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【東日本大震災】13年…ようやくサイレンの音が変わった 

※文化時報2024年3月19日号の掲載記事です。

 東日本大震災は11日、発生から13年となり、各地で犠牲者をしのぶ法要が営まれた。関連死を含む死者・行方不明者は2万2222人に上り、なおも約3万人が避難生活を送る。元日の能登半島地震でも、被災した人々は故郷を離れるかどうかで苦悩しており、改めて東日本大震災が注目される年となった。(佐々木雄嵩)

 宮城県石巻市門脇地区にある浄土宗西光寺(樋口伸生住職)は、今年も変わらぬ規模で追善法要を営んだ。全国から20人近い有志の僧侶が集まり、100人を超える檀信徒らとともに鎮魂の祈りをささげた。

参列者らの読経の声が堂内に響きわたった

 午後2時46分。地区に鳴り響く甲高いサイレンの音は、例年よりトーンが下げられた。樋口住職の嘆願が、ようやく石巻市に聞き届けられた。

 あの日と同じあの音を聞くたびに、被災者たちはフラッシュバックに苦しんできた。「チャイムでも、アナウンスでもいい。被災者の思いをくみ取り、今後も放送の在り方を模索してほしい」

 法要は全て現代口語で行われた。参列者が内容を理解し、真の意味でともに参加できるようにと、長年続けられてきた取り組みだ。参列者らは犠牲者の冥福を祈り、極楽浄土の蓮華(れんげ)の上で再会できることを願う表白を読み上げ、一心に念仏を唱えた。

 樋口住職はあいさつで能登半島地震に言及し、「元日以来、東日本大震災への見方、受け止め方が変化している」と述べた。世間に忘れられても、自分たちだけは忘れずにいよう―。そんな思いで淡々と法要を続けてきたが、今年は震災を見つめ直し、教訓を得ようという社会の動きが感じられるという。

 その上で「世間は絶えず動いていくが、私たちはどんなときにも良いことを見つけ、努めていこう。それが仏教の教えであり、幸せだ。震災の中を生き抜いたわれわれは、それを示していけると確信している」と呼び掛けた。

 この日、本堂には「いのり大佛」の6分の1サイズの坐像が安置された。

 いのり大佛は高さ5メートルの阿弥陀如来坐像で、石巻市震災遺構の門脇小学校隣にある西光寺墓地の慰霊広場「祈りの杜(もり)」に建立予定。震災遺族をはじめ、心に傷を負った誰もが手を合わせられるようにする。西光寺震災遺族会「蓮(はす)の会」や賛同する全国の僧侶、復興支援を機に親交を深めた人々らが協力し、2026年3月11日の披露を目指している。

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