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そぎ落とされこそ広がる表現への希求

ひとえに彫刻と聞くと、どんな作品を思い浮かべますか?

恐らく、多くの人は写実的な具象彫刻を思い浮かべるでしょう。そういった作品とは対岸に位置するのが「抽象彫刻」です。「抽象彫刻」は作家の心象を形にした彫刻とも言われます。

「群」1962年 セメント

今作を見ると、顔と腕がない人型の像が五体連なり一つの作品を構成しています。
単に、人体の各部分がないということではなく、衣服や筋肉の表現などを省き、純粋な形態美を求めています。

また、連なったことで像と像の間に空間が生じ、それも今作を奥深いものとしています。

果たして、彼(彼女)らの表情は?
途切れた腕はどうなっているのか?

着目すべきは、卓越した表現力。

無駄をそぎ落とすことで、人体の滑らかさと艶やかさを引き出し、美しいと感じる形状で留めています。それでいて観るものに更なる広がりを感じさせる作品です。

この時、長沼孝三先生は五十四歳。
彫刻家としてのキャリアを十分に積み重ねてきたのにも関わらず、自身の表現の可能性を希求し、抽象彫刻に挑戦する姿勢は脱帽します。

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