文徒ジャーナル Vol.20

Index------------------------------------------------------
1)買い切りでも入荷しない現実に本屋lighthouse幕張支店が怒りの連ツイを発表!
2)報道のMBSは「変節」したのか?MBSラジオの虎ノ門ニュース化
3)Pはつらいよ!Pってのは日共の隠語で党員のこと
4)自民党総裁選のメディアジャックに唖然!朝日なんて信用するな!?
5)李琴峰「彼岸花が咲く島」のAmazonレビュー欄を荒らすバカ
6)美術評論家連盟会長のリベラル・林道郎が元教え子からセクハラで提訴される!
7)「撮り鉄」党員・山添拓書類送検報道にみるマスメディアの堕落
8)深緑野分は「ゴールデンカムイ」にゾッコン!
9)「2050年のジャーナリスト」下山進が語るメディアの未来とは
----------------------------------------2021.9.21,22,24 Shuppanjin

1)買い切りでも入荷しない現実に本屋lighthouse幕張支店が怒りの連ツイを発表!

「名店」として知られる本屋lighthouse幕張支店が怒りの連ツイを発表している。
《話題の『東京の生活史』ですが、当店には流通関係諸々の都合により10/1あたりに入荷予定です。なお、事前予約で5冊を取次(問屋)に頼んでいましたが、入荷するのは2冊のみで、ギリギリ客注分が確保できる数なので、店頭には並びません。ご了承くださいませ。》
《ここからは筑摩書房ならびに業界関係者へ向けてのツイートですので、読者のみなさまは気になる場合のみお読みください。》
《当店が『東京の生活史』を取次の「子どもの文化普及協会」に発注したのは7月中です。いわば事前予約です。なぜ減数されるのでしょうか。また、大手取次ならびに神田村取次に発注をした本屋には減数がなされていないようですが、これはどういうことでしょうか。なんなら店頭分もありますよね。》
《子どもの文化さんからは先ほど謝罪の連絡が来ました。事前予約を頂いていたにもかかわらずご用意できず申し訳ない、という内容ですが、なぜ子どもの文化さんが謝らないといけないのでしょうか。》
《また、当店はギリギリ客注分を確保できましたが、客注割れをしている本屋もあるようです。その本屋はこれから予約をしてくれていたお客さんに謝罪の連絡をすることになります。なぜ本屋が謝らないといけないのでしょうか。》
《『東京の生活史』が話題書であることは版元がいちばんわかっているはずで、ゆえに発売前重版もかけたわけですよね。なのになぜ「減数」が起きるのでしょうか。そしてなぜ「店頭分」も入荷する本屋があり、逆に「客注分」すら入荷しない本屋があるのでしょうか。》
《それはあなたの本屋に販売力がないからです、でしょうか。資本力のない(=大手取次と口座を開けないような、あるいは子どもの文化としか開けないような)本屋には本が回らなくて当然、でしょうか。その論理を正しいとするならば、すべてAmazonが勝つことになるでしょう。もちろん版元も負けます。》
《もう一度問いますが、なぜ大手取次や神田村取次には入荷してるのに、子どもの文化さんには入荷してないのでしょうか(子どもの文化さんには24日入荷だそうです)。その判断基準はなんでしょうか。日付が遅いのは仕方ないとして、事前予約の客注分すら入荷しない理由はなんでしょうか。》
《こちらが納得のいく理由などないことはわかった上でこのツイートをしています。ずっとこの業界はこうだからです。大きい本屋や人気店にはドーンと山積み、小さい本屋地方の本屋には客注すら入荷しない。そんなことがずっと変わらず続いていますよね。》
《ひとつ版元にききたいのですが、なぜ「買切りの本屋に客注分を納品せずに、返品可能な本屋に店頭分も含めてたくさん納品する」という理屈の通らないことをするのか、教えてください。ビジネス的にも間違ってますよね。》
《こちらは客注分含めて買切りで仕入れる=この数を売り切るという意思を持って発注をしていますが、その意気に応えろ、という精神論ではなくて、単にビジネス的にも「返品されないのだから入れてしまえ」で正解になるはずです。本屋もそれで納得してます。だから必要最低限の数を発注してます。》
《ここに業界の悪い慣習が関わってきてることも理解しています。本屋は減数を見越して必要以上の発注をする、だから版元はそれを見越して減数して納品する、というくだらなすぎる「駆け引き」です。》
《もうこれやめませんか?少なくとも「買切り」で発注するしかない小さな本屋はそれをしていません。というかできません。もちろんする気もないですが。これは取次の子どもの文化さんも同じだと思います。子どもの文化さんも版元から買切りで仕入れてますよね。》
《覚悟と意思をもって発注=仕入れをしている本屋や取次に対して、そういう態度を返されるのは理解ができません。そして何度も言いますが、ビジネス的にも間違っています。なぜ返品リスクのないところに納品しないのでしょうか。》
《そしてなによりも読者のことを考えていません。たのしみにしていた(からこそ発売前から予約をした)本が入荷しない。SNSをみたら都市部の大型書店には山積みになっている。怒って当然です。》
《本屋は意思を持って仕入れた本が入荷する、版元は意思を持って発注してくれた本を納品したらお金が入る、読者は意思を持って予約をした本が手に入る。これでみんなハッピーじゃないですか。なぜそれを自分から手放すんですか。》
《これは筑摩書房に限らずすべての版元に考えて、というかいますぐに改善してほしい問題です。そして改善不可能なものではありません。実際にいわゆる「注文出荷制」を採用し運用できてる版元は多くあります。》
《そしてこれはいわゆる独立系本屋だけの問題ではなく、チェーン店にとっても重要な問題です。最後にもう一度簡潔に。客注分を無視して大型書店には山積みになるような納品をする、この論理破綻をやめてください。》
《とりあえず以上にします。版元側からの「できない理由」があるなら教えてください。本屋にはその理由が見えないので。理由がわかればともに改善しあえるかもしれないですし、必要以上に敵対することもなくなるはずです。「意味=理屈がわからないから怒っている」んです。よろしくお願いします。》
https://twitter.com/book_lighthouse/status/1438880404967022596

