妹とは母親を介してしか喋れない

昔から私と妹は仲の悪い姉妹だった。多分一時期の若貴兄弟に匹敵すると思う。父親の極端な妹贔屓が拍車をかけたことは間違いない。家族の中で私はいじられキャラとして若干馬鹿にして笑いを取って良い風潮があるので、妹は私に対して強く出る。妹の方が姉みたいなもんだと私は思っている。あと私は妹に対して姉らしく面倒を見てやるということがまるでなかった。となりのトトロを見る度に「私はサツキちゃんみたいな甲斐性のある姉ではなかった」とかつての自分を責めている。

ここ最近は私も妹も大人になって久しいので、お互いに仲良くしたいと思っている。しがしどうやって仲良くしたらいいか分からない。私が実家に泊まったら一緒に喫茶店のモーニングに行く、という決まり事をしていた時があったけど、妹と上手く喋れない。何を喋っていいか分からない。唐突だけど、アナと雪の女王という映画で、エルサが長年散々アナの遊びの誘いを断っていた割には戴冠式で親しそうに喋るシーンがあるけど、普通あんなに上手く行くかな。私は時を超えて何事もなかったように親しく話せるあの姉妹がちょっと羨ましい。私がエルサだったら(エルサじゃなくても現に)妹に何を喋っていいか分からないし、多分アナは姉に懐かない。

母は気配りの達人で他人に尽くすタイプだが、子育てではそれが悪い方に転んで過保護・過干渉になってしまった。私は「ソフト毒親」と呼んでいる。私はさすがに経済的に自立した娘の趣味や服装、行動などに対して逐一口を出したり(従わないと機嫌を損ねる)、勝手に部屋や車の掃除を始めたりするのはおかしいと気付いて母とは一定の距離を置いているが、妹はこのおかしさに多分気付いていない。妹のものの考え方や行動、決断は7割くらい母に支配されていると思う。妹は外見も母そっくりなのでどちらかというと母と妹が姉妹みたいだ。友達親子というのがしっくりくると思う。

例えば母が私の何かが気に食わなくて母が文句を言ってきた場合、妹は条件反射で参戦する。私の味方には絶対になってくれない。母の意見が絶対に正しいし、かつ私は家族の中でいじめていい人物だからだ。

あと先述のモーニングについても残念なことがある。家に帰ってきてから、2人の会話を母に報告するのだ。そして私の話の中でバカにして母と笑い合える部分がある場合そうする。せっかく私は「いい雰囲気でご飯を食べて帰ってこれた、少し仲を縮められた」と思ってもそんなことをされては台無しだ。

妹が結婚した時に、今まで姉として何もしてあげられなかったのでご祝儀を多めに渡した。妹は少し驚いていた、という話を母から聞いた。私は妹に幸せになって欲しかった。

程なく妹は離婚した。離婚の報告も母から聞いた。母は妹がせっかくご祝儀をたくさんもらったのに申し訳ないと言っていた、という旨を私に伝えた。後日妹に会う機会があり、母が妹に「何か言うことはないの?」と話を振ったが、妹はお茶を濁してしまった。

断っておくが私はご祝儀を奮発したことについて後悔はしていないし、妹の決断は応援したい。ただ、なんでいつも妹と直接話せないんだろう。なんで妹と私の間の全ての会話は母を介さないといけないんだろう。毎回悲しい気持ちになる。これは妹が母に依存し切ってしまっている以上、どうしようもないことかもしれない。また、妹は私が望むほど私と仲良くなりたいと思っていないのかもしれない。

実家とは縁を切ろうと思うことも過去には何度もあったが、今のところは一大決心を迫られるような事件が特にない状態が続いているので、実家からの催促によりたまに帰省する程度になっている(母が「定期的に実家に帰ってくるのは子供として当たり前」だと思っている)。私は母が望むような仲のいい家族を表面上演じてはいるが、なんでうちは普通じゃないんだろう、側から見たら仲良し一家に見えるかもしれないけど(多分我々家族を知る親族だって、近所のひとだって、そして私以外の当人ですら全員そうだと思ってる)なんでこんなに家族の構造が歪なんだろうと常々思っている。もちろん妹に対しては私の面倒見の悪さも大きな原因だろう。それについては反省している。

私は我が家のことしか分からない。他のご家庭のごきょうだいやお母様も意外とこんな感じなんだろうか?


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