作り置きおかずの話

自炊をしている。おかずは作り置きだ。

こう言うと「えらい」と褒められる。褒めてくれるのはだいたい女性なので、きっと自分のがんばりを僕に投影して共感してくれているんだろう。

だけど僕の作り置き生活は、料理本の帯に踊る「いつもの食卓にもう一品♪」みたいなものとはだいぶ様子が違う。「お金」と「手間」を切り詰めて、毎日同じおかずを並べる、文字通りの「いつもの食卓」の繰り返し。日々の献立を考えるなんてもってのほか。怠け心と薄い財布が織り成す終わりのない耐久レースだ。

お金をかけないから材料も少ない。週に一度の買い出しは、何年もかけて絞り込まれた「安くて飽きなくて腹が膨れる」デキる子たちをカゴに放り込むだけで、その気になれば店に入って2分でレジに並ぶ自信がある。

買い物が済んだら、あとは一気呵成に調理だ。月~金曜日は同じものを食べ続ける覚悟ができているから、1日分の献立を5人前作るだけ。おかげで平日はほとんど料理らしいことをしなくていい。いつも同じ服だったスティーブ・ジョブズの着まわしを、ユニクロでまかなったような食生活。これで浮いた台所時間でスマートなフォーンでも作って売っていれば、今ごろもっと豪華な食事が楽しめていただろう。

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4月も後半になって、北国・盛岡にも桜の便りが届いた。旬を過ぎた白菜が高くなってしまったので、ひと冬お世話になった鍋ざんまいの日々もおしまいだ。はて、春は何を食べてたんだったかなあと考えていたら、弘前の「ゆぱんき」という素敵なお店のオーナーさんがカブ料理のレシピをシェアしてくれた。刻んだ葉っぱとクルミ、レーズンをオリーブオイルにからめて、焼いたカブと和えたらもう完成。味付けは塩と黒胡椒だけとシンプルで、なのにとってもおいしいマリネだった。

カブが旬の間はこれを夜の1品に加えることに決めた。ウチの食卓にこんな洒落た料理が載るなんてうれしい。これがあれば、自炊を「えらい」と褒めてくれる人たちへの面目も立ちそうだ。それに、いつも期待に満ちた目で尋ねられてしまう「で、どんな料理を作ってるの?」という困った質問にも、「たとえばね・・・」な~んてドヤ混じりに答えられそうじゃないか。  

◯新型コロナの「ステイホーム」で春休みがエンドレス、子ども達の腹へったコールに日々応え続けている家庭の料理番のみなさん、いつもお疲れさまです! カブの一品、シェアします。

焼きカブとカブの葉のマリネ / ゆぱんき  


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