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Impression #2 「東京百景」

 私には好きな作家さんがいる。その作家さんがはじめての商業出版をして、対談イベントを行っていた。たまたまお仕事がお休みだったので、友人の結婚式の前日なのにも関わらずいそいそとイベントに向かった。
 はじめて、イベントに足を運びたくなるほど好きだと思った作家さん。その作家さんが大切にしている一冊が「東京百景」であった。好きな人が、大切にしている。読まない理由がなかった。 
 緩急ある文章が癖になる。比較的さらさらと読み進めていたのだが、ずっしりとくる景色があった。七十六、池尻大橋の小さな部屋である。本を読み終えると他人の感想を読み漁るのが好きなのだが、多くの人がこの景色に立ち止まっている。私も同じように立ち止まる。
 九十九、昔のノートはたまらなくて何度も読んだ。何度も何度も読んで、忘れないように付箋をはじめて本に貼った。
 最後の代田富士見橋の夕焼けはずるいと思った。芸人のコンビという関係って同僚以上の何かがあると思う。私には、多夫多妻制が許されない日本で合法的に伴侶以外の人生のパートナーを得る1つの方法がコンビ結成なのではないかと思う。芸事はできないけど、誰かとコンビ結成をしたくなった。
 本を読んで、どうしても今の自分のためではない誰かのための本なんだなと感じて寂しくなる時が時々ある。読了後、寂しくならずに熱を持ってこうして文章を綴れていることが、好きな作家さんにとって大切な本が私にも染みていることが、少しだけ嬉しく思う。

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