https://twitter.com/book_lighthouse/status/1438880434910232577
出版業界には多くの理不尽が未だ解決されないまま残っている。そうした理不尽が出版業界の多くの志をぶち壊していった現場を私は嫌というほど見て来た。何故、理不尽が残るのか? この問題でいえば版元が大取次や大手書店に良い顔をしたいからさ。
話題の新刊が刊行されるとタワー積みというバカをやる書店が例えば神保町にもある。私は、その書店がタワー積みを始めてから、一切、利用するのを止めている。それで余った本が、やがては小さな取次を通じて小さな書店に流れていく。たとえ買い切りといっても、タワー積みのような書店に商品を送ることを優先する。そうしないと最終的な実売率は上がらなくなってしまうと計算するからだろう。
小説家の盛田隆二がリプライしている。
《この書店さんの連続ツイート必読です
なぜ「買切りの本屋に客注分を納品せずに、返品可能な本屋に店頭分も含めてたくさん納品する」のか?
ぼくも出版社の編集者として18年働き、作家になって30年経ちますが、日本の出版流通には大変理不尽で不可思議なことが多くあります。矛盾の解決を望みます。》
https://twitter.com/product1954/status/1439091128708395011
翻訳家の岸本佐知子もリプライしている。
《出版に関わる誰もが読むべき、重要かつ切実なツリー。変化が必要。》
https://twitter.com/karyobinga/status/1439084889442115585
これはノンフィクション作家・川内有緒のリプライ。
《これは本当に重要な問題提起です。
著者のところにも本が入らないと言う悲痛な声は届くので、個人的に知ってるところは著者買取で書店さんにに送ったり。でもそんなのおかしいし、不公平だし、長距離的解決策ではない。
出版の未来のためにも解消してもらいたい問題なのです。》
https://twitter.com/ArioKawauchi/status/1439073488698937351
編集者・北條一浩もツイートしている。
《『東京の生活史』の件。これ、特定の誰かだけを(例えば筑摩書房さんだけを)悪者にするようにはなってほしくないと思います。筑摩書房さんには対策およびメッセージをぜひお願いしたいけれど、これは出版の世界にずーっとある構造的な流通の問題。つまり出版関係者全員の課題。》
https://twitter.com/akaifusen/status/1439033665820889092
仲俣暁生は相変わらず運動神経が良い。仲俣は次のような引用ツイートを発表している。そう、朝日新聞などは講談社がアマゾンと直取引を始めたなどという記事を書いている暇があるのであれば、こういう「小さな声」こそ拾い上げるべきである。仲俣と全く同感である。小さいけれど重いということがわからないのであれば記者失格だろうに。筑摩書房の連中は耳をかっぽじいて聴くが良い。
《前後のスレッド必読。ひどくないか。本の趣旨と真逆の弱肉強食の世界を容認するのか。小さな者の上げる声を無視して。》
《新聞はアマゾンと講談社がなんちゃらという「業界話」だけでなく、こういう「小さな声」をこそ拾い上げてほしい。本の流通はいま、もうここまで酷いことになってるのだ。》
《自分は弱者だから、自分が生き延びるためには自分より弱くて小さいものを切り捨てます、というのが『東京の生活史』のメッセージなの?》
《とりあえず筑摩が公式に対応すると発言したのでこの件は落着ですね。しかしこれは構造的なことなのだから業界挙げて「真摯に」考えてほしいです。筑摩にはその旗も振っていただきたい。》
https://twitter.com/solar1964/status/1438979685539405826

