業務プロセスとデータの枠組み3:需要予測AI

業務プロセスとデータの枠組み3:需要予測AI

分析屋の下滝です。別連載で「DXとマーケティング」を書いています。

この新しいシリーズでは、業務プロセスとデータとの関係を中心に、データ活用を考えるのに役立つような枠組みを考えていきたいと思います。最終的には、データ活用の典型的な事例を集めたパターンカタログを作成します。

今回は、売上需要予測をAIで改善する例を用いて、枠組みの表現力を確認します。

過去の記事

第1回はこちら。集計と報告び業務を枠組みで表現しました。
第2回はこちら。需要予測業務を枠組みで表現しました。

これまでの話

これまでの2回は、以下のような単純な枠組みからスタートしました。

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そして、この枠組を使い、以下の業務プロセスを表現しました。
・「実績数字の集計と報告」という業務プロセスとその業務プロセスの改善
・「需要予測業務」という業務プロセス

最終的には、以下を学びました。そして、この連載の方向づけが少し明らかになりました。4つの視点を意識した連載になりそうです。
・汎用的な要素と特化した要素の視点
・要素の評価の視点
・要素の変化の視点
・要素の変化のパターンの視点

汎用的な要素と特化した要素の視点:まず、枠組みとして要素を明示的に表すことで、体系的な視点が得られるようになりそうです。汎用的な概念として以下は今の所は存在しそうです。
・「プロセス(業務プロセス)」
・「プロセスへの入力」
・「プロセスの出力」
・「プロセスの実行者」
・「プロセスの実行において使用されるツール」
なお、これら汎用的な概念はまだ枠組みでは明示的には表現されていません。

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そして、これら汎用的な概念(要素)は、より特化した具体的な要素として表現できそうです。たとえば「プロセス」は「集計と報告のプロセス」となります。

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要素の評価の視点:そして、それぞれのより特化した具体的な要素において、どのような課題や問題が発生しそうかを評価するような体系的な視点が得られます。たとえば「レポートをもとにした意思決定プロセス」を評価すると「リアルタイムでの集計容易性」という評価軸と、容易性が低いという問題が得られると考えられます。「レポート作成者」といった特定の要素ではなく、各要素を評価する、という点が重要です。なぜなら、データ活用がうまくいかない理由があるとするなら、その特定の要素だけが原因とは限らないためです。

この評価の視点を含める理由は、議論としては少し暗黙的ですが、我々は暗黙的により良いプロセスを目指している、という前提があるためです。たとえば「レポートをもとにした意思決定プロセス」での「リアルタイムでの集計容易性」が低い問題を、「ダッシュボードをもとにした意思決定プロセス」で置き換えることで、この問題を解決することは、より良いプロセスを目指している、と言えそうです。

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要素の変化の視点:次に、現段階での枠組みでは、十分に強調して表現されていませんが、「世界は変化する」という視点を持てるかもしれません。もう少し具体的に言えば、特定の目的を達成するための業務プロセスは、必ずしも永続的でない、と言えそうです。「良いプロセスを目指す」中で、特定のプロセスが現状のプロセスを置き換えるようなことが起こります。また、プロセスが置き換える準備ができているかどうかは、外部環境の状況によります。たとえば、十分に使えるようなダッシュボードツールが存在しなければ、プロセスの置き換えはできません。

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要素の変化のパターンの視点:同じく、現段階での枠組みでは、十分に強調して表現されていませんが、要素の変化には繰り返し発生するようなパターンがあるという視点を持てそうです。たとえば、「レポートをもとにした意思決定プロセス」は「ダッシュボードをもとにした意思決定プロセス」で置き換える、というのは、多くの企業で発生しようなパターンです。

このようなパターンが発生するのは、特定の抽象度での問題が繰り返し発生するためだと考えられます。問題が繰り返し発生するならば、その問題を解決するための方法も繰り返し発生すると考えられます。

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まとめると、以下のような原理があると考えられそうです。
・汎用的な要素の視点を持つことで、考えられなければならない範囲が決まります。そして、汎用的な要素は特化して表現できます。特化してより具体的に考えることで、その範囲内で要素の評価を行えます。要素の評価の結果、問題があると分かった場合、要素の変化が起こります。要素の変化には、パターンがあります。

そして、原理に基づき、次のような方法論を検討できます。
・いくつかのパターンが十分に得られたのであれば、そのパターンを適用できる状況を把握し、状況が一致するならばそのパターンを適用することでより適切な状況に向かって改善していくという流れが考えられます。

