見出し画像

SmartHR スクールができるまで

こんにちは、SmartHRでカスタマーサクセスをやっています、下地(@bunnyboy)と申します。

SmartHRでは「SmartHR スクール」という、SmartHRの仕組みや使い方が学べるeラーニング形式のコンテンツを用意しています。

画像1

導入前の準備から、機能の理解や運用方法、前任者から引き継いで新たに管理者になった方向けの説明など、さまざまなコースをお客様自身で選択して、いつでも好きなときに学ぶことができるツールです。

この記事では、「なぜスクールをはじめようと思ったか」、「どうやって作ったのか」、「コンテンツを作る上で大事なこと」について書いていきたいと思います。

なぜSmartHR スクールをはじめようと思ったか

2018年ごろの話です。

当時のカスタマーサクセスでは、オンボーディングメニューの中で、お客様に実際にSmartHRを触って使い方を学んでもらう「トレーニング」という工程がありました。
トレーニングをしっかりと行うことで「導入してみたものの、使いこなせずに解約」という悲しい出来事を未然に防ぐためです。

トレーニングによって導入成功の確度は向上したものの、(ありがたいことに)新規導入のお客様が増えていく中で、ほぼすべてのお客様にCSMが毎回1時間のウェブMTGを行うのは徐々に限界が来つつありました。

「お客様がSmartHRを使いこなすためのトレーニングはやりたい」でも「毎回人間が対応する工数を下げて効率化したい」両方やらなくっちゃあならないってのがスタートアップのつらいところであり、面白いところです。

まずは、「CSMが口頭でしている説明を動画に置き換える」ことをしました。
操作画面を録画し、ナレーションを録音、動画編集ソフトでタイミングなどを編集しつつ、音声が聞けない環境での視聴に備え字幕を追加。
これを各機能ごとに10~20分程度の動画にして、CSMからお客様にメールで送付する。

これは一定の効果がありましたが、デメリットも見えてきました。

■ メリット

• トレーニングMTGの回数が減り、まあまあの工数削減効果があった
(動画を渡して見てもらい、必要があれば質疑応答やMTGのセットなど)

■ デメリット

• 実際に動画を見たのか、見た上で機能理解につながったのかがわからない
• 機能改善やUIの更新が頻繁にあり、動画の更新コストが大きく負担

機能説明動画から見えてきた課題を解決する手法を模索する中で、Salesforceの提供する Trailhead などのeラーニングコンテンツに着目しました。

これらの多くは、提供するSaaSプロダクトのアカウントを紐付けられ、「誰が」「どの」コンテンツを利用したのかを計測できるようになっていました。また、コンテンツの内容も、テキストと画像中心で、動作を見せたいとき用の短尺動画の組み合わせで更新コストもさほど高くなさそうでした。

• オンボーディングの成功確度を下げずに効率化をしたい
• コンテンツ利用状況の計測と定量評価の実現したい
• コンテンツの更新コストを削減したい

上記3つの課題を解決すべく、eラーニングコンテンツ「SmartHR スクール」の制作を開始しました。

どうやって SmartHR スクール をつくったのか

まずはツールの検討です。Googleという便利なサイトを使い、「e-Learning system」や「LMS SaaS」など色々検索して候補を出していきました。
検討の際に重要視したのは以下の3つです。

• コンテンツ作成、更新管理の容易さ
• 利用状況の計測とプロダクト活用度との分析
• お客様が簡単に利用開始できる

• コンテンツ作成、更新管理の容易さ
SaaSプロダクトは、日々進化改善されていくため、それを説明するコンテンツも日々の定期的な更新が必要となるため、CMS(content management system)としての使いやすさは重要です。

• 利用状況の計測とプロダクト活用度との分析
どのユーザーが、どのコンテンツを、いつどのくらい利用したのか。
コンテンツの利用状況と、プロダクトの利用状況をかけ合わせて分析することで、コンテンツが機能活用にどのくらい寄与したのかを測り、コンテンツ自体の改善に役立てます。

• お客様が簡単に利用開始できる
コンテンツの利用開始のために新しくアカウントを作るのは面倒だし、プロダクトとの紐付けもできない…。かといってログイン不要にすると計測ができない…。
ということで、SmartHRアカウントでのSSOログインは必須でした。