https://twitter.com/solar1964/status/1439064789272043527
仲俣も引用しているが、筑摩書房は問題の重さについては理解しているのだろう。
公式アカウントは本屋lighthouse幕張支店のツイートに対して最初に次のようにリプライしている。
《本屋lighthouseさまのツイートに関しまして、現在経緯を確認しております。至急この件に関してしかるべき対応をいたします。
本を求めてくださる方のお手元に書店さまとともにきちんと届けていきたいと考えております。》
https://twitter.com/chikumashobo/status/1439045874978484225
本屋lighthouse幕張支店が筑摩書房に応じる。
《ありがとうございます。これが単発的=特殊な事例なのか、あるいは制度的な制限によるものなのか、そのあたりのことを検証していただけると、業界にずっとある澱みの解消に繋がるかと思います。版元-取次-本屋間によりいっそうの信頼関係を構築する1歩にしましょう。よろしくお願いします。》
《今回の件、根本にあるのは「これまでもずっとあった業界全体への不信をどうにかしたい」というものなので、決して「筑摩書房単体をぶっ叩きたい」というものではありません。ゆえに、名指しで批判したのは筑摩書房が批判に向き合う版元であることを期待したからでもあります。》
《いままでも同様のことは多くの版元-取次-本屋間で常に起きていますし、その都度名もなき書店員たちが「泣き寝入り」をしてきたからこそ、改善どころか(少なくとも業界外の人には)話題にもされずにいたわけです。》
《名指しで批判をするとその対象ならびに批判した側にもリスクがあります。たとえばこちらは小売なので、メーカーである版元に楯突く行為には恐怖もあります(だから多くの書店員が泣き寝入りもしくはぼやかした批判しかしなかった)。もちろんメーカーにも傷はつく。》
《ここで重要なのは「名指しでの批判はされていない」存在です。これまでも同様の事例は多発しているのに、批判を免れてきた存在がたくさんいる。これは主に先述したパワーバランスの問題(=批判したら本を仕入れられなくなるかもしれないという懸念)が原因ですが、》
《それにあぐらをかいてきた存在がいるわけです。なので最も変わるべき、批判されるべきはそちらであり、今回のことを業界関係者には「他人事」だと思ってもらっては困ります。「ここは批判しても聞く耳すら持たないだろうな」と判断されてる版元もある、ということです。》
《さらに言えば当店がこのような批判をできるのも、たとえ店が潰れても店主ひとりが困るだけだから、というのもあります。チェーン店勤務の人には「ほかの勤務者」に対する責任もありますし、自分の批判で店がどうにかなったらどうしよう、という不安から身動きが取れないこともあるでしょう。》
《ということで、筑摩書房ならびにほかの版元や業界関係者のみなさんに「期待」をしています。》
《念のため丁寧に書いておくと、筑摩書房なら批判にきちんと向き合ってくれるはず、という期待です。》
https://twitter.com/book_lighthouse/status/1439052191575076866

