DXとマーケティングその52:5Aカスタマージャーニー【中編】
前編の続きです。
訴求(appeal):ブランドメッセージを処理し、特定のブランドに引き付けられる。
上記から顧客の動きに関わる箇所を抜き出します。
1.顧客は、自分が触れたすべてのメッセージを処理する
・短期記憶をつくる
・長期記憶を増幅する
2.顧客は、少数のブランドのみに引き付けられる
3.顧客は、引き付けられたブランドに対し、ランク付けを行う
その他の表現としては以下がありました。
4.ブランドに引き付けられる
5.検討対象にする少数のブランドを選ぶ
この2つは、2と3のプロセスで5を追加して表現したものであると捉えました。
したがって、検討するのは次の4つになります。
1.顧客は、自分が触れたすべてのメッセージを処理する
・短期記憶をつくる
・長期記憶を増幅する
2.顧客は、ブランドに引き付けられる
3.顧客は、引き付けられたブランドに対し、ランク付けを行う
4.顧客は、検討対象にする少数のブランドを選ぶ
では、それぞれを「行動」として表せるでしょうか。
1.顧客は、自分が触れたすべてのメッセージを処理する
ここでは、メッセージとは、ブランドに関わるものを意味すると考えられます。前の段階の認知段階では、ブランド広告や、他者から聞かさせたブランド情報、自身の過去の経験を思い出すことがありました。
メッセージを処理するとは、ここでは記憶に関わるものとして表現されています。この記憶は、「行動」としては表せないと考えました。記憶することは、「体験」を出力しないと考えられるためです。
短期記憶と長期記憶を分けても良いのですが、ここでは単に「記憶」という要素として表すことにしました。
行動体験モデルを次のように拡張しました(左側)。
「ブランドに関する情報」は、「記憶」へのインプットとなります。「記憶」のアウトプットは、「ブランドに関する記憶」であるとここでは表現しました。
2.ブランドに引き付けられる
この「引き付けられる」というプロセスは、「行動」としては表せないと考えました。引き付けられることは、「体験」を出力しないと考えられるためです。
この「引き付けられる」というプロセスを一つのプロセスとして表現するのかが悩ましく思えましたが、素直に「引き付けられる」という要素で表現することにしました。
行動体験モデルを次のように拡張しました(左側)。
「ブランドに関する記憶」は、「引き付けられる」へのインプットとなります。「引き付けられる」のアウトプットは、「引き付けられたブランド」であるとここでは表現しました。
3.顧客は、引き付けられたブランドに対し、ランク付けを行う
この「ランク付け」というプロセスは、「行動」としては表せないと考えました。ランク付けすることは、「体験」を出力しないと考えられるためです。
行動体験モデルを次のように拡張しました(左側)。
「引き付けられたブランド」は、「ランク付け」へのインプットとなります。「ランク付け」のアウトプットは、「ランク付けされたブランド」であるとここでは表現しました。
4.顧客は、検討対象にする少数のブランドを選ぶ
この「検討対象を選ぶ」というプロセスは、「行動」としては表せないと考えました。検討対象を選ぶことは、「体験」を出力しないと考えられるためです。
行動体験モデルを次のように拡張しました(左側)。
「ランク付けされたブランド」は、「検討対象の選択」へのインプットとなります。「検討対象の選択」のアウトプットは、「検討対象に選択されたブランド」であるとここでは表現しました。
検討対象の選択のプロセスの前に、必ずしも「ランク付け」のプロセスが必要というわけではないかもしれません。
調査(ask):好奇心に駆り立てられて、追加情報を調べる。
上記から顧客の動きに関わる箇所を抜き出します。
・顧客は、好奇心に駆り立てられて、魅力を感じたブランドについて積極的に調べる。
・顧客は、友人や家族から情報を得る。
・顧客は、友人に電話をしてアドバイスを求める。
・顧客は、少数のブランドを自分自身で評価する。
・顧客は、オンライン上の製品レビューをチェックする。
・顧客は、さらに情報を得ようとする。
・顧客は、コールセンターに電話する
・顧客は、販売員と話す。
・顧客は、価格を比較する。
・顧客は、店頭で製品を試す。
・顧客は、店頭で製品を見て回る。
