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仮面をつけるとは……

 長沼孝三先生の作品の中に、社会風刺を題材にした「怪」の連作があります。手掛け始めたのは、1966年からと言われており、孝三先生が日展の審査員になった年です。

「仮面」1966年 セメント

今作は、そんな日展に出品された作品で、笑った仮面を掲げる少女の無表情な印象的です。
無表情な少女が、笑った仮面を掲げ、今からそれをつけようとしています。

また、彼女の後ろには、目を伏せながらもそっと手を添えている男性の像がいます。兄弟か、恋人か、友人か、二人の関係性は明らかではないですが、彼女にとって近しい存在であることは間違いなく、仮面をつけようとする少女の気持ちを思い嘆いているように見えます。

世を生きていくためには、本心を隠し、作られた仮面をかぶらなければならないでしょうか。

今から60年近くも昔に作られていますが、現代社会にも通じる痛烈なメッセージが込められている作品です。

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