文徒インフォメーション vol.16

Index------------------------------------------------------
1)【Book】よみがえる橋本治・高橋和巳・富澤耀実子
2)【Publisher】「もしドラ」の岩崎夏海は岩崎書店の編集者だった
3)【Advertising】出版社の広告ビジネスにとってのマンガ・アニメ
4)【Digital】今年のジャンプフェスタは幕張(リアル)とバーチャルの両開催
5)【Magazine】中吊り広告を生んだ阪急電鉄は何をNGにした?
6)【Marketing】「24時間テレビ」の敗因は「五輪疲れ」を忘れていたことだ
7)【Comic】文藝春秋・マガジンハウス、それぞれのマンガへの本気
8)【TV, Radio, Movie & Music】千葉真一、チャーリー・ワッツが逝った
9)【Journalism】怒りは五輪から甲子園・プロ野球へ
10)【Bookstore】ネットラジオ、出版活動も行う本屋・生活綴方に注目
----------------------------------------2021.8.23-27 Shuppanjin

1)【Book】よみがえる橋本治・高橋和巳・富澤耀実子

◎「ダ・ヴィンチニュース」は8月20日付で「18歳まで本を読まなかった編集者が、なぜ『10代のための読書地図』を作ったのか?」を発表している。本の雑誌社から「10代のための読書地図」が刊行されたが、同書の編集者・杉江由次は「炎の営業日誌」で知られている本の雑誌社の営業部部長だ。杉江は次のように語っている。
《私自身が18歳までまったく本を読んでなかったんです。なぜ読まなかったかというと、学校の先生や5つ離れた兄が「これを読んでないとダメだ」というように押しつけるように本を薦めてきたんです。それがとにかく嫌で、それに反発するようにして本を読まなかった。けれど18歳の時に、親友から「オマエだったら村上龍がいいんじゃないか」と薦められたのが『愛と幻想のファシズム』(講談社)という本で、それで本にハマってしまって、気が付けばいまでは出版社で働いているわけですよ。
そんな友だちが薦めてくれる本という視点は失わないようにして気をつけてこの本を作りました。》
https://ddnavi.com/interview/831841/a/

◎毎日新聞は8月20日付で「『いい人の押し売り』 “出禁常連”テリー伊藤氏が語るテレビ論」(大野友嘉子)を掲載している。テリー伊藤は次のように語っている。
《「番組にしても、コマーシャルにしても、今のテレビは無難さを追求するあまりに『いい人』の押し売りになっています。例えば、バラエティーやワイドショーなんかでタレントにコメントを求めると、ほとんどの人がいい人ぶったことしか言わない。当たり障りのない、優しさにあふれるコメントが多いですね。見ている方は、自分もその(いい人たちの)一員にならないといけないという気持ちになるんじゃないかな。視聴者のハードルを上げてしまっているように感じます」》
https://mainichi.jp/articles/20210819/k00/00m/200/149000c
本橋信宏が「出禁の男 テリー伊藤伝」をイースト・プレスから刊行した。
https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781619910

◎8月21日付毎日新聞が掲載している「今に重なる?東京オリンピックで注目集まった名著『失敗の本質』」で、相模女子大准教授の木本玲一は次のように語っている。
《週刊誌などが報じましたが、今回の五輪では、政治家の意をくむ人物や大手広告会社など特定の人物や組織に偏った組織運営がなされ、招致をめぐる不透明な金銭の流れや女性差別といったものを含んだ日本の文化が顕在化しました。それらは正されるべきもので、今回の出来事を失敗として捉えることで、それらが是正される契機が生まれるのではないかということです。スポーツだけでなく、経営学やスポーツマネジメント、社会学やメディアスタディーズ、さまざまな領域で取り組むポイントがあり、学際的、領域横断的な議論が必要だと思います。》
https://mainichi.jp/articles/20210820/k00/00m/040/090000c
木本の著書には「拳聖」と呼ばれるピストン堀口を通じた日本のボクシング史を俯瞰する「拳の近代――明治・大正・昭和のボクシング」(現代書館)がある。
http://www.gendaishokan.co.jp/goods/ISBN978-4-7684-5835-8.htm

◎毎日新聞は8月21日付で「村上春樹をめぐるメモらんだむ 読むと『書きたくなる小説とそうならない小説』そして戦争への持論」(大井浩一)を掲載している。6月下旬に刊行された村上と米文学者の柴田元幸の共著「本当の翻訳の話をしよう 増補版」(新潮文庫)における村上の発言が取り上げられている。
《・・・英国の作家、トマス・ハーディ(1840~1928年)の短編を集めた「呪われた腕 ハーディ傑作選」(河野一郎訳)について、村上さんは「読んでいると小説を書きたくなる小説と、そうならない小説がある」とし、「ハーディを読むと書きたい気持ちがかき立てられる」が、同じ英作家でも18~19世紀のディケンズやジェーン・オースティンではそうならないと述べ、こう話す。
「(ハーディの作品は)細部が心に残るんです。細部って、人をかきたてるんです。僕の場合は小説を書きたくなる。ディケンズとかオースティンの作品って、全体として力を持っているんであって、細部がいいっていう作家じゃないでしょう」》
村上春樹の小説も細部にこだわる。より正確に言うのであれば細部にこだわることによって全体に繋がっているのだ。
また、「小説というのは耳で書くんですよ。目で書いちゃいけないんです」と語っているが、そんな村上であればこそ中上健次について「戦後の作家でもっとも文学的に力強い作家は誰かと訊かれると、まず中上健次(一九四六―一九九二)の名前が僕の頭に浮かぶ」と評価しているのである。中上健次もまた「路地」の語り部オリュウノオバの口承に耳を傾けることで傑作「千年の愉楽」を書き上げている。
https://mainichi.jp/articles/20210820/k00/00m/040/364000c

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デイリー・メールマガジン「文徒」はマスコミ・広告業界の契約法人にクローズドで配信されている。2013年より月〜金のデイリーで発行し続けており、2021年6月で通巻2000号を数えた。出版業界人の間ではスピーチのネタとして用いられることが多く、あまりにも多くの出版人が本誌を引用するせいで「業界全体が〝イマイ社長〟になっちゃったね」などと噂されることも。

マスコミ・広告業界の契約法人に配信されているクローズドなデイリーメールマガジン「文徒」をオープン化する試み。配信されるメールのうち、出版・…

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