・顧客は、携帯端末でも情報を検索する。
では、それぞれを「行動」として表せるでしょうか。
ここでは、情報を得る多くの手段が表現されていますが、「行動」として表せると考えました。「行動」要素のもともとの定義を以下としているためです。
・行動:何らかの行動。たとえば製品を使用する、カスタマーサポートに電話をかけるなど。どのような行動をとるのかは、「動機」や「評価結果」の影響を受ける。
しかし、以下の二点の明確化が必要かもしれません。
1.「検討対象に選択されたブランド」という要素と他の要素との関係:これは、前段階での「検討対象に選択されたブランド」の要素が、この「情報を得る」という行動への前準備となっていると考えられるためです。
2.情報を得るという行動の結果としての体験:「情報を得る」という行動を行動の要素として考えると、行動の結果としての体験が、5Aでの次の段階である行動に適切に関係づけられるのかどうかは確認が必要です。
ここでは、1つ目を議論し、2つ目は、次節で議論します。
「検討対象に選択されたブランド」という要素は、モデルでの要素のどれかに当てはまるでしょうか。順番に見ていきます。
・物事:ある物や行い。たとえば、物理的に触れる製品、店員とのやりとり
など。
物理的ではないですが、物といえば物として考えられるかもしれません。
・評価項目:どのような視点で「評価」を行うのか。たとえば、使いやすさ。
評価項目ではないため、当てはまりません。
・評価結果:「評価」の結果。たとえば、使いにくい、面倒、価値がないなど。どのように評価する(みなす)のかは、見聞きしたことや、実際のこれまでの「体験や経験」に影響を受ける。
当てはまるかどうか判断が難しいです。
ただし、「検討対象かどうかのブランドであるかどうか」という評価項目に対して、「検討対象のブランドである」という評価結果という表現はできそうです。
評価したからといって、必ずしも、何かを選択したことにはならないように思われます。
もしかすると、「意思決定」というプロセスが必要なのかもしれません。この場合、「検討対象の選択」というのは「意思決定」の一種であり、「意思決定」の結果は、「意思決定結果」として表現できそうです。「検討対象に選択されたブランド」は、「意思決定結果」に対応すると考えられそうです。
・動機:「行動」するにあたり、理由や原因となるもの。たとえば、ある問題を解決したい、この製品が良さそうなのでもっと調べたいなど。
当てはまりません。
ただし、「このブランドのことをもっと知りたい」という動機は関係するかもしれません。
・行動するかどうかの判断材料:「ある行動をするかどうかの判断」をするにあたり、使うもの。たとえば、情報。
当てはまりません。
ただし、これには「ブランドに関する情報」がこの判断材料の一種として関係するかもしれません。
・行動するかどうかの判断結果:「行動するかどうかの判断」の結果。ここでは単に、する、しないの結果。
当てはまりません。
ここまでの議論で有望なのは、「意思決定」というプロセスを新たに導入すること、と考えられそうです。
行動体験モデルを次のように拡張しました(上部)。認知から訴求までの流れの要素は、右側に配置し直しました。
追加した要素は以下です。
・選択肢: 意思決定の対象となる、何らかの選択肢の集合を表す。たとえば、A、B、Cのブランドの一覧。
・意思決定: 選択肢の集合から、選択することを表す。たとえば、A、B、Cというブランドの中から、Aを選ぶ。。
・意思決定結果: 選択された結果を表す。たとえば、Aというブランド。
ここでは、「選択肢」をアウトプットとするようなプロセスは、まだ定義していません。必要に応じて定義します。
「意思決定結果」は、ここでは、「行動するかどうかの判断」のプロセスへのインプットになると考えました。
「検討対象の選択」というのは、「意思決定」の一種だと考えました。「検討対象に選択されたブランド」は、「意思決定結果」の一種だと考えました。「ランク付けされたブランド」は、「選択肢」の一種だとして考えました。
「検討対象に選択されたブランド」は、「意思決定結果」の一種であると考えるため、「行動するかどうかの判断」のプロセスへのインプットになります。
後編に続く
後編に続く。
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