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【能登半島地震】取材ノートから 過疎地域のモデルに

 1月下旬、石川県七尾市の和倉温泉を訪れた。三十数年前、観光で遊びに来た時と海の青さは同じだったが、街の様子は全く違っていた。建物はかろうじて立っているが、周辺道路に無数の亀裂がある。人影もない。

 最大震度7を観測した能登半島地震から2カ月が過ぎた。インフラが復旧せずに厳しい生活を強いられる人は多く、新天地を求め移住する人もいる。特に被害が大きかった石川県の6市町では1400人超が他の自治体に転出したと、朝日新聞などに報じられている。

 地震の影響で人口減少が加速したことは、能登半島があらゆる過疎地域の縮図であることを意味している。今後、持続可能な宗教や信仰をどう築いていくのか。地域の人々の支えで成り立つ宗教施設の在り方も問われる。

 和倉温泉街にほど近い真宗大谷派信行寺は、最小限の被害にとどまった。伊賀正道住職は「寺は無事でも観光業が機能しなければ町は立ちゆかない」と話し、「奥能登は豊かな海の幸や海上交易の要衝として栄えてきた歴史がある。規模は小さくなっても復興に向けて一歩ずつ進みたい」と前を向く。大谷派能登教務所の竹原了珠所長は「廃寺に傾く高齢の住職は多いが、寺院は被災者を見守る責任がある」と語った。

 復旧・復興は簡単ではないだろう。だが、小さな街だからこそ支え合う気持ちは強まる。重要なのは地域の連携であり、宗教・宗派を超えたサポートではないか。

 日蓮宗妙圀寺など「七尾山の寺寺院群16カ寺」は宗派を超えて情報共有し、住民と手を携えている。また、地震前には多くのインドネシア人が奥能登の水産業に従事していた。海外の人材を受け入れる体制を整えれば、働き手が戻る可能性はある。

 人口が減るのは日本のどこも同じ。適切な規模で、適切な人材を探し求めるしかない。そのお手伝いをするのが、地域に根差したお寺や神社の役割の一つではないだろうか。(山根陽一)

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