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電子決済 寺社で進むか

※文化時報2021年新年号の掲載記事を再構成しました。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、寺社のキャッシュレス決済導入が加速している。政府が提唱する「新しい生活様式」に非接触の電子決済が盛り込まれ、記念品やお守りの購入への電子決済はもちろん、初詣の賽銭などに導入するケースも出始めた。一方で、情報漏洩の危険性などを理由に、キャッシュレス賽銭などの導入に懐疑的な意見は根強い。導入が本格化するかは不透明だ。

 神仏習合の日蓮宗寺院・最上稲荷山妙教寺(岡山市北区)は、2021年の初詣を機に、大みそかの午後8時からスマートフォン決済の「Jコインペイ」を用いたキャッシュレス賽銭を初めて導入し、参拝者の選択肢を広げた。これまでも売店の「ゆかり」でクレジットカードや「ペイペイ」を扱い、安全運転を祈願する乗用車の祈禱にもクレジットカード決済が可能だったが、参詣者の求めに応じた。「まずは試験的に進めたい」としている。

 真宗大谷派は2020年10月、境内の感染防止対策の一環として、真宗本廟(東本願寺、京都市下京区)などでキャッシュレス賽銭を導入した。Jコインペイなどを用いたQRコード決済などを採用。今後、各窓口でのクレジット決済を実現し、いずれは全ての窓口でのキャッシュレス対応を想定する。全国の教務所でも23年までの導入を目指す。

 担当者は「以前からキャッシュレスの要望はあったが、コロナ禍で安全性を重視する声が後押しとなった。電子決済のみならず、安心してお参りできる環境を整えたい」と話す。

 コロナ禍以前から電子決済を導入した寺社もある。飛騨護国神社(岐阜県高山市)は、敷地内の黄金神社で19年6月、全国初の電子地域通貨として飛騨信用組合などが扱う「さるぼぼコイン」による賽銭を導入した。県内の神社では初の取り組み。20年になって利用者が増加し、飛騨護国神社全体で御朱印やお守りなどのQR決済が可能になった。担当者は「米や刀など、その時代の最先端のものが奉納されてきた。地域通貨が浸透すれば、地域創生にもつながるはず」と語る。

 一方で、キャッシュレス賽銭の先駆けとして14年に仕事始めの日限定で導入した愛宕神社(東京都港区)は、今年は実施を見送った。電子決済の導入は、銀行が小銭を扱ってくれなかったことなどがきっかけ。問題提起の意味でも電子決済を採用したが、「政府がキャッシュレスにかじを切ったことで、一定の役割を終えた」とする。

 京都仏教会が19年に出した声明では、法要や拝観などの宗教行為へのキャッシュレス導入について、第三者が個人情報を把握することや、信者の行動などが外部に知られることで宗教弾圧につながる恐れがあることなどの問題点が挙げられた。コロナ禍以後も主張は変わっておらず、今後も変える予定はないという。「新しい生活様式」が求められる中、安全性と宗教性との兼ね合いをどこに着地させるのか、試行錯誤は続く。

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