【決算分析】株式会社GameWith 2025年5月期2Q【65点】


参考資料

株式会社GameWith 2025年5月期第2四半期決算短信(日本基準・連結)
(発表日:2025年1月10日)

企業概要

株式会社GameWithは、ゲーム攻略・メディア運営から始まり、eスポーツ事業、NFT事業やeスポーツに特化した光回線事業などを多角的に展開している企業である。ゲームをより楽しむための情報提供を軸としてビジネスチャンスを広げ続けている点が特徴である。近年、世界的に注目されるeスポーツ領域への取り組みや、NFTゲームへの参入など、新たな成長機会を探る姿勢が見受けられる。

また、当社は「ゲームをより楽しめる世界を創る」という企業理念を掲げ、ゲームユーザーに対する攻略情報サイト「GameWith」の運営で一定の認知度を獲得している。さらに、eスポーツにおけるトップチーム「DetonatioN FocusMe」を傘下に置くなど、国内のeスポーツ界においてもプレゼンスを高めている。

ビジネスモデル

メディア事業

当社の収益の中核は、ゲーム攻略情報メディア「GameWith」を運営し、広告収益を得るモデルである。アクセスユーザー数(PV)が多いゲームタイトルの攻略情報や紹介記事を掲載し、それに付随する広告枠の販売や、ゲーム会社向けの有料ソリューション提供を行っている。

  • メディア広告:Webサイト上の広告枠を複数の広告主が入札するプログラマティック広告モデル。PV数やPV単価に応じて収益が変動する。

  • メディアソリューション:主にゲーム会社に対し、ゲーム攻略サイトの運営受託、記事制作、プロモーションなどを行う。

eスポーツ・エンタメ事業

国内でも屈指のeスポーツチームを所有しており、スポンサー収益やイベント開催、パブリッシャーからの支援金などを得るビジネスモデルである。特に当社が有する「DetonatioN FocusMe」は世界大会での活躍経験もあり、企業スポンサーとの連携による広告効果が期待される。

  • eスポーツクライアント:スポンサー収益、パブリッシャー支援金などの形で収益を確保。

  • eスポーツファンビジネス:グッズ販売、ファンクラブ運営、動画配信など、ファンベースからの収益を得る。

その他事業

当社の新規事業として、NFTゲームの企画・運営支援や、eスポーツ向け高速光回線サービスの提供を行っている。

  • NFT事業:既存NFTゲーム「EGGRYPTO」のプロモーションや「EGGRYPTO X」「AIM NOVA」など新作NFTゲームの開発。

  • 光回線事業:アルテリア・ネットワークス株式会社の技術を活用し、ゲーミング需要に特化した高速・低遅延の光回線サービスを展開。

収益構造分析

以下は連結ベース(日本基準)である。対象期間は2024年6月1日から2024年11月30日の6か月間であり、前年同期(2023年6月1日~2023年11月30日)との比較を中心に分析する。

売上高

当中間連結会計期間(2025年5月期第2四半期)の売上高は1,670百万円(前年同期比9.9%減)となった。前年同期1,854百万円から減少している背景としては、大型タイトルのリリース減少によるPV数低下や広告市況の悪化が影響し、メディア事業の収益が減少した点が大きい。

セグメント別でみると、メディア事業が990百万円(前年同期比18.0%減)と落ち込みが顕著である一方、NFTや光回線事業を含むその他事業が281百万円(前年同期比67.8%増)に伸長した。

売上総利益と売上原価

当中間連結会計期間の売上原価は1,131百万円、売上総利益は539百万円である。前年同期は売上原価1,032百万円、売上総利益822百万円であったため、売上総利益が大きく減少した。これは売上高の縮小に加え、コスト構造上、広告収益源のPV単価低下・ゲーム市場の成熟化に伴う攻略サイトのコストなどが影響している可能性がある。

販売費及び一般管理費

販管費は714百万円であり、前年同期の702百万円前後からやや増加している。新規事業やeスポーツ事業への投資が継続し、固定費が膨らんでいる状況が想定される。

営業利益(営業損失)

当中間連結会計期間においては、営業損失174百万円(前年同期は120百万円の営業利益)へと転落している。主力のメディア広告の不振やeスポーツ・NFT領域での積極的投資などが響き、当期間は利益面で厳しい局面を迎えたといえる。

経常利益(経常損失)

経常損益は174百万円の損失(前年同期は101百万円の利益)となった。営業外収益で投資事業組合運用益や持分法による投資利益などが計上されたが、営業損失が大きく響き、最終的には赤字となっている。

親会社株主に帰属する中間純利益(損失)

当中間連結会計期間の親会社株主に帰属する中間純損失は186百万円(前年同期は23百万円の利益)である。ゲーム市場の鈍化や広告単価の低下が直撃し、新規投資とのバランスも崩れた結果と考えられる。

