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第4話 マジカルミキサー

夏休みになると、祖父の本家がある、富山県黒部市入善町から巨大なスイカ(入善ジャンボスイカ)が送られてきた。

ダイラは、父親がつくってくれた、《《ヒャッホイ》》という名で呼んでいたジップラインで遊び疲れると、入道雲を見ながらスイカを食べるのがお気に入りのルーティンだった。

ヒャッホイをしにやってきた友だちからは、こんな奇妙にでかいスイカは見たことがないと言われ、ダイラにとってはどこか誇らしげに感じていた。

スイカを食べながら、乾いたアスファルトの上に種を飛ばし合った。

入道雲、ジャンボスイカ、まき散らされた種は、ダイラの思い出に焼き付いた。


祖父の出身地黒部市入善町には農業、紡績が主な産業だったが、近所に大きな鉄工所があった。

祖父は若い頃上京し、飲食サービス業で大成していた。

ダイラは幼い頃から、祖父に、この文明が飛躍的に発展したのは鉄の発見と加工方法の多様性じゃと言われていた。

「鉄は固いじゃ、だがな、高温になるとドロドロに溶けキトキト(いきいき)するんや。鉄は一回殺さないと生きないんよ。」

入善町に行くと、高齢者の方言が難解で聞き取れなかった。祖父も昔話をするときは標準語と方言が少しばかりミックスしていた。

祖父の言葉を理解するには、幼いダイラには難しかったが、《《鉄は一回殺してから命を与え直す》》というフレーズはその後も胸に残り続けていた。

ダイラは、祖父と話をした後は、頭の中が混乱することが多かった。

「自分が生きている世界ってどんな風にできているんだろう。未来の僕たちはどうなっているんだろ。僕が作ったものに命が宿るってどんなときだろう。」

祖父のマジカルな言葉とダイラの疑問がミックスされ、その日は眠れなかった。

https://kakuyomu.jp/works/16816927861821255301/episodes/16816927861914775810

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