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物ブツ交換(სოვდაგარი)

近年注目を集めているカフカス地方の国があります。
それはジョージア🇬🇪。かつてはソ連の構成国のひとつでしたが1991年の独立以降、独特な文化が際立ち、多くの人が注目する国となりました。
期間限定メニューながら松屋復刻メニュー総選挙にて1位を取り多くの人を魅了したシュクメルリ(現在は販売終了)や、スタジオジブリの人気映画「風の谷のナウシカ」の衣装モデルとも呼ばれる民族衣装チョハ、さらにはワイン発祥の地として注目度の上がっているジョージアワインなど様々な文化のある国ジョージア。
文字も可愛いですよね。せっかくなのでジョージア語でのsovdagari(Traderの意)も併記してます

今回はそんなジョージア発のNetflix映画"The TRADER(邦題:物ブツ交換)"の紹介です。
本作は2018年に作られた23分のショートフィルムのドキュメンタリー。
サンダンス映画祭のノンフィクション部門で短編映画審査員賞を獲得しています。

東ヨーロッパのジョージア。辺境地を巡り、日用品や古着を売り歩く1人の男。ここではジャガイモが通貨。貧困にあえぐ土地では野心や夢を追う余裕などない。(Netflixより引用)

主人公の商人(ゲラ)を軸に物語が進み、人々の生活の様子が観れるのがこの映画。
個人的にジョージアという国に非常に興味を持っているので、ジョージアの美しい風景が観られたのもとても嬉しかったです。
人々がロシア語を用いていたことからも、ソ連の面影を強く感じることが出来ます。

ジョージアはとうに独立したひとつの国であり、ソ連やロシアの影響下にある存在ではないと在日ジョージア大使館が声明を出したのも記憶に新しく、冒頭でも軽く紹介したように独自の素敵な文化が多く残っているジョージアが今後どのように発展していくか注目ですね。

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1989年に始まり今なお緊張状態の続いているアブハジア紛争や、2008年に起こった南オセチア戦争などもあり、ジョージアは地域によってはインフラがまだ整ってないという側面もあるので、今なおジャガイモが通貨として機能する地域もあるのかなとも思いました。

また、映画の中でゲラがジャガイモ農家にジャガイモの品種を問うと「ジャガイモだ」とだけ返ってきたり、子どもに将来の夢を聞いて答えられないその子の代わりに母親が「ジャーナリストと言いなさい」と言ったりするシーンも印象的です。
「子どもの頃は教育を受けることが夢だった」と語る人物が「今の夢は豊作に恵まれ、この仕事を続けることだ」と続く部分は、ジョージアの地方に生きる人たちの人生の選択肢の少なさや、そのディスアドバンテージについて考えさせられます。
もちろんジョージアとその規模は比べ物にならないですが、私Ryuseiの地元の静岡県も都会とは言い難く、進学や就職もたくさんの選択肢がある地域ではなかったので、色々と思うところがありました。

ところで、この映画について調べていたら、舞台となった土地がツァルカという場所だとわかりました。
首都のトビリシから約100km。ジョージアのシベリアと呼ばれるような寒い山間部の土地で、映画から伺えるようまだインフラの整っていない土地のようです。
現地滞在歴のある方のブログではこの物々交換のレートについても書かれており、地理的な背景や人種的な背景まで知れて面白いのでぜひこちらも合わせてご覧ください。

http://globalleaner.blogspot.com/2019/09/tsalka.html?m=1
http://globalleaner.blogspot.com/2019/10/Netflix-GeorgianDocumentary.html?m=1


さて、映画で出てきた地域ではジャガイモを通貨として使用していました。赤派ブログや中村哲治先生のオンライン勉強会でお金の仕組みについて勉強している私は考えるところがあったので、ここからは少し経済の話に移ります。
とはいえまだまだ勉強中の身なので、訂正やアドバイス等ありましたらぜひともコメントいただけると嬉しいです。


赤派ブログの読者の方ならご存知の通り、私達が使えるお金は銀行の信用創造によって増えていきます。
(もしまだの方がいらっしゃいましたら、ゴールドスミスノートについてと信用創造についての回をご覧ください)

この銀行券の起源は17世紀イギリスとされていますが、それよりも前の時代から貨幣というものは存在します。
日本においては語感の良さで私は和同開珎という言葉だけよく覚えているのですが、それより前の飛鳥時代には富本銭という貨幣が存在したようです。
飛鳥時代なので1000年以上前の時代ですね。
日本だけで見てもこれほど古い歴史があり、世界規模で見ると今から4500年前の古代メソポタミアでも収穫物の預かり証として銀が使用されていた記述が残っているようです。

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大昔から生活に必要な食糧などを他者と交換する仲介役として貨幣というものが存在することがわかりましたが、今度は江戸時代に遡ってみましょう。
江戸時代の徴税の方法として年貢があります。まさにこの映画のじゃがいも本位制同様、日本でも昔はお金ではなくお米で税を払っていたんですね。

米やじゃがいもという現物で済むなら、わざわざ貨幣を経由しなくてもいいのではないか?なんならお金を作るコスト削減や環境負荷も減らせるのではないか?なんて考えが一瞬、頭をよぎりました。
というわけで、その疑問を解消するために毎月開催されている中村哲治先生の「お金のしくみ」Zoom勉強会にて質問させていただきました。納税が年貢(米)から貨幣になった理由。

江戸時代では納税はお米だったものの、米以外にも銅銭、銀貨、金貨などが地域通貨の如く乱立していたようです。しかし地域により米の収穫量も異なり、米需要も異なってくるため、安定して徴収も出来ない上、社会が地域差により不安定になってしまう問題点があります。
また、もし今米本位制だった場合、例えば給与をお米で受け取っても、一回で持ち帰るにはT-34でも出動しなくてはなりません。米には消費期限もあるので、価値保存も難しいですね。

そうした経緯や、税収を安定させる目的で1873年に地租改正が行われ、その2年前である1871年(明治4年)5月に「新貨条例」により統一された通貨「円・銭・厘」が、租税として用いられ、定着。税が通貨を行き渡らせるというMMTの租税貨幣論が正しいことは、日本の歴史が証明していたのですね。

ということで、じゃがいも本位制の映画から、簡単に経済について書いてみました。BUNKER TOKYOは休業中ですが、リニューアル準備中もソ連、ロシア文化を発信していきたいと思います。

Ryusei

https://twitter.com/nakamuratetsuji/status/1412184170273546240?s=21


おまけ

みかんの丘」と「とうもろこしの島」という映画があります。
どちらもアブハジア紛争を描いた作品であり、ジョージアやそこからの独立を承認されていないアブハジア、またその地域に住む人々の民族問題を考えるきっかけになる作品です。カフカスの地域や歴史に興味がある方はこちらの作品も合わせておすすめさせていただきます。
戦争の悲惨さと対比する自然の雄大さや人々の関係が心に残る映画でした。


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