財務分析

総資産

当中間連結会計期間末(2024年11月30日)の総資産は3,504百万円と、前期末3,884百万円から379百万円の減少となった。現金及び預金の減少、のれんの減少が大きな要因である。

負債

負債合計は773百万円となり、前期末963百万円から189百万円減少した。1年内返済予定の長期借入金が前期末260百万円から174百万円に減ったほか、契約損失引当金が56百万円から0となったことも寄与している。

純資産

純資産は2,730百万円(前期末2,920百万円)へと減少した。中間純損失186百万円を計上したことで利益剰余金が大きく減少している。

キャッシュフロー

  • 営業活動によるキャッシュ・フロー:296百万円の支出(前年同期は43百万円の収入)。中間純損失や売上債権の増加などが主な要因である。

  • 投資活動によるキャッシュ・フロー:89百万円の支出(前年同期は71百万円の支出)。投資有価証券の取得や子会社株式の取得などが継続して行われている。

  • 財務活動によるキャッシュ・フロー:128百万円の支出(前年同期は164百万円の支出)。長期借入金の返済が続く。

現金及び現金同等物は前期末比で514百万円減少し、2,314百万円となった。

安全性・流動性

当中間期末における自己資本比率は約77.9%となっている。自社株買いも微小ながら実施しているため株主資本がやや減少しているが、依然として高い比率を維持しており、流動比率も大きな問題はないと考えられる。一方、利益面のマイナスが続く場合は手元資金が減少しやすく、財務リスクに注意が必要である。

バリュエーション指標の評価

以下のデータは参考値であり、株価は2025年1月10日終値210円を基準とする。純利益・株主資本・EBITDAなどは通期予想や足元の推移から概算を試みるが、当四半期の赤字が通期の業績見通しにどこまで影響を与えるかを考慮する必要がある。

PER(株価収益率)

現時点で当期純利益がマイナスであるため、単純なPER算出は困難である。黒字転換が可能かどうかを慎重に見極める必要がある。

PBR(株価純資産倍率)

当中間期末の純資産は2,730百万円であり、時価総額は株価210円×発行済株式数約1,834万株=約38.5億円とすると、概算のPBRは1.4倍程度となる。ゲーム関連メディア・eスポーツ事業への評価と比較すると、決して高い水準ではないが、赤字決算期を迎えている中で1倍を超えるかどうかは投資家の将来期待がなお残されていると考えられる。

ROE(自己資本利益率)

当中間期の純利益が赤字であるため、ROEはマイナスとなる。今後の回復力を見通すうえで、eスポーツやNFT事業など新規事業がどの程度利益貢献するかがポイントとなる。

EV/EBITDA

EBITDAの明確な開示がないものの、営業損失幅が大きい現状ではEBITDAも低調と想定される。EVについては時価総額に有利子負債(返済予定の長期借入金を含む)を加えることになるが、現金及び預金の水準が高めであるため、相殺効果は大きい。ただし、赤字期のEV/EBITDA評価は投資家が将来のキャッシュフロー生成力をどう見るかに依存する。

PEGレシオ

株価収益率を利益成長率で割るPEGレシオの算出は現時点では困難である。マイナス利益の状況下で短期的に成長率を予測しても信頼性は低く、投資指標として活用するには将来の利益成長を一定のシナリオで評価する必要がある。

変化点

当中間連結会計期間における大きな変化点は以下のとおりである。

メディア事業の伸び悩み

モバイルゲーム市場の成熟化や広告市況の悪化によるPV単価の下落、大型新作タイトルの不足によるPV減少でメディア広告収益が急激に落ち込んだ。これを受けて、当社は攻略サイトの立ち上げ強化や広告枠最適化の施策を最優先で推進している。

eスポーツチームの活躍

傘下チーム「DetonatioN FocusMe」が海外大会で準優勝するなどの活躍を見せ、新規スポンサー獲得にも一定の成果があった。チームの戦績が収益に直結するモデルであるため、今後の試合結果が収益回復につながる可能性がある。

NFT事業の成長

NFTゲーム「EGGRYPTO」のダウンロード数が累計200万を突破し、他社IPとのコラボイベントが好調だったことから大きく売上高が伸びた。今後、新たに2つのNFTゲームをリリース予定とのことで、この伸びが加速するか注目される。

財務構造

長期借入金の返済が進み、契約損失引当金が取り崩されるなど、財務面での圧迫感がやや軽減された。ただし営業キャッシュ・フローがマイナスに転じており、継続的に投資を行うには営業利益の回復が急務である。

投資家に対する施策

当社は配当について前期と同様に「期末無配」を継続している。赤字決算に転落していることもあり、内部留保を重視する方針と考えられる。また、自社株買いは微小ながら行っており、資本効率向上の一端として多少の株主還元を試みている面もある。今後の収益回復が実現すれば、再度の自社株買いや配当政策の見直しを行う可能性があるが、現状は慎重な姿勢がうかがえる。

