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【能登半島地震】足湯で心もほっと 神戸からともに癒やす

※文化時報2024年2月16日号の掲載記事です。

 石川県七尾市は能登半島地震から1カ月以上たった今も約1万2千戸が断水し、一部の復旧は4月までずれ込む見通しとなっている。現在も約20人が避難している中島地区コミュニティセンター西岸分館では、阪神・淡路大震災を機に発足した被災地NGO恊働センター(頼政良太代表、神戸市兵庫区)のスタッフらが足湯ボランティアを実施。緊張した被災者らの体と心を温め、ほっと一息つける癒やしの空間をつくっている。(松井里歩)

 1月30日、中島地区コミュニティセンター西岸分館には、大阪大学の学生2人を含む5人が訪れた。避難所の一室にブルーシートを広げ、くんできた湧き水をこんろで温めてバケツに入れる。湯に足をそっとつけてもらい、話をしながら10分ほど手足を優しくもみさすって、凝りやむくみを和らげる。その後は避難者もスタッフも「ともに」ストレッチをして、体をほぐした。

中島地区コミュニティセンター西岸分館

 この日のリーダーを務めた斉藤容子さん(45)は「被災者の体に直接触れる機会はなかなかない。体を温めることで心も温まり、普段は話さないような本音のつぶやきを聞ける」と話す。

 初めて足湯ボランティアに参加した大阪大学人間科学部4年の島村優希さん(23)は「相手の人や気分、状況によっていろいろな思いや人生を語ってくださる。手を通して会話しているような感じがする」。時間をゆったり過ごしてもらうことを第一に心がけている、と笑顔を見せた。

寒さしのぐ 傾聴も

 今では傾聴のきっかけとして僧侶の間にも広がる足湯ボランティアは、能登半島地震と同じく1月に発生した阪神・淡路大震災で注目された。

 水道とガスが止まり、風呂で寒さをしのげない中、せめて足だけでも温まってほしいと、被災地NGO恊働センターが始めたのだという。

足湯で避難者の心身を温めた=1月30日

 実際に足湯につかった高齢者たちは、若者との交流に顔をほころばせていた。

 自宅の壁が割れるなどの被害に遭った室木一郎さん(76)は、車中泊がつらくて1月3日から避難所生活を送っている。「元日は子や孫らと過ごしていたが、2007年の地震とは違って、立っていられないほどだった。娑婆(しゃば)はもうおしまいかと思った」と語った。

 足湯中、疲れた体に効くツボを伝授する男性もいた。金沢市内でフリースクールを運営する森要作さん(60)。阪神・淡路大震災以来、さまざまな被災地でツボ押しを実践・指南しているという。

 「被災地では医療が限られるが、人間にはツボ押しという〝癒やし〟がある。避難所でお互いが押し合ってもらえれば」と話した。

避難所に笑いを
公民館主事・赤坂さん

 中島地区コミュニティセンター西岸分館の避難所では、この施設で長年、公民館主事として働いてきた赤坂美香さん(61)が中心的な存在になっている。

 元日の地震発生時は、娘夫婦を訪ねて金沢市内に来ていた。2日朝に施設の様子を見に行くと、中はぐちゃぐちゃ。地域の人々らが片付け、掃除をしてようやく使える状況になった。

 当初は70人ほどが避難し、若者が仮設トイレをつくってくれたり、みんなで食事を調理したりした。一時避難場所に指定されているのに自主避難とされたため、市職員がなかなか来ず、赤坂さんが率先して避難者の要望を聞いたり、物資の片付けを行ったりしていた。

 少しずつ環境は整ってきたが、赤坂さんによれば今、最も必要なのはお金と家。壊れた自宅の片付けや撤去、2次避難などの費用が見通せない上に、働きたくても勤務先が被災して収入を得られない人は多いという。

足湯で一息つく赤坂さん(右)

 暗くなりがちな状況にあっても、赤坂さんは「笑い」を大切にしている。「『はいはい!』とわざと陽気な声を出して、みんなを巻き込む」。

 周囲を元気づけているようで、力を借りていると語るが、「あっ、お米炊くの忘れてた!」と失敗も口に出して笑いに変える赤坂さんには、誰もが力をもらっている。

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