最終的には、特定の業種や部門で使えるデータ活用のパターンカタログが作れるかもしれません(参考:パタン・ランゲージ)。

今回の話

今回もこの枠組みが、より具体的な現実をうまく表現できるか試してみます。前回と同じく、デジタルガレージの渋谷直正氏の記事の例を試してみます。

データ分析をしていいことは何? デジタルガレージ渋谷氏が解説

渋谷氏によれば、データ利活用の道筋は大きく分けて以下の3つがあるとのことです。詳しくは記事を参照してください。
1.既にデータを使っている業務を、より効率化・高度化する
2.現在は勘や経験に基づいて行っている業務を、データを使って効率化・高度化する
3.データを使うことで、新たなサービス、ビジネスを生み出す

今回は1の続きについて考えていきます。1の例として以下があげられています。
・毎月の経営会議や営業現場における実績数字の集計と報告
・一部の部署における売上需要予測

1つ目は第一回目で取り上げ、枠組みの表現力の確認のために使いました。

2つ目の前半は前回取り上げました。今回は後半を取り上げます。

渋谷氏の解説を再掲します。

また単純な集計ではなくもう少し高度なデータ活用、例えば需要予測などを行う部署の業務も、最新のAIのアルゴリズムを適用させることで精度向上が見込めるかもしれない。職人的な社員の属人能力に頼っていた予測モデルを、誰にでも再現できるようにひもといてホワイトボックス化することで、そのノウハウを真の意味で企業に根付かせられるという点で有効なデータドリブン施策だ。このように既にデータを使った意思決定業務であっても、それを効率化・高度化する余地は大きく、新しいことを始めるのに比べて取り組みやすい領域のため、最初に取り組むのがいいだろう。

前回は、この解説から以下の要素を抽出しました。
・「需要予測などを行う部署の業務」
・「最新のAIのアルゴリズム」
・「精度向上」
・「職人的な社員の属人能力に頼っていた予測モデル」
・「誰にでも再現できるようにひもといてホワイトボックス化」
・「そのノウハウを真の意味で企業に根付かせられる」
・「既にデータを使った意思決定業務」
・「それを効率化・高度化する」

そして、これら要素を、以下の枠組みの汎用的な要素をもとに整理しました。
・「プロセス」
・「プロセスへの入力」
・「プロセスの出力」
・「プロセスの実行者」
・「プロセスの実行において使用されるツール」
・上記の各要素に対する評価(枠組みでは煩雑になるため表現しない)

以下は、整理した要素です。

・「需要予測などを行う部署の業務」
 ・「部署」がある。「プロセスの実行者」に対応するかは検討。
 ・「部署の業務」がある。「プロセス」に対応するかは検討。
 ・「需要予測業務」がある。「プロセス」に対応。
 ・「需要予測業務の実行者」がいる。「プロセスの実行者」に対応。
・「職人的な社員の属人能力に頼っていた予測モデル」
 ・「需要予測モデル」がある。「プロセスの出力」「プロセスへの入力」「プロセスの実行において使用されるツール」に対応。
 ・「需要予測モデル作成者」がいる。「プロセスの実行者」に対応。
 ・「需要予測モデル」の評価として「属人性」がある。「評価」に対応。
・「精度向上」
 ・「需要予測業務」の評価として「精度」がある。「評価」に対応。
・「誰にでも再現できるようにひもといてホワイトボックス化」
 ・「需要予測業務」の評価として「再現性」がある。「評価」に対応。
・「最新のAIのアルゴリズム」
 ・「AIのアルゴリズム」がある。「プロセスの出力」「プロセスへの入力」「プロセスの実行において使用されるツール」に対応。
 ・「需要予測ためのAIのアルゴリズム」がある。「プロセスの出力」「プロセスへの入力」「プロセスの実行において使用されるツール」に対応。
 ・「需要予測ためのAIのアルゴリズムを使う業務」がある。「プロセス」に対応。
・「そのノウハウを真の意味で企業に根付かせられる」
 ・「企業」がある。何に対応するのかは検討。
 ・「企業」の評価として「ノウハウの企業所有」がある。評価ではあるが、何に対応するのかは検討。
・「既にデータを使った意思決定業務」
 ・「意思決定業務」がある。「プロセス」に対応。
 ・「データを使った意思決定業務」がある。「プロセス」に対応。
・「それを効率化・高度化する」
 ・「データを使った意思決定業務」の評価として「効率性」「高度程度」がある。「評価」に対応。

前回は、「誰にでも再現できるようにひもといてホワイトボックス化」までを表現しました。

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今回は、残りの要素を枠組みで表現していきます。

AIによる需要予測

・「最新のAIのアルゴリズム」
 ・「AIのアルゴリズム」がある。「プロセスの出力」「プロセスへの入力」「プロセスの実行において使用されるツール」に対応。
 ・「需要予測ためのAIのアルゴリズム」がある。「プロセスの出力」「プロセスへの入力」「プロセスの実行において使用されるツール」に対応。
 ・「需要予測ためのAIのアルゴリズムを使う業務」がある。「プロセス」に対応。

