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津軽でアートと歴史に触れて① 弘前れんが倉庫美術館

9月の連休を利用して、青森県の津軽地方にある、弘前市、その隣の大鰐(おおわに)町まで、一泊旅行に行ってきました。

弘前市といえば、さくらまつりで有名な都市、春に何度か訪れたことはありますが、秋(というか残暑)の訪問は初めて。
しかも今回の旅のメインは、弘前れんが倉庫美術館という建物の訪問です。

2020年に開館したばかりのこちらの美術館、青森県で3番目に誕生した美術館となります。

私達の訪問時、「もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?」奈良美智展弘前 2002-2006 ドキュメント展 が絶賛開催中でした。

美術館正面玄関。約一世紀前に工場として建てられたものが、文化施設として現代に蘇りました。
れんが造りって趣があり素敵ですが、精巧で尚且つ手間暇がかかっていて、当時携わった方に対して敬服の外はありません。

過去に開催された、奈良美智さんの展覧会の模様を伝える展覧会、という一風変わったイベントで、その時の様子を撮影した写真と、当時の作品の展示がメインとなっています。

会場となったこのれんが造りの建物、元は100年前に酒造工場として建設されたもので、美術館として生まれ変わる以前の近年は、工場の稼働を停止し、倉庫として活用されておりました。

歴史的価値があり、地域のシンボルにもなり得そうなこの建物を、美術品展示などの文化施設として再活用する要望が市民の中であったようですが、それが本格的となったのは、2000年頃の倉庫のオーナーが、弘前市出身の現代美術家 奈良美智さんに、こちらで展示を開催してみませんかとオファーしたことがきっかけだったそうです。
その成功が後押しとなり、倉庫はその後美術館に生まれ変わるため始動したそうで、市に接取された後、リニューアルされ現在に至ります。

奈良さんの、要望に応えて地域に貢献しようという地元愛と、当時美術館という整備された場所でなかったにも拘わらず、きちんと形を整えて展示を成功させよう、というボランティアさん達の熱意が、この展覧会から伺われます。

その時に作成されたフライヤーや、いまや希少価値のグッズがとても可愛くて、思わず手に取りそうになりますが、それくらい、展示物が近いです。
下手すぎて写真が掲載できないのと、私の説明ではとても良さが伝わり切れないので、是非足を運んでみてください(勧め方が雑)。

写真撮影OK(ただしフラッシュはNG)という、非常にお得なこちらの展示会、来年の3月21日まで開催中です。

2階は、奈良さんにインスピレーションを与えたレコードや本の展示スペース。
奈良さんは高校時代、三沢基地から流れる米軍ラジオの音楽を熱心に聞いていたそう。
新旧文化交差する土壌なんですね、弘前市。

奈良さんの作品は、青森県立美術館と、十和田市現代美術館でも鑑賞したことがありますが、奈良さんの描く女の子は、憂いを帯びた静かな表情だったり、何かを考えているような姿が多い、というのが私の持つ印象です。
その作らない自然な雰囲気が好きで、自分の中のインナーチャイルドを感じさせ、いつまでもその絵を見ていられるほど大好きです。
きっと私はもっと年を取っても、たまにその絵を見返したくなるんだろうな。

美術館の話に戻りますが、車で来場の際、提携駐車場を利用すると、駐車料金の補助代わりに観覧料が百円引きとなります。
自家用車でやってきた我々にはありがたかったのですが、出庫の際、元の駐車料金が激安だったのには驚きました。
弘前市民の皆様が羨ましいです。

徒歩1分の場所には、弘南鉄道 弘前中央駅舎。
こちらもレトロな建物で、とても雰囲気がいいのですが、JR弘前駅とは直結しない線だそうで、駅からこちらへ来るには、バスなどの交通機関を利用することとなります。
けれども、2両編成の可愛らしい電車が、倉庫と芝生を背にした駅舎にゆっくり近づきホームに入る様子、まるで古い映画の1場面のようで、素敵な風景です。


美術館には、同じくれんが倉庫をリノベしたカフェ・ショップが隣接。
そちらで頂いた、津軽ロイヤルリンゴジュース、とても美味しかったです。
青森リンゴを使ったジュース、味が濃いので大好きで、お勧めです。
先ほどHPで知ったのですが、こちらのカフェは結婚前の両家の顔合わせの場所としてもよく利用されているようで、素敵な出会いが始まる場所として、ぴったりだと思いました。

この日の美術館訪問、勿論奈良美智さんの展覧会も目当てでしたが、主な目的は、この倉庫美術館そのものを見ること。
建築学を専攻する姪が、向学のためにこちらに是非行ってみたいというので、我々夫婦と義母もご相伴させて頂きました。
大学で学ぶ傍ら、有名建築家の建造物をその目で見るため、彼女は休みの日はあちこち出かけているそうで、勉強熱心さにこちらの頭も下がります。

私は今まで、旅行といえばイベントが目当てでしたが、今回のように建物そのものに焦点を当てて巡る旅、恐らく自分史上初めてで興味深かったです。

ガチガチ文系人間の私は、建築と言えば、新しく建てるもの、というイメージしか湧かなかったのですが、今回訪問したれんが倉庫のように、古く歴史あるものを後世まで継承するような建築もあるのだ、ということもこの旅行をきっかけに改めて知り、とても勉強になりました。
そして、目の前に100年前のれんがが!なんて嬉しくなって、あちこちベタベタ触ってしまいました(あまり良くないですね)。

だけど、口では古き良き歴史を残していこうというのは簡単ですが、当時の材料と雰囲気を生かしながら、現代の安全性とセンスを加味しつつ建物を存続させる、という技術も相当なものだと思います。

やはり素敵な場所には人が集い、そこで何か素敵な事を人は始めたがるもの。
そういった場所づくりの道に一歩踏み出した姪っ子を誇りに思うし、叔母の立場で私は応援しているのですが、何せ親戚にも知り合いの中でも、建築の道に携わるのは姪が初めて。

彼女の親である義妹夫婦は、勿論応援はすれども、うまくアドバイスが出来ず見守るだけ、というのがもどかしい、という思いも吐露しておりました。やはり人の親というのは、子どもが大きくなっても気掛かりで、いつまでたっても安心できないのかな、なんて私は思いを馳せたり。

私の心の中でも、色んな考えや気持ちが撹拌されて、浮かんできたものがあった旅でした。

次の記事では、大鰐町の旅館について書こうと思います。
ちなみにこの日のおもちは、ペットホテルでお世話になりました。









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