AI仏「ブッダボット」 悩みに助言・回答
※文化時報2021年4月1日号の掲載記事です。
現代人の悩みに対して、悟りを開いた釈尊ならこう助言するに違いない。そんな回答を示せる人工知能(AI)「ブッダボット」を、京都大学などの研究グループが開発した。さまざまな仏教経典を学習させ、質問する人の情報を読み取って、適切な回答を返す。いわば時空を超えて釈尊を再現させる取り組みだ。(大橋学修)
京大こころの未来研究センターの熊谷誠慈准教授(仏教学)や、天台宗青蓮院門跡の東伏見光晋執事長らが3月26日に発表した。
釈尊と弟子の会話を中心に構成されている原始仏教経典『スッタニパータ』の日本語訳から、108問の質疑応答をAIに学習させた。ユーザーが質問を入力すると、ブッダボットは最も近いQ&Aの中から回答を選択して示す。
この日の実演では、「人生で成功するためには何が必要ですか?」と入力すると、ブッダボットは「この世で欲望を捨てさることは、じつに難しい」と答えていた。
今後は、同様に原始仏教経典の『ダンマパダ』や、般若心経など大乗仏教経典も学習させる。各宗派の祖師の注釈書などを学習させ、各宗派に特化した「天台ボット」のようなAIを開発することも視野に入れているという。
仏教衰退の憂いが契機
「仏教の本質は、人々が幸せになるための教え。人々の悩みや社会課題と向き合い、科学的な視点を持たなければ仏教が衰退する」。ブッダボットは、そう考えた熊谷准教授と東伏見執事長が発案し、約1年7カ月前から開発を進めてきた。
AI技術を持つクウォンタムアナリティクス合同会社(広島県呉市)の古屋俊和氏や、仏教学者の安田章紀氏(京都大学)、トゥプテン・ガワ氏(同)、亀山隆彦氏(同)、長谷川裕峰氏(大阪大学)が協力している。
開発グループは、ブッダボットが仏教の科学的検証や僧侶養成につながる可能性に期待する一方、「悩みや社会課題を解決するヒントが仏教にある」と一般の人々に気付いてもらう契機になると考えている。
東伏見執事長は「AIが僧侶の代わりにはなり得ない。ブッダボットは音楽を聴く携帯端末のようなもので、コンサートのように寺院で僧侶と実際に話すのとは異なる」と話した。
また、今後学習を目指す大乗経典については、抽象的な概念が多く含まれており、AIにとって難易度は高い。質疑応答の部分を抽出することになるため、釈尊の教えを忠実に反映させることは現段階の知見では困難だという。
現状のブッダボットは、一問一答形式で悩みに答えるが、いずれはユーザーの様子を観察したり、対話を重ねたりすることで、より現実に近いやり取りができることを目指す。また、仏教が発展してきた過程で生じた経典の矛盾をあえて読み込ませ、AIに判断させることも検討している。
熊谷准教授は「AIが、どのような答えを出すのか興味深い」と話した。
「ブッダボット」を開発したと発表する熊谷准教授(中央)と東伏見執事長(左)ら
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