僧侶が入居者にオンライン傾聴 横浜の不動産会社
神奈川県や東京都で不動産業を展開する株式会社フロンティアハウス(横浜市神奈川区、佐藤勝彦社長)は、管理物件の入居者に向けたサポートの一環として、僧侶やスピリチュアルケア師=用語解説=によるオンライン傾聴サービス「聴く耳」を取り入れた。新型コロナウイルス感染拡大により孤独を深める独居世帯の心の支えに、宗教者の助力を期待しているという。(安岡遥)
「聴く耳」は、高野山真言宗僧侶で看護師の玉置妙憂氏が代表理事を務める非営利型一般社団法人「大慈学苑」が今年6月に開始。テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」を介し、有料で相談に応じている。アドバイスや指示をせず、ひたすら耳を傾けるというコンセプトが共感を呼んでいる。
フロンティアハウスではコロナ禍になって間もない昨年夏ごろから、管理物件で40代の入居者の孤独死が相次いだ。近隣住民と疎遠で、死後かなりの時間が経過して発見されたケースも多く、社内で開かれた対策会議では「体の不調だけでなく、コロナ禍による心の不調にも原因があったのでは」との意見が相次いだ。
そこで、玉置氏と交流のあった企画部長の古谷幸治氏が「聴く耳」の導入を提案。入居者向けのメールマガジンを通じて案内したところ、「利用を考えているが、どのようなサービスなのか」といった問い合わせが寄せられ、実際に利用する入居者も増えはじめている。
古谷氏は「心に問題を抱えた入居者の中には、相談料を支払う経済的な余裕がない方も多いのではないか」とも分析。より利用しやすい運用方法を検討するという。
孤立防ぎ、心を見守る
フロンティアハウスは、神奈川県内を中心に賃貸物件約2千戸を展開している。入居者の大部分を20~40代の独居世帯が占めていることから、孤立を防ぐために独自の取り組みを行っている。今年6月には持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する企業として横浜市の認証を受けた。
例えば、入居者とのコミュニケーションを図り、見守りにつなげる取り組みとして、オーナーの住居の一室を賃貸物件として貸し出す賃貸併用住宅事業に注力。同事業は「経済・社会・環境のすべてに関わる取り組み」として、県の「かながわSDGsパートナー」にも認定された。猫の保護団体と連携し、「猫付き賃貸併用住宅」として貸し出すなど、癒やしを提供する工夫も好評を呼んでいる。
また、入居者には毎週メールマガジンを配信。生活に役立つ情報をはじめ、占いや相談など心を和ませる話題も提供し、孤独の解消に役立てている。
「聴く耳」の導入も、こうした取り組みの一環。古谷氏は「コロナ禍で多くの人が孤独に陥っている今、心の見守りは欠かせない」とした上で、「宗教の考え方には、しっかりとした一本の軸がある。『聴く耳』を通じ、ハードルを少しでも下げられれば」と語る。
「2千戸全てを社員だけで見守るには限界がある。私たちの役割は、さまざまな人や企業とつながり、入居者との橋渡しをすること。お坊さんにもぜひその輪に加わってほしい」。古谷氏はそう呼び掛けている。
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【用語解説】スピリチュアルケア師
日本スピリチュアルケア学会が認定する心のケアに関する資格。社会のあらゆる場面でケアを実践できるよう、医療、福祉、教育などの分野で活動する。2012年に制度が設けられ、上智大学や高野山大学など8団体で認定教育プログラムが行われている。
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