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サブカルや音楽の力をまだ信じたいという人に絶対見てほしい『ストップ・メイキング・センス』【映画レビュー】

★★★★★
鑑賞日:2月10日
劇 場:ミッドランド名古屋空港
監 督:ジョナサン・デミ
出 演:トーキング・ヘッズ

1984年にトーキング・ヘッズのプロモーションビデオの中で、顔を黒や茶色に塗って有色人種に見せる演出を使ったことに対してデビッド・バーンは、こう語っている。

「僕自身はあのことはすっかり忘れていてね。まずはこう思った。
『なんてこった、これは酷いな。時代のいかに変わったことか。そして、僕自身もどれほど変わったものか』けれど、すぐにこう考えた。
『よし、ならこいつは自分で引っ張り出してやることにしよう。大袈裟にするつもりはないが、でも自分から口に出すことで、自分の問題として受け止めるんだ。そしてみんなにも、僕が成長し、変わったことがわかってもらえるはずだと願おう』」

日本版『ローリングストーン』のサイトに2021年5月に掲載された記事から

 

この記事を読むと2021年公開の『アメリカン・ユートピア』は、デビッド・バーンの内なる変革の物語だとも言える。

若い頃のバーン氏なら社会問題などに無関心で、現代音楽から民族音楽までの膨大な知識を生かし、ますますマニアックな音楽作りに励んだと思う。

作品を見ると感情の抑制、センスのよさや知的であることのこだわりなど本質は昔と変わっていないが、バーン氏が正論を語っているのだ。

「私は人に会うのが苦手です。でも会わなきゃならない」といった個人的なことから、「移民なしでは私たちはどうにもなりません」といったいまのアメリカ社会についての意見、地方選挙への投票の呼びかけ… 

正論を語りながら歌い、踊ったショーは、スパイク・リーの手で力強くかつチャーミングな映画に仕上っていて、感動しました。



2023年公開の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で、怒涛の2時間の体験の後に流れるスローなエンディングテーマに感動して、調べてみたら、デビッド・バーン「This Is A Life 」という曲だった。



そんな体験があり、トーキング・ヘッズとデビッド・バーンは、現在でもよく聞く音楽です。

40年ぶりに、『ストップ・メイキング・センス』を見た。40年前は、たしか豪華『スティング ブルータルトの夢』と2本立て同時上映だったと思う。

当時、80年代サブカルと言われ新しくて質の高い音楽、美術、映像、文学や評論、マンガ、ゲームなどが次々に生まれ私たちを楽しませました。

今回 4Kレストア版でリマスターされての再上映です。
夢のような1時間30分でした。
画像が鮮明できれい、音響設備がよいので、メンバーの音がくっきりとしていた。

ただただカッコイイものだった。
静かに座っていられず、自然と体がリズムを刻んでいました。

この映画を見て「昔はよかった」と懐古的に自慢話しで終わっていけないと思いました。

「オレたちの時代は終わった」などと腐ることなく、持ち前の知識や経験、才能を、これからの社会のために役立たせるべきだ。『アメリカン・ユートピア』のバーン氏のように、そう思わせる力がこの映画にはあります。

(text by NARDAM)


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