ではこれら特定した要素を、枠組みで表現していきます。

まずは「AIのアルゴリズム」と「需要予測ためのAIのアルゴリズム」の関係です。「需要予測ため」とつけることで、後者は前者を特化したしたものであると考えられます。このような抽象化・一般化の関係を考えること利点はあるでしょうか。ここではいったん無いと考えます。

次に「AIのアルゴリズム」に関しては以下のように大きく2つのパターンでの表現があると考えました。
1.前回作った「需要予測モデル作成プロセス」を置き換えるパターン(渋谷氏の記述のイメージに対応)
2.前回作った「需要予測モデル作成プロセス」と共存するパターン

まずは、前回作った「需要予測モデル作成プロセス」と置き換えた形となります。

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「需要予測ためのAIのアルゴリズムを使う業務」は「AIを用いた需要予測モデル作成プロセス」として呼び方だけを変えました。

「AIアルゴリズム」はツールとしました。どうであればツールとみなすべきかは議論する必要があります。

プロセスの出力である「需要予測モデル」はそのままの抽象度としましたが、具体化することの利点はあるかもしれません。

関連する要素を、枠組みの汎用要素の観点で以下でまとめました。

・プロセスへの入力:データ
・プロセスの出力:需要予測モデル
・プロセス:AIを用いた需要予測モデル作成プロセス
・プロセスの実行者:AIを用いた需要予測モデル作成者
・プロセスの実行において使用されるツール:AIアルゴリズム

これまでの記事で見てきたのと同じく、枠組みからは以下のように「AIを用いた需要予測モデル作成者プロセス」の評価に関係する要素が特定できそうです。
・プロセスへの入力:「データ」に問題がある。たとえば、間違っている。
・プロセスの実行者:「AIを用いた需要予測モデル作成者」に問題がある。たとえば、AIアルゴリズムに関する知見が足りない。
・プロセスの出力:「需要予測モデル」に問題がある。たとえば、予測精度が悪い。
・プロセス:「AIを用いた需要予測モデル作成プロセス」に問題がある。たとえば、予測結果を出すまでに時間がかかりすぎている。

続いて、「需要予測モデル作成プロセス」と共存するパターンです。

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プロセス間の関係が変わっただけで、「AIを用いた需要予測モデル作成プロセス」に関係する要素自体は同じです。では違いはなんでしょうか。以下の状況があると考えました。
状況1.「需要予測モデル作成プロセス」のすべてを置き換えられない状況があるのでなないか。たとえば、一部のモデルは、AIに適さない。
状況2.「需要予測モデル作成プロセス」をAIで置き換えられるとしても、すべてはすぐには置き換えられず、置き換える過程の状況があるのではないか。たとえば、利用しているモデルの数が多い。

これら2つの状況はデータ活用とその枠組という視点からは、どのように考えられるでしょうか。データ活用は、プロセスの構造変化に関わるプロセスであると言えるかもしれません(データ活用以外も当てはまるような捉え方です。たとえば業務改善)。

プロセスの構造変化として、次のパターンがありそうです。
1.プロセスの抽出のプロセスデータ活用は、既存プロセスから新しいプロセスを発生させる(状況1)。
2.プロセス置き換えのプロセス:データ活用は、既存プロセスから新しいプロセスに向けての置き換えの過程のプロセスを発生させる(状況2)。

以下は、プロセス抽出のプロセスです。新しいプロセスの作成である、ともいえそうです。プロセスを入力として受け取り、プロセスを出力します。

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プロセス置き換えのプロセスです。新しいプロセスの作成と古いプロセスの削除の組み合わせのプロセス、ともいえそうです。

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これらの新たなプロセスを導入したり、無くしたりすることは、現実的にもデータ活用の実現を難しくする要因になると考えられます。働き方を変えることであり、新たな試みのため失敗するかもしれないためです。

課題として以下が残りました。
・要素の一般化・抽象化の関係をどのように扱うか。
・どうであればツールの要素として見なすのか。
・プロセスを置き換えること自体のプロセスをどのように扱うか。状況1と2の違いをどのように扱うか。

まとめ

今回は、AIによる需要予測を、枠組みの中で表現できるかを試しました。

新たな視点として、「データ活用は、プロセスの構造変化に関わるプロセス」ではないかということを得ました。

次回は、今回の残りを同様に表現していきます。

・「そのノウハウを真の意味で企業に根付かせられる」
 ・「企業」がある。何に対応するのかは検討。
 ・「企業」の評価として「ノウハウの企業所有」がある。評価ではあるが、何に対応するのかは検討。
・「既にデータを使った意思決定業務」
 ・「意思決定業務」がある。「プロセス」に対応。
 ・「データを使った意思決定業務」がある。「プロセス」に対応。
・「それを効率化・高度化する」
 ・「データを使った意思決定業務」の評価として「効率性」「高度程度」がある。「評価」に対応。

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