである国友衆・彦九郎の持論は「最強の兵器」をつくれば戦いは起きない。核抑止論に似ている
「この問題は、(唯一の被爆国である)日本人ほど考えねばならない民族はないと思います。戦後70年以上が過ぎて、どこか風化している感じがあるでしょう。それを歴史のどこかを切り取って考えてみたい、そう思いました。ただし、僕は、答えを出したいのではありませんし、答えが出る問題でもない。『考え続けてゆくこと』が大切だと思うのです」》
https://www.zakzak.co.jp/lif/news/211128/lin2111280002-n2.html
ご当地書店でもあるジュンク堂書店滋賀草津店の週間ランキングでは第1位となった。
《週間ベスト11/14~11/20【文芸】
1位『塞王の楯』今村翔吾 集英社
2位『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』福井県立図書館
講談社
3位『同志少女よ、敵を撃て』
逢坂冬馬 早川書房
4位『闇祓』辻村深月 KADOKAWA
5位『おおあんごう』加賀翔 講談社》
https://twitter.com/shigakusatsuten/status/1462587375297589250
「塞王の楯」を絶賛するツイートも数多く投稿されている。
《戦国時代。最強の石垣を作る技能集団と最強の鉄砲を作る集団。その二つがぶつかり合った時、勝つのはどちらか?蘇るホコタテ。
手に汗握る攻防、京極高次のキャラ設定、思いもよらぬ石垣の使用法。
いやあ面白くて読みやめられなかった。》
https://twitter.com/rxb02732/status/1461978957444575237
《単行本で550ページ超えの重量感も緩むことなく熱い展開!
「最強の楯」である石垣を作ることで戦をなくそうとする穴太衆の匡介。「至高の矛」である鉄砲を作ることが戦の抑止力となると考える国友衆の彦九郎。
北方謙三さんの大水滸伝に通ずる"志"のある小説で胸熱です!!》
https://twitter.com/tomorai88/status/1462261051790036999
《主軸は「大津城の戦い」だが主人公は戦国武将ではなく石垣職人・穴太衆「塞王」の後継者。
対するは鉄砲職人・国友衆「砲仙」の後継者。
戦国末期を舞台に知略と信念、仲間達との絆がほとばしる究極ホコタテなプロジェクトX。
ここ数年の歴史小説で一番面白いかも。》
https://twitter.com/kuro_koutouku/status/1464224056719208449
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