https://twitter.com/book_lighthouse/status/1439053972812091393
筑摩書房のリプライ。
《真摯に取り組みます。こちらこそ、よろしくお願いします。》
https://twitter.com/chikumashobo/status/1439048872228098057
「古本とビール アダノンキ(休業中)」の言う通りである。
《客注というのは、書店が注文をしたその先に「必ずその本を手に入れたいお客さんがいる」ということなのに。「本が売れない」と言う前にこの悪習を真っ先にどうにかしないと。買い切りなんだから何も問題ないじゃない!》
https://twitter.com/adanonki/status/1439014989499535362
これまた名店として知られている高崎市の新刊書店rebelbooksも本屋lighthouse幕張支店と同じ問題に直面している。
《当店も同様の状況です、筑摩書房さん改善をお願いします、発売前の買い切りの発注を受け付けてください。》
https://twitter.com/rebelbooksjp/status/1439014391987408904
谷中・ひるねこBOOKSが連ツイを発表している。
《『東京の生活史』流通問題について。当店は予約を受けていませんし、当事者ではありませんが、この問題は今回に限ったことでは無く、これまでも同じ事が繰り返され、そしてこれからも起こり得るだろうという点から、思うところを書きます。数年前まで版元営業&新刊担当をしていた人間としてです。》
《あくまでその当時の事なので、現在の状況、さらに版元によって事情が異なることはもちろん承知しています。まず、各書店からの受注は取次別にデータ(リスト)にします。見込みを大きく上回った場合、初版数を増やすか検討し、それが出来ないのなら当然書店からの受注を「削る」事になります。》
《この際、ナショナルチェーン本部からのまとまった数(本部一括数、あるいは支店別配本リスト)を削る事は現実的ではありません。期待の大きな新刊であるほど、「この先もたくさん売ってくれる」先方との関係を重視しなければならないからです。そうすると、必然的に個店の数を減らす事になります。》
《類書や既刊の実売数を元に調整をするわけですが、ある程度までいくと一律で1や2、あるいは5や10を機械的に減数しなければなりません。元々の発注数が少ないほど、この影響は大きくなります。そこに客注分が含まれているかどうか、担当者は特別な場合以外は知らないし、考慮されないのではないかと。》
《そして大取次にはある程度フリー分の余裕を持たせて配本数を提案しなければならないわけで、そうなるとワリを食うのは、子どもの文化のような小取次です。この時、調整担当者が(1)子どもの文化が買切だと知らない(2)買切なのは知っているが正味の関係で出したくない(3)単に大取次・大型書店を優先する、》
《という事があると、当然今回のような事態になります。業界の構造の問題は大きいとして、配本を調整する人、それをチェックする人の意識という属人的な課題と、受発注システムの問題、返品前提でもある程度配本しなければならないという、対取次、対大型書店の問題は分けて整理されるべきかなと。》
《今回どの段階で取次別の総受注数を把握したのか、そして刷り数をどう判断したのか(ニーズを上乗せする事は出来なかったのか?)など、外からは見えない社内的な要素も多いのでここまでにしておきますが、「なぜ書店の発注数が削られるのかわからない」という声を多く見かけたので、一応書きました。》
《すぐに改善出来る事としては(むしろ何故してこなかったのか)各版元が客注を可視化してその分を確保すること。その先は客注分のみでも買切に出来る仕組み作り、満数出荷出来るように初版数の決定プロセスを変える、そもそも注文出荷制にするなど、少しずつでも移行すべきだろうと個人的に思います。》
https://twitter.com/hirunekobooks/status/1439086605256380417

https://twitter.com/hirunekobooks/status/1439099572605751303
編集者・小林えみが次のように整理している。
《『東京の生活史』の流通で問題になったこと、ポイント整理。
(1)明らかな人気銘柄、書店は早い段階で予約をだしている→版元は印刷に間に合う
(2)流通からの減数連絡が昨日
大手優先で数だしてもらっていいんです。
ただ(1)と(2)のタイムラグに版元がちょっと気を利かすだけで今回の事態は回避できた。》
《ぜんぶの書籍に同じことはできないと思いますが、あきらかに人気銘柄なので部決の前に「子ども」にも「どのくらい予約入ってる?」は聞けたはず(おそらく7月時点)。またそれが委託なら版元に返品リスクがあるので慎重になっても仕方ないが、買切なので、単純に部数増対応で良い。》
《「ハリーポッター」のときに静山社は買切に踏み切った。
ベストセラーの市中在庫という資産が版元にとってリスクであることはよくわかる。
売りたい本の在庫コントロールは難しい。
・注文出荷制
・買切
・(委託)
のハイブリッド活用はもっと業界が取り組むべき。》
《紀伊國屋書店さんのこうした取り組みもありました。
紀伊国屋書店、村上春樹氏の新刊「買い占め」
https://nikkei.com/article/DGXLASDZ21I1N_R20C15A8EA2000/
↓そしてその続き
紀伊國屋書店 トーハンロジテックスと提携した直仕入物流を開始
https://kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20160802122528.html
変える努力はまだまだできる。》
《あと、注意したいのは、大手版元の怠慢や横柄、ではないということ。
ヒットメーカーですが、(恐縮ですけども)規模的には筑摩書房さんは中堅で、それゆえの大手ほどの手の回らなさを拝察いたします。
大手は一部はわかりやすく怠慢や横柄があり、一方で非常に細やかな版元に分かれる印象です。》
《「客注分をださないのは酷い」は、版元側がそれを客注か店売分かはお店の申告でしか判断できないので、難しいです。
それは、客注か否かではなく、買切か否か、で対応されることかと。》
https://twitter.com/koba_editor/status/1439016113858170880

https://twitter.com/koba_editor/status/1439052407590121475

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【文徒とは】 デイリー・メールマガジン「文徒」はマスコミ・広告業界の契約法人経営者にクローズドで配信されている。2013年より月〜金のデイリーで発行し続けており、2021年6月で通巻2000号を数える。出版業界人の間ではスピーチのネタとして用いられることが多く、あまりにも多くの出版人が本誌を引用するせいで「業界全体が〝文徒〟になっちゃったね」などと噂されることも。

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