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CGで巡る大安寺 往時の堂塔再現

※文化時報2022年4月19日号の掲載記事です。

 南都七大寺の一つ、高野山真言宗大安寺(河野良文貫主、奈良市)で、奈良時代の大伽藍(がらん)がCGで再現された。ゲーム機用のコントローラーを使って諸堂を巡り、上空から威容を望むことができる。寺内に体験機器を設置しており、同寺は「多くの皆さまに往時の姿を体感いただきたい」としている。(春尾悦子)

 大安寺は、日本初の官立寺院。奈良時代には、約26 万平方メートルの敷地に2基の七重塔をはじめ90余の堂塔が建ち、887人の学僧が所属していた。元々は、聖徳太子が亡くなる際、自身の建立した道場を国家の大寺とするよう舒明(じょめい)天皇に託したことに由来し、平城遷都に伴って現在地に移されたという。

 大陸文化の窓口として、国内外の高官や文化人らの迎賓館の役割も果たしていたが、度重なる災禍で伽藍は失われ、現在の境内は最盛期の4%程度の面積に縮小した。奈良時代の仏像9体が残っており、近年は仏像ファンやがん封じの祈願に訪れる人々でにぎわう。

 長年にわたる発掘調査でかつての伽藍の全容は判明しつつあるものの、周辺の旧境内地には住宅が立ち並び、実際に再興するのは困難なことから、CGでの復元を検討。昨年10月からクラウドファンディングに挑戦したところ、目標金額1千万円を上回る1631万円が寄せられ、関心の高さを示した。

 大安寺の発掘調査に長年携わった奈良市埋蔵文化財調査センターの元所長、森下恵介氏に協力を仰ぎ、奈良文化財研究所が監修。細部まで検証を重ね、学術的にも担保された古代寺院建築が、CGで再現できた。

 拝観者は、自らコントローラーを操作し、堂内に入ったり上空から眺めたりして、境内を自在に動き回れる。赤と銀のだるまに近づくと、お堂に関する知識や大安寺の由緒などの説明文を読める。

 河野裕韶(ゆうしょう)副住職は、多くの理解と協力者が得られたことに謝意を表するとともに、「他に類を見ないCGが出来上がった。多くの皆さまに体験していただきたい」と話している。

北西上空から望んだ境内のCG(大安寺提供)

宝物殿改修… 奈良博に出展

 大安寺は、天平期の仏像など貴重な宝物を奉安している宝物殿の老朽化に伴い、今月から増改修工事を実施。南海トラフ巨大地震などを視野に、文化財を守るための免震機能を備えるとともに、温度・湿度の管理やバリアフリーに対応する。

 総工費は約2億円で、補助金を差し引いても約1億5千万円が必要。このため、「大安寺天平伽藍CG復元プロジェクトへの勧募をお願いしたばかりで恐縮だが、お力添えをちょうだいしたい」としている。

 増改修期間中の4月23日~6月19日には、奈良国立博物館(奈良市)で開催される「大安寺のすべて―天平のみほとけと祈り」に出展。前期(5月22日まで)には十一面観音立像(重要文化財、奈良時代)、後期(5月24日から)には伝馬頭観CGで巡る大安寺往時の堂塔再現、体験機器設置音立像(同)などが展示される。

 月曜休館(5月2日は開館)。午前9時半~午後5時(4月29日~5月7日は午後7時まで)。一般1800円、高校・大学生1500円、小中学生800円。問い合わせは奈良国立博物館(050-5542-8600)。

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