考察

当社の今後を展望する際、以下の要点が特に重要であると考える。

メディア事業の再成長策

広告単価改善施策や攻略サイト増強を図ると発表しているが、モバイルゲームの大型ヒットタイトルが少ない現状で、PVをどのように増やすかが課題である。広告市況の回復までは時間を要する可能性が高く、DX文脈や新ジャンルのゲーム取り込みなども視野に入れる必要がある。メディアのユーザー行動を解析し、最適な広告在庫の配置や広告枠の販売戦略が求められる。

eスポーツのビジネス拡大

eスポーツ市場の成長は国内外で見込まれている一方、短期的にはスポンサー動向や大会運営環境、チーム運営コストなどのリスクがある。傘下チームの活躍はスポンサー獲得に直結することから、安定的な経営基盤を築くにはチームのパフォーマンス維持が鍵となる。また、ファンビジネスとしてグッズ販売やイベント収益をどれだけ拡大できるかも注目点である。

NFT事業の将来性

NFTゲームが再度盛り上がりを見せつつあるが、市場自体は急激に変動しやすい。投資先の株式会社Kyuzanや開発中の新作ゲームが成功を収めれば、当社グループ全体としての収益拡大が期待できる半面、NFT市場の低迷や競合他社の参入激化などのリスクを負う。特にゲームユーザーがNFTをどの程度受容するかは不透明である。

光回線事業の成長余地

オンライン対戦需要が高いeスポーツ領域において、信頼性のある高速回線はコアユーザーのニーズが強い。すでに多くの光回線競合企業がある中、当社ならではの差別化がどこまで通用するかが問われる。ゲーミング回線としてのブランド力を高める工夫が重要である。

M&Aや事業売却の可能性

当社が保有する投資有価証券や一部不採算事業の売却などにより、財務を改善する動きがある可能性も想定される。一方で、eスポーツ領域でのさらなるチーム acquisition や、海外企業との資本業務提携なども考えられるため、今後の市場動向や経営判断次第では大きな変化が起こりうる。

総合評価

今回の決算における業績や取り組みを総合的に評価すると65点である。

メディア事業の落ち込みにより売上高・利益ともに大幅に減少し、赤字転落となった一方、新規投資しているNFT事業や光回線事業が順調に伸びるなど光明もある。自己資本比率は高水準だが、売上高の減少と赤字計上が継続した場合は将来の投資余力をやや損なうリスクが懸念される。
eスポーツ領域ではチームの活躍により中長期の成長余地があるほか、NFT関連の事業拡大が成功すれば大きなリターンも期待できる。足下の広告市況やモバイルゲーム市場の伸び悩みは外部環境要因が強く、当社の努力だけでは回復が難しい部分もあるが、新たな事業ポートフォリオが徐々に育っているのはプラス要素である。

投資判断のポイント

  • メディア収益改善のタイミング
    第3四半期以降にPV単価改善施策の効果を見込むとしており、その実現性と即効性がどの程度かが注目される。

  • eスポーツチームの国際大会成績
    チームの好成績はスポンサー契約やファン獲得に直結する。アジアリーグの結果が収益を左右する可能性が高く、主要なイベントの動向をウォッチする必要がある。

  • NFT事業の市場環境
    新たに2本のNFTゲームを開発中であり、リリース後にユーザーを取り込めるかどうかがカギとなる。NFT市場全体のボラティリティも大きいため、外部環境の変化に注意が必要。

  • 光回線事業の利用者拡大
    プロモーション継続とユーザー満足度の向上がどの程度成果を出すか。回線品質とコストパフォーマンスの優位性を打ち出し、ゲーミングニーズをどれだけ獲得できるかを見る。

  • 財務構造の安定性
    高い自己資本比率を維持しているが、営業キャッシュ・フローが大きくマイナスとなっている。今後の投資コストと資金調達のバランスに留意する必要がある。

  • 将来のM&A・資本提携リスクと機会
    不採算事業の整理や関連企業の取り込みなどでポートフォリオの組み替えが行われる場合、株価に対するインパクトが大きい。資本提携や海外展開などのシナリオも想定される。

まとめ

当社はメディア事業を礎としながらも、eスポーツ・NFT事業・光回線事業など積極的に新規領域へ投資している。今期は赤字に転落したものの、自己資本比率は高く、投資余力も一定程度保持している。第三・第四四半期にかけてメディア広告の反転やeスポーツ部門のさらなる成長、NFT事業の成功などで収益構造を回復させられるかどうかがカギとなる。今後数年間は外部環境の影響を大きく受けつつも、成長分野でどこまで存在感を高められるかが長期目線での評価につながる。

注意点

本レポートは、個人の分析に基づく見解であり、記載されたいかなる内容も、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。投資に関する最終決定はご自身の判断と責任でなされるようお願いします。

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