これらの条件から検討を重ねた結果、Thinkificというサービスにたどり着きました。

もともとは個人のインストラクターがスキルを学習コンテンツ化して販売するためのサービスで、料金もお手頃で機能も揃っていて使いやすい。

余談ですが、Thinkific はC向けサービスなので基本的にテックタッチです。画面上に適宜使い方の説明やアドバイスが表示されたり、オンボーディングのチェックリストが用意されていたり、 Thinkific で作られたeラーニングコンテンツがあったりと、eラーニング部分以外でもかなりテックタッチの参考になりました。
カスタマーサクセスが施策を考える上で、他社サービスのカスタマーサクセスを体験する、というのは非常に良い経験になると思います。
余談その2。SmartHR スクールは、その後 Skilljar というサービスにリプレイスしました。グローバルSaaSのeラーニングでは標準的なサービスであり、当初から検討はしていたものの、金額面で見送りになっていました。が、SmartHR スクールが一定の効果を上げ、重要度が増したこと、Thinkificでは機能面や各種サービス連携面での不足が大きくなってきたことから、リプレイスに踏み切りました。詳しい話はまた別の記事にでも…。

つくる上で大事なこと

お客様が「つまずかない」ために、説明をしすぎない
オンボーディングコンテンツを企画していくうえで「機能の細かい部分まで詳しく説明がされているヘルプ」、「CSMがその場で説明してくれて、分からない箇所を質問できるMTG」、それぞれとの棲み分けをどうしていくかをまずは考えました。

「ヘルプは辞書」「スクールは教科書」「CSMは講師」

オンボーディングの目的は、SmartHRの使い方を理解して、導入し、運用開始をスムーズに行えるようにすることです。

(オンボーディング時点では)機能について全てを詳しく知る必要はまだないはずです。説明をしすぎず、導入成功に必要な最小限の情報にとどめ、一つ一つのステップを簡潔でわかりやすく伝える。

学習と理解を相手に委ねることになるので、「つまずかないこと」が重要だと考えました。

「人がしている説明をすべて置き換えるか?」についても、これも同じく、説明が長くなってしまってはつまずきリスクになるため、必要最小限の説明にとどめる必要があります。
すべてを置き換えるのではなく、講師が教科書を使って授業をするように、人がコンテンツを使いながら説明をする使い方も想定しながらコンテンツを企画していきました。

なるべくシンプルで簡潔にすることで、更新のしやすさにもつながり、一石二鳥です。

はじめから完璧なものを作ろうと思わない
前述で「人がしていることをすべてコンテンツで置き換える必要はない」と書きましたが、はじめからそのような完璧なコンテンツを作ろうと考えず、「とりあえず少しでも人の負担が減れば大成功」くらいの目標でスタートするのが良いです。
SaaSプロダクトに携わっているのであれば、どうせ(とか言ってはいけない)作ったそばから更新することになるので、更新しながらちょっとずつ良いものにしていけば良いんです。

つくるだけでなく、「どう届けるか」までを考える
せっかく作ったコンテンツも、使われなければ意味がありません。
適切なタイミングで、適切なコンテンツを体験してもらうにはどうすればよいかも併せて設計しましょう。
CSMがメールなどで手動で送る方法や、MAやweb接客ツールを使って自動化する方法など、手法はさまざまです。

 ■ 人を介して手動で送る

画像2

■ MAやweb接客ツールで自動化する

画像3

たとえばSmartHRでは、15日間のトライアル(無料のお試し)期間をはじめて利用する管理者向けに、初回ログイン画面でこのようなポップアップを表示し、スクールへ誘導をしています(KARTEを使っています)。

画像4

おわりに

オンボーディングの導入成功と効率化を同時に叶えたい。拡大期のカスタマーサクセスほぼ全てが直面する願いだと思います。
その願いを叶えるのは簡単ではないと思いますし、僕らもまだまだ道半ばではありますが、この記事がなにかの助けになれば幸いです。

あ、ここで突然の宣伝なのですが(下手くそか)、SmartHRではカスタマーサクセスをはじめ、各職種絶賛採用中です!
もし少しでも気になっていただけたら、カジュアル面談でのお話でも構いませんので、ご連絡いただけると嬉しいです!






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?